鹿島が10戦ぶりに浦和から勝利を挙げられるか
【プレビュー:明治安田J1 1st 第13節】近年は浦和優位の状況も、拮抗した試合内容は必至

古巣との対戦に闘志を燃やす興梠(左)と、鹿島の攻撃のカギを握る柴崎(右)。
浦和レッズ、鹿島アントラーズは今季、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)の出場権を獲得してガンバ大阪、柏レイソルとともにアジアの舞台で戦った。しかしG大阪、柏が決勝トーナメント進出を果たしたのに対し、残念ながら浦和と鹿島はグループステージ敗退に終わった。もっともこの結果、両チームは国内タイトルに注力することとなり、アジアタイトルを逸した悔しさも作用して現在は着実に勝ち星を挙げている状況だ。
浦和はACL敗退以前からリーグ戦で首位を走り連続無敗記録を更新するなど、その力を内外に示し、ACL敗退が決定した4月21日のグループステージ第5節・水原三星戦後の公式戦6試合で15得点と攻撃力が爆発している。これはシーズン序盤戦を消化し、今季獲得した新戦力選手と昨季までチームを支えた既存選手の融合が適切に為された成果だと考えられる。
ミハイロ ペトロヴィッチ監督はACLとJリーグを並行して戦った時期にターンオーバー制を採用して試合毎に選手陣容を入れ替えたが、最近は徐々にチーム内の序列が定まりレギュラー選手が固定化される傾向にある。ただ、攻撃的ポジションについてはいまだにレギュラー争いが激化しており、そのチーム内競争が各選手のモチベーション維持に寄与している。
なかでもエースFW・興梠 慎三が負傷から復帰した影響は大きい。5月5日のACLグループステージ第6節 ブリスベン・ロアー戦で戦線復帰してからの公式戦3試合で3ゴール。1トップのポジションで起点となり攻撃を活性化させるチャンスメーカー的役割、そして相手ペナルティエリア内で確実にゴールを奪うフィニッシュ能力と、ペトロヴィッチ監督が標榜するサッカースタイルの申し子的存在と言える彼の帰還は、チーム力を一層レベルアップさせる起爆剤となるだろう。
また今回の浦和の対戦相手は、興梠の古巣である鹿島だ。興梠は2013シーズンに鹿島から浦和へ加入してからの対鹿島戦4試合で2得点をマークし、そのすべてを埼玉スタジアムのホーム戦で記録している。
一方、直近のカシマスタジアムでの対戦(2014シーズンJ1リーグ 第30節)では後半途中に負傷交代し、のちの診断で腓骨骨折が判明して長期離脱を強いられた因縁もある。興梠本人は復帰から数試合を終えて「まだまだ全然本調子じゃない。ゴールは取れているけど、ボールを収められないし、チームのみんなに迷惑をかけている」と話すが、かつて在籍した愛着あるクラブとの対戦に並々ならぬ闘志を燃やしているのは間違いない。
その鹿島も浦和に対しては必勝を期しているはずだ。鹿島がリーグ戦で浦和に勝利したのは2010シーズンJ1リーグ 第1節(2-0)まで遡らなければならず、その後は9戦して5分4敗とひとつも勝ち星を挙げられない状況が続いている。
ちなみにペトロヴィッチ監督が浦和の指揮官に就任した2012シーズン以降の対戦成績は鹿島の3分4敗とかなり分が悪い。その理由として考えらえるのはペトロヴィッチ監督が採用する特殊な戦術と鹿島伝統の4バックシステムとの相性の悪さがある。
ペトロヴィッチ監督が発案した3-4-2-1をベースとした可変システムは、元々4バックを採用する対戦相手のスペースギャップを突く骨子があった。これに対して4バックを採用する相手は工夫を凝らして浦和と同システムで臨む『ミラーゲーム』を仕掛けるなどしたが、鹿島はこれまで一切相手に合わせることなく4-4-2、もしくは4-2-3-1システムを貫いてきた。浦和のペトロヴィッチ監督側からすれば、鹿島はまさに自らのチーム戦術に合致する最良の相手なわけだ。
