ヤス、他のチームのことよりもまずは自分たちのことをやろう
鹿島が誇るJ屈指のレフティ遠藤康。日々のシュート練習が生んだ初の2桁得点。逆転Vへ「まずは自分たち」
鹿島アントラーズはリーグ1位の得点数を記録している。柴崎岳、土居聖真、小笠原満男らどの選手も不可欠な選手だが、遠藤康の存在も忘れてはならない。高い技術に加え今シーズンは新しい武器を手にした。
2014年11月28日(金)13時05分配信
text by 青木務 photo Getty Images
「ブンデスのCLのためのテストに利用」
32節の川崎フロンターレ戦、前半終了間際に鹿島アントラーズが試合を動かした。

鹿島が誇るJ屈指のレフティ遠藤康。日々のシュート練習が生んだ初の2桁得点。逆転Vへ「まずは自分たち」
遠藤康【写真:Getty Images】
遠藤康の左足から放たれたボールが、美しい放物線を描きながらゴールへと吸い込まれる。GKを嘲笑うかのように頭上を越す一発だった。
「トラップした瞬間にいいところにボールを置けたので、シュートのイメージが浮かんだ」
完璧と呼べるゴールは、自身にとってキャリアハイとなるシーズン10点目。怪我で離脱しているダヴィに並び、チーム得点王である。
「(2桁には)届かないんだろうなとは思っていた」と本人は冗談交じりに話していたが、こう続けた。「ああいう形でチームの勝利に貢献できるゴールで良かったかなと思います」
168cmと小柄だが、腰回りが強くがっちりとした体躯はどんな相手もブロックできる。この川崎戦で決めたゴールもそうだ。柴崎岳の縦パスを受ける時、ボールと相手の間に体を入れた。遠藤の軸は全くぶれず、相手ディフェンダーはバランスを崩した。
スピードに恵まれたタイプではないが、彼のドリブルを止めるのは容易ではない。巧みに相手の逆を取りながらスルスルと前進していく。間合いの取り方が絶妙だから相手もチェックにいくタイミングを掴めない。
2006年、将来のエース候補という期待を受けて鹿島に入団。2007年から2009年でJリーグ3連覇を果たしたチームにあって、数年間は出場機会が限定された。それでも2010年から試合に絡み始めると、次第に欠かせない存在へと成長していった。
セレーゾ監督に植えつけられたシュートへの意識
1988年生まれ、今年で26歳になった。

