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植田、桜木花道みたいな奴だ

植田と岩波、好対照な個性を持つ大型CB
再結成したコンビが見せたそれぞれの成長

川端暁彦2014年10月1日 12:30

U−21代表のストロングポイント


アジア大会でCBのコンビを組んだ植田(写真)と岩波は、U−21日本代表においてストロングポイントだった【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 桜木花道みたいな奴だ。

 U−21日本代表DF植田直通(鹿島アントラーズ)を見て思ったのはそんなことだった。1990年代を代表するバスケットボール漫画である『SLAM DUNK(スラムダンク)』において、主人公・桜木花道は、バスケ初心者でありながら破格の身体能力と抜群の闘争心、そして“戦闘センス”の良さで、最初は馬鹿にされながらも、急成長を遂げて一目置かれる存在となっていった。植田から、少しばかり似たものを感じたのだ。

 その植田とセンターバック(CB)のコンビを組んだ岩波拓也(ヴィッセル神戸)が流川楓(桜木のライバルキャラ)だったかは定かではないが、この好対照な性格を持つ同じ登録身長(186センチ)の2人が、アジア大会を戦ったU−21代表におけるストロングポイントだったことは間違いない。

 終了間際にPKを与え、結果として0−1の敗北に終わった準々決勝・韓国戦。攻撃面でさしたる脅威を与えられぬままに敗れたゲームだったと評することも可能だが、守備面で相手を追い詰めていたゲームでもあった。ロングボールからラッシュを仕掛けるのが韓国サッカーの伝統だが、1トップを張るイ・ヨンジェに対して日本のCBコンビはほぼパーフェクトに制空権を握り続けた。上空の争いで勝てなくなった相手がファウル狙いで競るのを辞めるのを見たとき、「ヘディングの主導権を握りたい」と語っていた植田の言葉が現実化したことを実感した。

折れない心と突き抜けた向上心を持つ植田


代表の中でも植田のヘディングの“うまさ”は際立っている。韓国戦も制空権を握り続けた【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

「(空中戦は)負ける気もしないし、そこで負けたら僕は何の役にも立たないと思います。まずはそこで勝ってチームを勢いづかせたい」

 韓国戦を前にそんなことを語った植田の言葉には、まさに彼のプライドが凝縮されている。決して“うまい”選手ではない。たゆまぬ努力で磨かれたロングフィードの精度は大きく向上したが、足元の細かい技術があるわけではないし、ディフェンスラインでのボール回しで何か特別な貢献ができるタイプではない。かつてはテコンドー選手としても将来を期待されたほどの勇猛果敢さは、時として裏目に出ることもある。ミスの少ないタイプではないし、韓国戦でも実際に彼のミスが招いた危険なシーンはあった。

 だが、ヘコまない。折れないのだ。ミスの後のプレーというのは誰しも消極的になるものだが、植田には「ドンマイ」なんて言葉は必要ない。誰に言われるまでもなく、次のプレーでは再び勇猛な選択を見せ、相手FWへと襲いかかっている。植田が持つ類いまれな資質がそこにある。

 取材対応は至ってぶっきらぼうで言葉少なく、韓国戦では「ごめんなさい」の一個を小さく残して記者たちを振り切ってバスへと乗り込んでもいった。ただ、そのプレー内容はいつでも雄弁だ。初めて植田のプレーを本格的に見たのは、彼が高校1年生だった豊田国際ユース(U−16)大会だったと記憶しているが、代表に呼ばれたばかりで、一番ヘタクソなDFがミスを恐れず、対峙したアルゼンチン代表のユニホームに怯えることもなく戦い抜く姿には、驚くと同時に大きな感銘を受けたものだった。あの頃から、その姿勢は変わってはいない。

 アジア大会の最中、チーム練習の後に(あるいは合間に)独りでヘディング練習に励む植田の姿があった。「やらないと落ち着かない」のだという彼にとっての日課は、その突き抜けた向上心の表れなのだろう。イラク戦を前にした練習でCB候補の選手たちにロングボールを弾き返す練習が課せられることがあったが、前に弾くのも一苦労という選手もいる中で、そのヘディングの“うまさ”は際立っていた。図抜けた身体能力だけではない、彼が培ってきたモノの確かさが表れた一コマだった。

