ホンダFC戦報道
柳沢決めた鹿島が4強/天皇杯
サポーターの「ヤナギサワ」コールに右手を上げるFW柳沢(撮影・宇治久裕)
<天皇杯:鹿島1−0ホンダFC>◇準々決勝◇22日◇ユアスタ
移籍志願した鹿島FW柳沢敦(30)がチームの窮地を救う決勝弾を決め、2年連続の4強に導いた。J王者はJFLのホンダFC相手に大苦戦。だがPK戦突入間近だった延長後半5分に、途中出場の柳沢が右足シュートを決めて虎の子の1点を呼び込んだ。出場機会の増加を求めて、愛する鹿島からの移籍を志願しつつ、チームを11冠へ1歩近づけた。G大阪はGK藤ケ谷陽介(26)が好セーブを連発し、チームを2年連続4強に導いた。
いつまでも「柳沢コール」が鳴りやまなかった。試合後、場内を1周する柳沢の視線の先には、絶叫するサポーターと20以上の横断幕があった。「永遠に僕達の宝」「鹿島で本当にやり残した事はないのか」。スタンドには笑顔を振りまいたがピッチを後にするときには険しい表情になっていた。「クラブ、サポーターへの愛情は、僕自身、人一倍強いんです」。その光景が心に突き刺さっていた。
移籍志願が表面化してから臨む初めての試合。だが雑音は封じ込め、勝利のために尽くした。後半27分から途中出場。相手の猛プレスに苦しむ状況で、冷静に最終ラインの裏を狙い続けた。それが実ったのはPK戦突入間近の延長後半5分。MF本山のスルーパスをFW興梠がヒールで落としところを、右足でゴール右隅に流し込んだ。「いい流れの中のゴール」と2試合連続決勝弾を振り返った。
前日21日に仙台入りしてからオリベイラ監督と話し合いを持った。「(来季も)サポートして欲しい」と情熱を持って慰留され「人間的にも監督的にも一緒にやって損することはない」と心に響いた部分はある。クラブにも残留を望むサポーターからのメールが連日、約50通も届いている。一方で引退も含めた選択肢の中で、下した移籍志願は生半可な決意ではない。クラブ側は引き留めに必死だが、幹部も「移籍も覚悟しないといけない」と話す。
京都からのオファーが届き、東京Vも獲得を検討するなど他クラブの関心は高い。「天皇杯のことに気持ちを切り替えている。今、ここで何かを言うことはない」。柳沢は鹿島のためにできることを、今は果たすつもりだ。【広重竜太郎】
[2007年12月23日9時15分 紙面から]
鹿島、柳沢の決勝弾で4強、ホンダFCに辛勝 天皇杯
延長後半、決勝ゴールを決めて笑顔の鹿島・柳沢=22日、ユアスタ仙台(撮影・財満朝則)
天皇杯準々決勝(22日、ユアスタ)J1王者の鹿島は序盤からJFLのHondaFCの激しい当たりに苦しめられたが、相手が退場者を出した後半途中から主導権を握った。HondaFCは動きの量とチームプレーで健闘。試合は緊迫した攻防になった。
鹿島は0−0の延長後半5分、ドリブルで中へ攻め込んだ本山の縦パスを興梠がつなぎ、最後は途中出場の柳沢がこの試合唯一のゴールを右隅に決めた。
◆鹿島・オリベイラ監督
「ホンダFCはJFLのチームだからといって、格下とみていなかった。彼らのプレー内容は素晴らしく、組織的でもあった」
★去就注目の柳沢、2試合連続決勝ゴール
控えが続くベテランの、意地の一発だった。鹿島は後半27分から投入された元日本代表FWの柳沢が値千金の決勝点。粘り強く戦い抜いたホンダFCに番狂わせを許さず、J1王者の面目を保った。
柳沢は鮮やかな連係から生まれた延長後半5分の得点を「本山のいいパス、興梠の完ぺきな落としからいい流れでゴールできた」と上機嫌に言った。これで天皇杯では5回戦に続き、2試合連続決勝点と好調だ。
ワールドカップ(W杯)に2度出場した30歳も、ことしは代表に初選出された田代に定位置を奪われた。数日前には移籍を望む発言をしたため、この日の鹿島応援席には「移籍絶対反対」など残留を求める多くの横断幕が張られた。
21日もオリベイラ監督と話し合った柳沢は「鹿島への愛情は人一倍あるが、選手として今後を考える必要がある」と新天地を求める意思を隠していない。去就が注目される大物は「いまはあと2試合の天皇杯に集中したい」と話した。