鹿島が誇るJ屈指のレフティ遠藤康。日々のシュート練習が生んだ初の2桁得点。逆転Vへ「まずは自分たち」
トニーニョ・セレーゾ監督【写真:Getty Images】
近年の鹿島は中堅がレギュラーに定着できないと言われてきた。黄金世代を筆頭とした経験豊富な選手たちの高い壁を、なかなか越えることができなかった。下を見れば大迫勇也(現ケルン)ら若手の台頭もあり、なかなか飛躍のきっかけを掴めない中堅世代もいた。
また、そうした“働き盛り”の選手たちが移籍してしまうこともあった。内田篤人はドイツへと旅立ち、増田誓志も出場機会を求めてチームを去った。その中で遠藤は、鹿島で成長し、チームの攻撃を司るまでになった。
今シーズンは夏場にパフォーマンスを落としたが、その時はチームの攻撃も停滞気味だった。遠藤が右サイドでタメを作り、味方を使いながら自らも果敢な仕掛けを見せる。彼が重要なアクセントになっていることは明らかだ。
プレーの質は以前から高かった。加えて今は、ゴールへの意欲が日増しに高まっている。
「まずゴールのことを第一に考えたのが一番大きいんじゃないかなと思います」と、得点数の増加について話した。
そして、そういうマインドを植え付けたのがトニーニョ・セレーゾ監督だ。
「普段の練習中からセレーゾが『ゴールが見えたらシュートを打て』とよく言うので、みんなもシュート意識高いです。ディフェンダー陣も含めて。シュートを打った人にしかゴールはないと思っているので、それが一番なんじゃないかなと」
逆転リーグ制覇へ“人事を尽くして天命を待つ”
だが、意識しただけで得点数を伸ばすのは難しいだろう。得点力アップは、遠藤自身が努力を重ねた結果だ。シュート練習は長時間に及ぶという。
「すごく長いので、それに尽きる。最後立っているのも辛くなるくらいシュート練習しているので。こだわりも持っている人だなと」
熱い指揮官に後押しされるように、ゴールに向かってボールを蹴り続けた。2桁到達は決して偶然の産物ではないのだ。
それでも川崎F戦は悔やまれるシーンもあった。後半立ち上がり、柴崎のスルーパスに対して右から中へ走り込んだ。しかし、シュートは惜しくも枠を外れた。遠藤にとっては先制点の場面よりも自信があった。
「あれこそ入れなきゃいけないところだった。岳がよく見てくれていいパスをくれたので、本当に入れたかったですね。ディフェンダーの前に斜めに入るところ、トラップまでうまく行ったんですけどシュートが…。悔やまれるところでしたね」
それでもチームは勝利し、リーグ制覇も虎視眈々と狙っている。もちろん、浦和レッズとガンバ大阪の方が頂点に近いところいる。だが、相手のことは関係ない。遠藤をはじめ鹿島にはそういう空気を感じる。
「他のチームのことよりもまずは自分たちのことをやろう」
人事を尽くして天命を待つ。遠藤の言葉からはそんな気持ちが感じられた。
【了】

ヤスについて綴るフットボールチャンネルの青木氏である。
2007年の大逆転優勝時にルーキーとしてピッチに立ったヤスが、主軸としてチームを牽引しておる。
チーム得点王の10点を記録し、攻撃の要となっておる。
今となっては貴重な中堅選手として若いチームをまとめておると言えよう。
ヤスの左足、そして強靱なフィジカルでチームに勝利をもたらすのだ。
楽しみにしておる。
鹿島アントラーズはリーグ1位の得点数を記録している。柴崎岳、土居聖真、小笠原満男らどの選手も不可欠な選手だが、遠藤康の存在も忘れてはならない。高い技術に加え今シーズンは新しい武器を手にした。
2014年11月28日(金)13時05分配信
text by 青木務 photo Getty Images
「ブンデスのCLのためのテストに利用」
32節の川崎フロンターレ戦、前半終了間際に鹿島アントラーズが試合を動かした。

鹿島が誇るJ屈指のレフティ遠藤康。日々のシュート練習が生んだ初の2桁得点。逆転Vへ「まずは自分たち」
遠藤康【写真:Getty Images】
遠藤康の左足から放たれたボールが、美しい放物線を描きながらゴールへと吸い込まれる。GKを嘲笑うかのように頭上を越す一発だった。
「トラップした瞬間にいいところにボールを置けたので、シュートのイメージが浮かんだ」
完璧と呼べるゴールは、自身にとってキャリアハイとなるシーズン10点目。怪我で離脱しているダヴィに並び、チーム得点王である。
「(2桁には)届かないんだろうなとは思っていた」と本人は冗談交じりに話していたが、こう続けた。「ああいう形でチームの勝利に貢献できるゴールで良かったかなと思います」
168cmと小柄だが、腰回りが強くがっちりとした体躯はどんな相手もブロックできる。この川崎戦で決めたゴールもそうだ。柴崎岳の縦パスを受ける時、ボールと相手の間に体を入れた。遠藤の軸は全くぶれず、相手ディフェンダーはバランスを崩した。
スピードに恵まれたタイプではないが、彼のドリブルを止めるのは容易ではない。巧みに相手の逆を取りながらスルスルと前進していく。間合いの取り方が絶妙だから相手もチェックにいくタイミングを掴めない。
2006年、将来のエース候補という期待を受けて鹿島に入団。2007年から2009年でJリーグ3連覇を果たしたチームにあって、数年間は出場機会が限定された。それでも2010年から試合に絡み始めると、次第に欠かせない存在へと成長していった。
セレーゾ監督に植えつけられたシュートへの意識
1988年生まれ、今年で26歳になった。