U−17W杯でもコンビを組んでいた

 そんな植田とコンビを組む岩波は、早くから将来を嘱望された選手だった。中学時代にはヴィッセル神戸U−15の選手として全国制覇を経験。吉武博文監督率いるU−16日本代表(通称“94ジャパン”)では中心選手として見込まれ、植田が遅れてメンバー入りしてきたときすでに、岩波はチームの大黒柱だった。

 大型CBながら足元の技術は高く、ロングフィードの質は群を抜く。同世代に比肩する選手の見当たらなかった岩波にとって、植田が現れたことは一つの幸運だったかもしれない。意識し合い、高め合うライバルとして、2人は競い合って伸びてきた。岩波と植田のコンビを擁して臨んだ11年のU−17ワールドカップを前にして、「今回のU−17日本代表ってどんなチーム?」と問われると、私は決まって「両CBが売りのチームですよ」と答えていた。聞いたほうは「日本の特長がCB?」と首をかしげたものだが、試合を見れば自然と納得してくれた。

 それから3年、岩波と植田のコンビはアジア大会にて「再結成」となった。2人ともJ1の上位クラブでレギュラーの座をつかみ、それぞれの成長を遂げた。岩波もまた、熱血漢であり守備には独特のこだわりを持つ安達亮監督の薫陶(くんとう)を受けて、十代のころとはちょっと違う強さを身に付けた。

「球際」の強さを身につけたスマートな岩波

 植田ほど図抜けた身体能力を持つわけではない岩波は、スマートに守るプレーが身上だった。だがトップレベルの戦いにおいては、それだけでは足りない世界がある。それを痛感した上で積み上げてきた成果が出たのがアジア大会の韓国戦だった。

 試合前、自分自身で強調していたのは「球際」。そこで戦い切ること、そして勝つことを胸に刻んで臨んだこの試合、岩波のプレーは出色だった。激しく当たり、眼前の敵をまず潰しに行く。研ぎ澄まされた集中力と旺盛な闘争心は、確実に韓国FWを圧倒してもいた。それでいて、植田がやらかした直後に「お前のミスは計算済みだ」と言わんばかりにゴールのカバーに入って失点の危機を救うなど、沈着さも健在。この試合のMOM(マンオブザマッチ)を選べと言われたら、私はためらいなく岩波を推す。そのくらいのプレーを見せていた。

「球際の強さは、今日は韓国と言うこともあってすごく個人的に意識して入った」。試合後にそう語った岩波は、「あの韓国を相手にこういう戦い方をできた」とポジティブに言葉を並べた。負けは負けだが、少なくとも個人としては確かな収穫を得た試合だったということだろう。ただ、韓国戦の出来が「特別」だったことは、「そういうのを毎試合毎試合続けないといけないと思う」と本人が認める通り。ただ、手倉森誠監督が「しぶとく泥くさく守る覚悟というのは、この年代の選手たちに付いてきた」と語った言葉の対象の一人が、岩波であったことは想像に難くない。

リオ五輪代表も「両CBが売りのチーム」へ

 岩波と植田という好対照な個性を持つ大型CB。この2人が中澤佑二と田中マルクス闘莉王のような、あるいはそれを超越する最強のコンビになっていけるかはまだ分からない。選手にはネガティブな方向を含めた多様な未来が必ずあるからだし、単純にこの世代には他にも良いCBがいるということもある。

 ただ、この2人が脱皮して、もうワンランク上の選手へなっていく。その道筋は見えた大会だったと言えるのではないだろうか。ここからリオ五輪に至るまでの時間は、2年弱。その舞台を前に「リオ五輪代表ってどんなチーム?」と問われたときに、自信を持って「両CBが売りのチームだよ」と答えることができる。そんな近未来くらいは見えてきた、アジア大会だった。




植田をスラムダンクの桜木花道のようだと形容する川端氏である。
なかなか言い得て妙である。
マンガの主人公に例えられるのも、それだけ突出した個性を持っておる証拠である。
折れぬ心と類い希な向上心を持つ男・植田直通は、この韓国戦の敗戦を糧にまた大きく成長するであろう。
植田のプレイに注目である。

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