鹿島アントラーズ「キーマン」たちの思い

前人未到、全タイトル制覇を目指して


FUJI XEROX SUPER CUPを手始めに
「小笠原満男が示す、キャプテンの自覚」


満足できなかったJリーグの頂点




何かを成し遂げたとき、人の心は満たされる。しかし、その心地よさに浸り続ければ、怠惰な気持ちに足を絡め取られ前進する意欲は消えていく。一つの成功で満足せず、次の成功への意欲に変えられる人間だけが、歩みを止めずに進み続けられるのだ。

Jリーグで最も勝ち続ける男、小笠原満男は、昨シーズン二つの国内タイトルを加えた。これでプロ19年のキャリアで獲得したタイトル16冠。一つ、二つでは満足できなくとも、これだけ成功を遂げれば、少しは気が緩んでしまっても不思議はない。しかし、新たなシーズンを迎える小笠原の心は、戦いに向かう意欲で燃えている。

「昨シーズンは最後に勝ったから良いシーズンだったと言ってもらえているけれど、1年全体で見ればセカンドステージを失ったし、ルヴァンカップも予選で敗退した。失ったタイトルはあるし、もっと試合内容を高めたい気持ちもある。何よりJリーグは年間勝点で1位ではなかった。そこに僕らがたどり着いたわけではないし、鹿島のなかに満足している人はいないと思う」

最終的にはタイトルを手にしたものの、年間勝点では浦和から15点も離された。だから、優勝チームとして登壇したJリーグアウォーズでは「浦和レッズに敬意を表したい」と触れた。

「昨シーズンまでは、たとえつまずいても取り返しはつくシステムだったけれど、今シーズンからは連敗すると苦しくなる。だから安定して勝てるようにならないといけないし、悪いときは悪いなりに勝ち星を拾っていかないといけない」

20年目のシーズンを迎える小笠原は、鹿島神宮に奉納する絵馬に毎年のように同じ言葉を書き記す。

絵馬には「全勝」の二文字が躍っていた。

今年も変わらず全タイトル獲得を目指す。

知らなければいけない勝ち方



今季からJリーグを制覇するまでの道のりが変わる。昨季のようにシーズンを通して波の大きな戦いではリーグ連覇は難しい。小笠原は言う。

「もっと勝ち方を覚えないといけない。特に今シーズンは試合が多く入ってくる。それを過密日程と思わず戦えることも大事だし、それに加えて疲れているときでも“勝つ術”がある。そういう勝ち方を覚えなければいけない」

どんな試合でも、どんな相手でも勝つ。勝つためにどうすればいいのかを逆算して考えるのは、クラブ創設以来、偉大なる先人たちが植え付けた鹿島の伝統だ。

そして、歴代の選手に脈々と受け継がれてきた勝ち方は今、小笠原から若い選手たちへ伝えられようとしている。しかし、それは“勝つ術”が書かれたノートのようなものではない。言葉で伝えられるのはほんの一部。多くはピッチに立ち、肌で感じることでしか得られない。



小笠原に改めて問うた。勝つ術とは何か?

誰よりも勝ってきた男は「一言では言えない」と強調した。

「毎日の練習から勝つことを意識しないといけないし、ただ一生懸命やっていれば勝てるほど甘い世界ではない。点差や時間帯、相手の心理状態でいろんな状況が刻一刻と変わっていく。それを無視していつも同じことをやっていても勝てない。ピッチで起きている変化を感じ取って、チームに伝えられる選手が増えてこないと試合には勝てない」

常勝軍団のキャプテンとしての自覚

このオフで鹿島は4人の外国人選手を獲得した。2016年のベースに上積みされた戦力は、新たなシーズンへの期待感を膨らませる。しかし、それだけでチームが強くなるわけではない。

「良い選手がたくさんいれば勝てるわけではない。チームとしてまとまらないといけないし、新しい選手が入れば連携や戦術理解も大事になってくる」

チーム全員で戦う。それが鹿島の強さの根源であり、すべてでもある。新しい選手が入ってくれば声をかけ、緊張している新人がいれば「思い切ってやれ」と後押しする。気づいたことがあったとき、適切に働きかけることは「最も大事なこと」と自認する。

明治安田生命Jリーグチャンピオンシップ直前、リーグ戦4連敗で終えた選手たちは自主的に決起集会を開いた。そのとき、小笠原の一言がまとまりを欠いていたチームに明確な指針を与えた。



