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最後まで青木は、青木のままだった

“鹿島の象徴”と評される青木剛という男。内田篤人も「一緒のチームでやれて嬉しかった」
広島由寛(サッカーダイジェスト)
2016年06月26日


スタンドからは「青木コール」――背番号5に声がかかった。


鹿島でのラストゲームで、ステージ制覇に貢献。プレータイムは限られたものだったが、「失点してはいけない、勝って終わるんだ」という想いでピッチに立ち、有終の美を飾った。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

“最後の舞台”はロスタイムに訪れた。

 90+4分、ブエノとの交代でピッチに入ると、スタジアムは大きな拍手に包まれる。

 鹿島ひと筋16年目となるシーズンの第1ステージ最終節。6月25日の福岡戦は、青木剛にとって、愛すべきクラブでのラストゲームとなった。

 福岡戦の2日前、クラブの公式HPが、青木の鳥栖への完全移籍を伝える。

「ファーストステージが最終局面を迎える大事な時期ですが、自分の気持ちをしっかりと伝えたかったので、このタイミングでの発表とさせていただきました」

 今季は出場機会になかなか恵まれなかった青木のもとに、鳥栖からオファーが届く。選択肢はふたつあった。ひとつは、鹿島でサッカー人生を全うすること。もうひとつは、新天地で自分の力を試してみたいという想いだった。

 簡単には結論を出せなかったが、最終的には新たなチャレンジを選んだ。自分の考えを親しい人間に伝えると、ポジティブな反応が返ってきたという。

「反対をした人が、ひとりもいなかった。『やるべきだ』って」

 ピッチに立てないもどかしさに不安を覚えた。だが、周りの評価は“まだまだできる”というものだった。青木自身、フットボーラーとしての生きがいを取り戻したかったから、オファーを受けることにした。

 そうして迎えた福岡戦だった。3試合ぶりのベンチ入り。チームは前半に2点のリードを奪う。後半も2-0のままゲームは進むなか、交代のカードが一枚、二枚と切られる。

 時計の針はすでに90分を回っている。スタンドからは「青木コール」――背番号5に声がかかった。

「ああやってサポーターの方から、あそこまでコールしてもらえるとは思わなかったので、すごく嬉しかった」

 鹿島の一員としての最後の試合。あとどれだけ時間が残されているか分からなかったが、「勝っている状態で、失点してはいけない、勝って終わるんだ、と。そういう気持ちで」ピッチに足を踏み入れた。

 そして、ほどなくしてタイムアップ。青木のもとに最初に歩み寄ったのは、小笠原満男だった。

「もっとあいつとプレーしたかった」(小笠原)。


青木(5番)とともに鹿島の黄金期を築いた小笠原(40番)は、去りゆく戦友を「アントラーズを象徴する選手」と称える。写真:徳原隆元

 2-0で勝利したとはいえ、小笠原は試合内容に満足していなかった。「もっと良い試合をしていれば……」。そんな想いが胸にこみ上げてきた。

「長く(試合に)出してあげたかった。もっとあいつとプレーしたかった。長いこと、あいつとはやってきたので。本当に尊敬できる人間であり、選手。あいつが見せてきたものを、みんなで引き継いでいかなければいけない」

 先述したとおり、青木は今季、鹿島で難しい状況に置かれていた。それでも、決して投げやりになるようなことはなかった。常に高いモチベーションで練習に励んでいた。

「みんな、そういう姿を見ている。自分もそうだけど、若い選手たちは見習わなければいけない。本当に、アントラーズを象徴する選手だと思う」(小笠原)

 小笠原に同調するように、青木のことを「鹿島を支えていたと思うし、謙虚で素晴らしい人」と称えるのは、元チームメイトの内田篤人だ。

 古巣の大一番に駆けつけた内田はこの日、背番号5のユニホームを身にまとっていた。

「そりゃ、着るでしょ。青木さんの最後なんだから。ショップで買おうとしたけど、売り切れでなくて、ショップの方から昔のユニホームをいただきました」

 福岡戦の前日練習には飛び入り参加して、最初のふたり組でのアップは青木と組んだ。今季はほとんど試合に絡めていない青木の身を案じて、「監督と話をするんですか」と投げかけてみた。