J1王者の鹿島はホンダに苦戦も…柳沢のゴールで4強決める
延長後半、値千金のゴールを決めた柳沢。最高の笑顔を浮かべた(撮影・財満朝則)
「行くな アツシ」と、柳沢の残留を訴えるサポーター
天皇杯準々決勝(22日、ユアスタ)J1王者の鹿島はJFLのホンダFCに1−0辛勝。移籍が決定的となっている主将のFW柳沢敦(30)が延長後半5分、貴重な決勝ゴールを決め、今季2冠へ「あと2」とした。
◇
仙台の夜空に柳沢コールがいつまでも鳴り響く。J1王者の面目を保つ主将の一撃が、粘るホンダFCを下した。
この日も後半途中からの出場。そして0−0の延長後半5分だった。ペナルティーエリア内でMF本山のパスを受けたFW興梠がヒールパス。絶妙のタイミングで走り込んだ柳沢が右足で押し込んだ。8日の5回戦・甲府戦に続き、2戦連続となる延長戦での決勝弾。「本山のいいパス、興梠の完ぺきな落としからいい流れでゴールできた」と笑顔を浮かべた。
「柳沢の特長は機動性。スペースを見つけて使う動きとクレバーさ、あの時間は柳沢の動きが生きると思っていた」というオリヴェイラ監督の期待に応え、チームを2年連続の4強に導いた。
試合後、「クラブ、サポーターへの愛情は人一倍強いと思っている。ただ選手としてこれから考えないといけないことがある。選手として判断を出したい」と柳沢。シーズン中のため明言こそ避けたが、移籍を否定することはなかった。
今季は左足骨折などもあってリーグ19試合5得点。シーズン後半は日本代表候補に選出されたFW田代の控えに。大逆転でのリーグ優勝にも「オレは何もしていない」と心の底から喜べなかった。現役では唯一チームの10冠にかかわっているが、選手として「チャレンジ」という言葉が頭から離れなかった。
前日21日にはオリヴェイラ監督と話し合い、「これからもチームをサポートしてほしい」と残留要請を受けている。この日もスタンドには「いつまでもどこまでも共に俺たちのヤナギ」「来年もキャプテンは柳」「行くなアツシ」などのメッセージが掲げられた。
クラブ、サポーターが一体となって残留を求めている。それでも柳沢は「いままで手助けしてくれた人たちの気持ちや、いろいろなことを含めて考えたい」と話すにとどめた。現時点で正式なオファーが来ているのは京都だけだが、「(他クラブの)話を聞いた上で判断したい」と、今後の見通しを語った。
一時は引退も考えた男の決意は固まっているが、「いまは天皇杯に集中したい」。チームを優勝に導き、有終の美を飾るつもりだ。
(千葉友寛)
★J1王者を追い詰めた、石橋監督「戦えること証明」
J1王者をあと一歩まで追い詰めた。JFLのホンダFCが鹿島相手に延長戦の末に0−1惜敗。後半37分にMF糸数が2度目の警告で退場となるも、豊富な運動量と組織的なサッカーで互角に渡り合い、カウンターから何度も鹿島ゴールを脅かした。
J2東京V、J1の柏、名古屋を破り、JFL勢として04年度の草津(現J2)以来となる8強進出の快進撃もついにストップ。しかし石橋監督は「自分たちがやってることを信じてやれば、戦えるということを証明できた。ひたむきにやることで、リーグのカテゴリーの壁が高くはないと感じることができたことが財産」と胸を張った。
★内田苦戦に反省、岩政「決勝行く」
日本代表の大熊コーチ、加藤GKコーチ、U−22日本代表の井原コーチが鹿島−ホンダFC戦を視察。来年1月の日本代表候補合宿に招集されたFW田代、DF岩政、DF内田らのコンディションをチェックした。状態が悪いピッチに苦しんだ内田は、「苦戦の要因は芝と、相手が下のカテゴリーだから勝って当然という雰囲気だったところ」と反省。完封に貢献した岩政は、「まだ元日に試合をしたことがないので、今年は決勝までいきたい。オフはあきらめてしっかり調整したい」と前向きに語った。
移籍志願・柳沢が鹿島救う4強弾
<鹿島・ホンダFC>延長後半5分、ゴールを決める柳沢(左)。スタンドには残留を願う横断幕が掲げられた