「監督が石井さんになったときの気持ちを思い出そう」

今チームを率いている石井正忠監督は、2015年のシーズン途中から前任監督からチームを引き継いでいた。つまり、小笠原はチームを良い状態に戻そうと言ったのではなく、苦しい時期を乗り越えた気持ちを思い出そうと言ったのである。

どうすればチームを立て直せるのか迷っていた選手も多いなかで、その一言で立ち返る場所が明確となった。

「選手にはいろんなタイプの人がいる。こっちが言いたいことだけを言うのではなく、チームのこと、相手のことを思って言えないといけない」

決して口数は多くない。しかし、ここというタイミングを見逃さないキャプテンの一言が、鹿島の結束力を強めている。

激しいポジション争いを勝ち抜くために

とはいえ、小笠原といえどもポジションが保証されているわけではない。天皇杯決勝では途中交代を命じられ、優勝したにも関わらず「最後までピッチに立ち、もっともっと勝利に貢献できるように目指していきたい」と悔しそうな表情を滲ませていた。同じポジションには2年連続で選手が補強された。激しい競争を勝ち抜けない限り定位置を与えられないのは他の選手と変わらない。

「選手は誰しも最後までピッチに立っていたいという気持ちがある。それがなくなったら終わりだと思います。良い選手がたくさんチームに加わったので、全員で競争しながらピッチに立てるようにしたい。個人的にはそこにこだわってやっていきたい」

石井監督は、小笠原に全幅の信頼を寄せ、試合中、他の選手にキャプテンマークを委ねることはあっても「チームのキャプテンは満男」と明言する。

生まれながらのリーダーは、例えピッチに立たなくてもチーム全体に安心感を与える。しかし、4月で38歳になる大ベテランも肩書きを外せば一人のサッカー選手であることに変わりはない。誰が相手でもポジションを譲る気はない。

最初のタイトル、FUJI XEROX SUPER CUPを掴みにいく

2017年、鹿島はクラブの目標として「全冠制覇、そして世界へ」と参加するすべての国内タイトルに加え、アジア王者となり再びクラブ世界一の座へ挑戦しようとしている。

FUJI XEROX SUPER CUPは、シーズン最初のタイトルがかかった重要な試合だ。

意気込みを問われると、自然と口調は強くなった。

「タイトルの一つだと思う。やっぱり僕らは勝ちにいかなきゃいけないのは間違いない。相手がどういう気持ちで臨むのかはわからないけれど、僕らにはシーズン直前の調整試合という意味は絶対にない」

勝てば勢いがつくのは確かだろう。だからといって、他の試合より重要度が増すわけではない。

「毎試合勝たないといけないし、どこで勢いをつけるとかそういう考えはない。常に勝たなきゃいけないのがこのチーム」

小笠原の言葉は本人そのものだ。どんなときも多くを語らず“勝つ”という一点に集中する。しかし、言葉に変化は少なくとも、試合で勝つためにやることは刻一刻と変化する。さまざまな要因で変化する状況に即して、流れを読み、最善の一手を探る。その積み重ねが16冠という圧倒的な結果をもたらした。



「僕らは、一つのタイトルとして勝ちに行く」

FUJI XEROX SUPER CUP 2017でも、試合に向かう姿勢はまったく変わらない。

(文・田中滋)

FUJI XEROX SUPER CUPでの勝利を目指し
「昌子源が見せる、新『3番』像」


忘れなければいけない去年の成功




昨年末、鹿島アントラーズが繰り広げた快進撃は強いインパクトを残した。明治安田生命Jリーグチャンピオンシップ(CS)で川崎フロンターレと浦和レッズを倒し、7年ぶりのリーグタイトルを獲得すると、その勢いのままクラブ世界2位という金字塔を打ち立てた。さらに、その後の天皇杯も優勝。1カ月余りで10試合を戦うなかで、一気にチームは成長を遂げた。

「かなり変わったと思います」

実感を込めて昌子源は振り返った。

「でも、あのときの雰囲気を知っている選手の何人かはチームを離れ、優勝を経験していない選手たちが入ってきた。そこはやはり、『去年の終盤と同じような戦いをしよう』と言ってもわからないと思う」