ただし、昨季の両チームの対戦は2戦していずれもドローと、内容、結果ともに拮抗している。現在の鹿島はエースFWのダヴィを負傷で欠き攻撃陣の陣容構成に苦慮している印象もあるが、日本代表MF柴崎 岳らのゲームコントロール力に加え、最近はトップ下の土居 聖真が攻撃をリードする活躍を見せ、明治安田生命J1リーグ 1stステージ 第11節・FC東京戦では決勝ゴールを決めてチームを勝利に導くなど、次代を担う若手、中堅がチームを支えている。
また鹿島も浦和と同様にACLで敗退した屈辱をバネにして、前述のFC東京戦(1-0)、第12節・サンフレッチェ広島戦(2-2)と、ここ数戦は難敵相手に着実に勝点を積み重ねている。
今回のゲームは浦和にとっては首位堅持、鹿島にとっては上位浮上とシチュエーションの違いこそあれ、近年演じてきた拮抗したタイトゲームが再び繰り広げられる可能性の高い、注目の一戦となるだろう。鹿島が10戦ぶりに浦和から勝利を挙げられるか、それとも浦和がホーム・埼玉スタジアムで相手を返り討ちにするか。試合はナイトゲーム、午後7時にキックオフされる。
[ 文:島崎 英純 ]
浦和と鹿島の対戦について綴るJリーグ公式のプレビューである。
浦和の興梠が古巣との対戦に並々ならぬ闘志を燃やすと記す。
「浦和へ加入してからの対鹿島戦4試合で2得点をマーク」と書かれてしまっては、心が痛むもの。
結果はともかくとして、オフサイドの誤審と認められた以上、ゴールの記録も抹消すべきはなかろうか。
それはそれとして、この興梠を抑えきって勝利を掴む事こそ肝要である。
ここで、文責の島崎氏は聖真が攻撃をリードする活躍を見せておると述べる。
FC東京戦では決勝点、広島戦ではPKを得、また追加点もアシストしておる。
トップ下の本領を発揮してきたと言えよう。
攻撃だけでなく、時折は味方陣内のPA付近まで戻り守備を行っておる。
まさにキーマンであろう。
ただ、火曜日の紅白戦ではレギュラー組のトップ下に金崎夢生が起用されており、聖真のレギュラーは保証されたものではない。
ジネイの加入、金崎夢生の負傷から復帰と、前線での戦力が豊富になっておる。
誰がどのように起用されるか、全く読めぬ状況である。
攻撃力で優り、首位の浦和から勝利を掴み取りたい。
楽しみな一戦である。

古巣との対戦に闘志を燃やす興梠(左)と、鹿島の攻撃のカギを握る柴崎(右)。
浦和レッズ、鹿島アントラーズは今季、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)の出場権を獲得してガンバ大阪、柏レイソルとともにアジアの舞台で戦った。しかしG大阪、柏が決勝トーナメント進出を果たしたのに対し、残念ながら浦和と鹿島はグループステージ敗退に終わった。もっともこの結果、両チームは国内タイトルに注力することとなり、アジアタイトルを逸した悔しさも作用して現在は着実に勝ち星を挙げている状況だ。
浦和はACL敗退以前からリーグ戦で首位を走り連続無敗記録を更新するなど、その力を内外に示し、ACL敗退が決定した4月21日のグループステージ第5節・水原三星戦後の公式戦6試合で15得点と攻撃力が爆発している。これはシーズン序盤戦を消化し、今季獲得した新戦力選手と昨季までチームを支えた既存選手の融合が適切に為された成果だと考えられる。
ミハイロ ペトロヴィッチ監督はACLとJリーグを並行して戦った時期にターンオーバー制を採用して試合毎に選手陣容を入れ替えたが、最近は徐々にチーム内の序列が定まりレギュラー選手が固定化される傾向にある。ただ、攻撃的ポジションについてはいまだにレギュラー争いが激化しており、そのチーム内競争が各選手のモチベーション維持に寄与している。
なかでもエースFW・興梠 慎三が負傷から復帰した影響は大きい。5月5日のACLグループステージ第6節 ブリスベン・ロアー戦で戦線復帰してからの公式戦3試合で3ゴール。1トップのポジションで起点となり攻撃を活性化させるチャンスメーカー的役割、そして相手ペナルティエリア内で確実にゴールを奪うフィニッシュ能力と、ペトロヴィッチ監督が標榜するサッカースタイルの申し子的存在と言える彼の帰還は、チーム力を一層レベルアップさせる起爆剤となるだろう。