「そうしたら、『いや、自分に力が足りないのは分かっているから、自分が乗り越えるだけだ』って。青木さんらしいな、と。ああいう人と一緒のチームでやれて、すごく嬉しく思った」

 内田が明かしたエピソードからも、青木が真摯にサッカーに取り組んできたことが分かる。そんな青木自身、自らは鹿島になにを残してきたと考えているのか。このクラブになにを伝えようとしてここまでやってきたのか。


青木の「背番号5」のユニホームを身にまとい、試合を観戦した内田。スタンドからの「青木コール」には、「よく言ってくれた!」とコメント。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

新天地での挑戦は「不安」でもあり「楽しみ」でもある。


鹿島を応援してくれる人たちの笑顔を思い描いてプレーし続けた青木。ファン、サポーターの声援は「しっかりと僕の心に響いていました」。写真:徳原隆元


15年以上、鹿島ひと筋でプレーした青木は、多くの人から愛される存在だった。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)


「サッカーをやっているなかで、目標は優勝することで、目的はなんなのかと考えた時に、やっぱり、見てくれている人に喜んでもらうことだったり、感動してもらうことだったり、元気になってもらったりとか。残せたかどうかは分からないですけど、自分自身はそういう気持ちでサッカーをここまでやってきました」

 鹿島というクラブが「本当に大好き」で、自分が愛すべきクラブを熱心に応援してくれる人々の笑顔を想像し、ここまで戦ってきた。例えば、試合に勝った時、ピッチにいても「ファンやサポーターの方が喜んでくれている姿は、試合が終わった時は本当に目に入る」という。鹿島の選手として喜びを感じる瞬間だ。

 サポーターへのメッセージを問われると、次のように語った。

「本当に感謝していますというのを一番に伝えたい。ファン、サポーターの方たちの声援は、しっかりと僕の心に響いていました」

 新天地での挑戦に向けては、「正直、不安もある」。もっとも、自分が成長していくためには、これからの経験は必要なものだと考えている。だから、「楽しみでもある」。

 引っ越しの準備には、まったく手をつけていない。

「大事な時期でしたし、最後までアントラーズの一員としてやろうと思っていたので。これから荷造りします」

 報道陣から「長い間、お世話になりました」と礼を言われると、「こちらこそ、お世話になりました」と律儀に頭を下げる。

 最後まで青木は、青木のままだった。

取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)



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青木について筆を走らせるサッカーダイジェストの広島氏である。
昨日の福岡戦は青木にとって鹿島でのラストマッチとなった。
サポーターは大きく青木コールをし、青木を送り出す部隊が整った。
短い時間ではあったが、青木がピッチに立ち、勝利の時間を向かえることが出来たことは幸せである。
ステージ制覇を青木と共に向かえることが出来た。
これからは別の道を歩む。
しかしながら、青木が鹿島に多くのタイトルもたらせたことは変わらぬ。
ずっとずっと忘れぬ。
素晴らしい時間をありがとう。
これからも応援しておる。


チンチロリン

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昨日のゴール裏の青木コールで号泣止まりませんでした。
新天地でも頑張ってください。

青木チャントに涙が出そうになりました。
まさしくプロの鑑のような選手だと思います。鳥栖に行っても活躍してくれるでしょう。
でも、対戦した時は鹿島がゴールしますからね(笑)

ありがとう!!
いってらっしゃい!!

いつか何かしらの形で鹿島に帰ってくる事を信じて待ってます。
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鹿島愛。
狂おしいほどの愛。
深い愛。
我が鹿島アントラーズが正義の名のもとに勝利を重ねますように。

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