天皇杯準々決勝2試合が22日に行われ、今季J1王者の鹿島がJFLのホンダFCを延長戦の末に破り、2年連続のベスト4進出を決めた。格下相手に苦戦したが、途中出場のFW柳沢敦(30)が延長後半5分に決勝ゴール。クラブに移籍志願したことを受け、スタンドではサポーターが残留を嘆願する横断幕を掲げていただけに、柳沢にとっては複雑な決勝弾となった。なお、G大阪も清水に延長戦で1―0と競り勝ち、こちらも2年連続の4強入りを決めた。
移籍問題に揺れるFW柳沢が、チームを2年連続のベスト4に導く決勝弾を決めた。延長後半5分だ。MF本山がFW興梠へスルーパスを出した瞬間、柳沢はエリア内に進入。興梠からのヒールパスをドンピシャのタイミングで受けて相手GKと1対1になると、最後は右足で落ち着いてゴール右隅に流し込んだ。「モト(本山)からのいいパスと、慎三(興梠)のいい落としで、いい流れで取れたゴールだと思う」。8日に行われた5回戦の甲府戦に続く2試合連続での延長決勝弾を柳沢は笑顔で振り返った。
あらゆる気持ちが入り交じった中での試合だった。19日には出場機会が減ったことなどを理由に「選手としても人間としても、より成長していくことが必要」とクラブに移籍を志願したことを告白した。96年にプロ入りして以来、イタリアに活躍の場を求めた以外、国内では鹿島一筋でプレーするミスターアントラーズ。MF小笠原も「冗談でしょ、きっと」と話すなど、チームには激震が走っていた。
試合前日には、宿泊先のホテルでオリヴェイラ監督と直接会談。「サポートしてほしい」と、あらためて慰留された。また、この日のスタンドには「永遠に俺(おれ)達の宝。いつまでもどこまでも共に俺達と戦おう」「頼むから残ってくれ」――といった、残留を嘆願するサポーターの横断幕がいくつも掲げられた。
それだけに、サポーターの目の前でゴールを決めた柳沢自身も「しっかり受け止めている。クラブへの愛は人一倍強いと感じている。僕自身もクラブとサポーターに対する思いはある」と複雑な思いを吐露。その一方で「選手として今後を考える必要がある」とも話すなど、その胸中は揺れに揺れている。
クラブ側は、大東社長を筆頭に全力で慰留する構えだが、柳沢は「今は天皇杯に集中したい。あと2試合なんで、体調もメンタル面もしっかり準備を整えてやっていきたい」と天皇杯が終わるまでは移籍話を封印する考え。残留か移籍か。苦しい胸の内を隠しながら、柳沢は残る2試合のピッチに立つ覚悟だ。
[ 2007年12月23日付 紙面記事 ]
田代絶好機外した…無念の途中交代
【鹿島1―0ホンダFC】鹿島の日本代表FW田代はマルキーニョスと2トップを組んで先発出場したが、不発に終わった。前半43分にはMF小笠原の右クロスから絶好のチャンスを得たが、ヘディングシュートは枠をとらえられなかった。8日の甲府戦に続くゴールはならず、後半27分に交代。試合後も「勝てたから良かったけど」と歯切れが悪かった。
[ 2007年12月23日付 紙面記事 ]
岩政&大岩 2枚岩で快進撃止めた
<鹿島・ホンダFC>後半、ホンダFC・吉村(左)のパスをクリアしようと、飛び込む岩政
Photo By 共同
【鹿島1―0ホンダFC】鹿島DF岩政は大岩との“2枚岩コンビ”で相手攻撃陣をシャットアウトし「チーム状態が悪くても失点しないリズムがある」と胸を張った。日本代表候補に選出されたため、チームが決勝に進出するとオフは激減するが「去年は準決勝で負けた。僕はまだ、元日のピッチに立ったことがない。オフをあきらめていい調整をしたい」と今季の2冠達成に意欲を見せていた。
[ 2007年12月23日付 紙面記事 ]
迷う柳沢が決勝ゴール…天皇杯第12日
後半44分、途中出場の柳沢(右から3人目)は、残留を願う横断幕の前でドリブル突破
◆天皇杯第12日 鹿島1―0ホンダFC(22日、ユアテックススタジアム仙台) FW柳沢敦(30)が、2試合連続決勝ゴールで鹿島を4強に導いた。後半27分からピッチに立ち、延長後半5分、FW興梠の落としたボールを右足インサイドでゴール右隅へ。「いい流れからのゴールだった。苦しんだけど、何とか勝ちをものにできてよかった」大苦戦の末、公式戦10連勝を決める得点に笑顔を見せた。