また今回の浦和の対戦相手は、興梠の古巣である鹿島だ。興梠は2013シーズンに鹿島から浦和へ加入してからの対鹿島戦4試合で2得点をマークし、そのすべてを埼玉スタジアムのホーム戦で記録している。
一方、直近のカシマスタジアムでの対戦(2014シーズンJ1リーグ 第30節)では後半途中に負傷交代し、のちの診断で腓骨骨折が判明して長期離脱を強いられた因縁もある。興梠本人は復帰から数試合を終えて「まだまだ全然本調子じゃない。ゴールは取れているけど、ボールを収められないし、チームのみんなに迷惑をかけている」と話すが、かつて在籍した愛着あるクラブとの対戦に並々ならぬ闘志を燃やしているのは間違いない。
その鹿島も浦和に対しては必勝を期しているはずだ。鹿島がリーグ戦で浦和に勝利したのは2010シーズンJ1リーグ 第1節(2-0)まで遡らなければならず、その後は9戦して5分4敗とひとつも勝ち星を挙げられない状況が続いている。
ちなみにペトロヴィッチ監督が浦和の指揮官に就任した2012シーズン以降の対戦成績は鹿島の3分4敗とかなり分が悪い。その理由として考えらえるのはペトロヴィッチ監督が採用する特殊な戦術と鹿島伝統の4バックシステムとの相性の悪さがある。
ペトロヴィッチ監督が発案した3-4-2-1をベースとした可変システムは、元々4バックを採用する対戦相手のスペースギャップを突く骨子があった。これに対して4バックを採用する相手は工夫を凝らして浦和と同システムで臨む『ミラーゲーム』を仕掛けるなどしたが、鹿島はこれまで一切相手に合わせることなく4-4-2、もしくは4-2-3-1システムを貫いてきた。浦和のペトロヴィッチ監督側からすれば、鹿島はまさに自らのチーム戦術に合致する最良の相手なわけだ。
ただし、昨季の両チームの対戦は2戦していずれもドローと、内容、結果ともに拮抗している。現在の鹿島はエースFWのダヴィを負傷で欠き攻撃陣の陣容構成に苦慮している印象もあるが、日本代表MF柴崎 岳らのゲームコントロール力に加え、最近はトップ下の土居 聖真が攻撃をリードする活躍を見せ、明治安田生命J1リーグ 1stステージ 第11節・FC東京戦では決勝ゴールを決めてチームを勝利に導くなど、次代を担う若手、中堅がチームを支えている。
また鹿島も浦和と同様にACLで敗退した屈辱をバネにして、前述のFC東京戦(1-0)、第12節・サンフレッチェ広島戦(2-2)と、ここ数戦は難敵相手に着実に勝点を積み重ねている。
今回のゲームは浦和にとっては首位堅持、鹿島にとっては上位浮上とシチュエーションの違いこそあれ、近年演じてきた拮抗したタイトゲームが再び繰り広げられる可能性の高い、注目の一戦となるだろう。鹿島が10戦ぶりに浦和から勝利を挙げられるか、それとも浦和がホーム・埼玉スタジアムで相手を返り討ちにするか。試合はナイトゲーム、午後7時にキックオフされる。
[ 文:島崎 英純 ]
浦和と鹿島の対戦について綴るJリーグ公式のプレビューである。
浦和の興梠が古巣との対戦に並々ならぬ闘志を燃やすと記す。
「浦和へ加入してからの対鹿島戦4試合で2得点をマーク」と書かれてしまっては、心が痛むもの。
結果はともかくとして、オフサイドの誤審と認められた以上、ゴールの記録も抹消すべきはなかろうか。
それはそれとして、この興梠を抑えきって勝利を掴む事こそ肝要である。
ここで、文責の島崎氏は聖真が攻撃をリードする活躍を見せておると述べる。
FC東京戦では決勝点、広島戦ではPKを得、また追加点もアシストしておる。
トップ下の本領を発揮してきたと言えよう。
攻撃だけでなく、時折は味方陣内のPA付近まで戻り守備を行っておる。
まさにキーマンであろう。
ただ、火曜日の紅白戦ではレギュラー組のトップ下に金崎夢生が起用されており、聖真のレギュラーは保証されたものではない。
ジネイの加入、金崎夢生の負傷から復帰と、前線での戦力が豊富になっておる。
誰がどのように起用されるか、全く読めぬ状況である。
攻撃力で優り、首位の浦和から勝利を掴み取りたい。
楽しみな一戦である。