鹿島が誇るJ屈指のレフティ遠藤康。日々のシュート練習が生んだ初の2桁得点。逆転Vへ「まずは自分たち」
トニーニョ・セレーゾ監督【写真:Getty Images】
近年の鹿島は中堅がレギュラーに定着できないと言われてきた。黄金世代を筆頭とした経験豊富な選手たちの高い壁を、なかなか越えることができなかった。下を見れば大迫勇也(現ケルン)ら若手の台頭もあり、なかなか飛躍のきっかけを掴めない中堅世代もいた。
また、そうした“働き盛り”の選手たちが移籍してしまうこともあった。内田篤人はドイツへと旅立ち、増田誓志も出場機会を求めてチームを去った。その中で遠藤は、鹿島で成長し、チームの攻撃を司るまでになった。
今シーズンは夏場にパフォーマンスを落としたが、その時はチームの攻撃も停滞気味だった。遠藤が右サイドでタメを作り、味方を使いながら自らも果敢な仕掛けを見せる。彼が重要なアクセントになっていることは明らかだ。
プレーの質は以前から高かった。加えて今は、ゴールへの意欲が日増しに高まっている。
「まずゴールのことを第一に考えたのが一番大きいんじゃないかなと思います」と、得点数の増加について話した。
そして、そういうマインドを植え付けたのがトニーニョ・セレーゾ監督だ。
「普段の練習中からセレーゾが『ゴールが見えたらシュートを打て』とよく言うので、みんなもシュート意識高いです。ディフェンダー陣も含めて。シュートを打った人にしかゴールはないと思っているので、それが一番なんじゃないかなと」
逆転リーグ制覇へ“人事を尽くして天命を待つ”
だが、意識しただけで得点数を伸ばすのは難しいだろう。得点力アップは、遠藤自身が努力を重ねた結果だ。シュート練習は長時間に及ぶという。
「すごく長いので、それに尽きる。最後立っているのも辛くなるくらいシュート練習しているので。こだわりも持っている人だなと」
熱い指揮官に後押しされるように、ゴールに向かってボールを蹴り続けた。2桁到達は決して偶然の産物ではないのだ。
それでも川崎F戦は悔やまれるシーンもあった。後半立ち上がり、柴崎のスルーパスに対して右から中へ走り込んだ。しかし、シュートは惜しくも枠を外れた。遠藤にとっては先制点の場面よりも自信があった。
「あれこそ入れなきゃいけないところだった。岳がよく見てくれていいパスをくれたので、本当に入れたかったですね。ディフェンダーの前に斜めに入るところ、トラップまでうまく行ったんですけどシュートが…。悔やまれるところでしたね」
それでもチームは勝利し、リーグ制覇も虎視眈々と狙っている。もちろん、浦和レッズとガンバ大阪の方が頂点に近いところいる。だが、相手のことは関係ない。遠藤をはじめ鹿島にはそういう空気を感じる。
「他のチームのことよりもまずは自分たちのことをやろう」
人事を尽くして天命を待つ。遠藤の言葉からはそんな気持ちが感じられた。
【了】

ヤスについて綴るフットボールチャンネルの青木氏である。
2007年の大逆転優勝時にルーキーとしてピッチに立ったヤスが、主軸としてチームを牽引しておる。
チーム得点王の10点を記録し、攻撃の要となっておる。
今となっては貴重な中堅選手として若いチームをまとめておると言えよう。
ヤスの左足、そして強靱なフィジカルでチームに勝利をもたらすのだ。
楽しみにしておる。