移籍志願が明るみに出てから初めての試合。スタンドには「残留」を願う横断幕が20個近く掲げられた。21日には、オリヴェイラ監督からも直接慰留された。「サポーター、クラブへの愛情は人一倍ある。でも、選手としてこれからを考えないといけない」と訴えた。
◆鹿島・増田も迷う 大分、J2仙台など5クラブから獲得オファーを受けているMF増田が21日夜にオリヴェイラ監督から説得されたことを22日、明かした。「他のチームに行くと後悔することになるぞ」などと伝えられ「必要ないと言われれば簡単に出て行けた。でも、これで難しくなった」とポツリ。これまでは移籍の姿勢を貫いていたが、残留も視野に入れながら、「早く結論を出したい」と話した。
(2007年12月23日11時01分 スポーツ報知)
天皇杯 準々決勝 鹿島苦しんで4強
2007/12/23(日) 本紙朝刊 スポーツ A版 13頁
サッカーの第87回天皇杯全日本選手権(日本サッカー協会、Jリーグ主催、共同通信社、NHK、茨城新聞社共催)は22日、ユアテックスタジアム仙台などで準々決勝の2試合を行い、Jリーグ1部(J1)の鹿島とG大阪がともに2大会連続で4強入りを決めた。
J1王者の鹿島は日本フットボールリーグ(JFL)のホンダFCに1−0で辛勝。延長後半に柳沢が貴重なゴールを決めた。G大阪も清水に延長戦で1−0と競り勝った。
準々決勝の残り2試合、愛媛−川崎、FC東京−広島は23日に行われる。
鹿島1−0ホンダFC 鹿島、延長戦制す
【評】鹿島は0−0の延長後半5分、ドリブルで中へ攻め込んだ本山の縦パスを興梠がつなぎ、最後は途中出場の柳沢がこの試合唯一のゴールを右隅に決めた。
鹿島は序盤からホンダFCの激しい当たりに苦しめられたが、相手が退場者を出した後半途中から主導権を握った。ホンダFCは動きの量とチームプレーで健闘した。試合は緊迫した攻防になった。
柳沢、2戦連続決勝G 移籍話封印 制覇に全力
「柳沢移籍 絶対反対」「ヤナギ、アントラーズ好きか?」「いつまでもどこまでも共に 俺おれたちのヤナギ」。移籍問題の渦中にあるFW柳沢敦に対し、残留を願うサポーターからのメッセージが書かれた約20本の横断幕が掲げられたスタジアム。そして、途中出場する前からの度重なる「ヤナギサワコール」。その期待に、鹿島の背番号13が2試合連続となる決勝ゴールで応えた。
鹿島は格下と見られたホンダFCを相手に苦戦を強いられた。「相手の組織的な戦いが目立っていて、苦しいなと思っていた」とベンチで見ていた柳沢の出番は後半27分から。「ラインが高かったのでDFの裏をという意識を持って入った」と田代に代わってピッチに飛び出した。
「中に入るとそう簡単にはいかなかった。相手のリズムだった」と90分間では勝負を付けられなかったが、狙いは変わらなかった。相手が退場者を出して 10人になったこともあり、ようやくボールが回り始めた延長後半5分。本山がドリブルで仕掛けた後のスルーパスに柳沢と興梠が反応。興梠がヒールで落としたところをキッチリ右足でゴールへ流し込んだ。「流れの中でしっかりとボールが来て、(興梠)慎三も簡単に落とした。モトも含めて素晴らしい流れだった」と、柳沢らしく決勝点よりもチームメートをたたえた。
オズワルド・オリベイラ監督とは試合前までに話をして、「残ってほしい」と慰留された。「鹿島への愛情、サポーターへの気持ちは僕自身、人一倍強いと思っている」と話しながらも、「選手としてこれからを考えなくてはいけない」と今後については、いまだ白紙であることを強調した。試合後も続いた「ヤナギサワコール」に背番号13は何を思ったのか。「今は天皇杯に集中して一戦一戦勝っていきたい」と移籍話を封印し、天皇杯制覇に全力を傾けることを誓った。
渦中の柳沢一色かと思いきや、スポニチは田代と岩政にもスポット。
まさに代表効果である。
とはいえ、柳沢主将の去就が気になるのは誰にとっても同じ事。
このゴールとは無関係にクラブに於けるポジションと責任を考慮すれば、答えは自ずから導き出されるであろう。