天皇杯を制した直後から「忘れないといけない」と昌子は繰り返していた。

「『僕らがチャンピオンだ』という意識を持ってはいけないと思います。どんなときでもチャレンジャー。なんとなく、僕らが王者で浦和がチャレンジャーという気持ちになってしまいがちですが、僕らは昨シーズンのJリーグのシステムの中で優勝できた。それがなければただの3位。年間勝点1位は浦和でしたし、そこに僕らはチャレンジャーとして全力で挑みたい」

年間勝点3位でリーグ優勝を果たし、クラブ世界一を決める大会でも快進撃を続けた。日本勢初の決勝進出という偉業を達成したが、勢いだけで到達したという心ない声も昌子の耳には届いていた。そして臨んだ天皇杯。途中で敗れていれば“やっぱり”と言われたところを優勝で終え“さすが”という評価に変えた。

しかし、それは周囲の印象にすぎない。そこに流されてしまうのではなく、昌子は努めて冷静に自分たちを分析していた。

こだわらなくなった背番号「3」



客観的な評価は自分自身にも向けられる。そこで導き出されたのが「背番号は気にしない」という結論。守備の安定感は飛躍的に増し、Jリーグベストイレブンを受賞するに至った。

昌子が背負うのは背番号「3」。日本が誇る屈強なセンターバックが担ってきた伝統ある番号を受け継いだ。最初は、そのイメージも引き継ごうともがいたが、そもそもタイプが違っていた。

「名だたる先輩方に追いつこうと思って3番にこだわりすぎると、ヘディングは絶対に勝とうと思うようになる。相手のゴールキックが飛んできたとき、競り勝てればいいけれど、弾けないで負けると『あの人たちは、こういうところで勝ってきたのだな』と落ち込んでしまう。その結果、次の一歩目が遅れるし、ポジションに戻るのも遅くなっていました」

そもそも自分は空中戦に強いタイプとは違う。そこに気がついたとき、はっきりとプレーが変わった。

「正直に言うと、今の自分のレベルだと、ヘディングは負けると思っています。でも、ここで負けてもその次で取れればなにも問題ない」

自分が競り勝てなくても、もう一人のセンターバックが背後をカバーしてくれればボールは奪える。相手がトラップしたなら、ボールコントロールが乱れたところに狙いを定めて奪い取る。昌子は、誰にも負けない俊敏性を持っていた。



受け継ぐのは背番号「3」の魂。プレーではなかった。

「良い意味で3番を忘れました。でも魂みたいなものは受け継がないといけない。ラインコントロールだったり、味方を鼓舞したり、怒ったり。それをするのが3番だと思っています。そこは継続しつつ、自分の3番像というのを創ろうと思います」

ひしひしと感じるようになった小笠原からの信頼

こうした昌子の変化にいち早く気づいたのはベテラン勢だった。

「まだまだだとは思うのですが、去年はまわりの先輩方が僕を頼ってくれているのをひしひしと感じるようになりました。それはやっぱり嬉しかったですね」

センターバックの一つ前にいる小笠原満男からは「もっと俺を声で動かしてくれ」と言われるようになった。危険なスペースがどこにあって、相手は誰がフリーなのか、フィールド全体はより後方からの方がよく見える。小笠原は、目の役割を昌子に託すようになっていた。

それは、昌子の後ろにいるキーパーの曽ヶ端準も同じ。



「曽ヶ端さんはフィールド全体に指示を飛ばしていたけれど、『源がボールサイドの後方から声をかけてくれるから、俺は逆サイドのポジション修正の指示を飛ばそう』と思ってくれている」

右サイドバックの西大伍からも「後ろはお前がいれば大丈夫だろ」と言われるようになった。そうした変化は嬉しくもあり、身の引き締まる思いがした。

「あの人たちは、もっとすごいものを背中に背負っている。まだ全部は無理だけど、半分くらいなら背負えると思います」

今シーズンが始まるとき石井正忠監督は、何人かの選手を呼び寄せ「チームを共に引っ張って欲しい」と託している。

その中には昌子もいた。

いつかは、と願うキャプテンマーク

鹿島に加入した高卒1年目のルーキーのときから、いつか鹿島のキャプテンになりたいと考えていた。一人だけ左腕に巻くことが許される黄色の腕章には、鹿島の歴史と伝統が重みを加えていた。

現在、キャプテンを務めるのは小笠原。08年から就任すると誰もが認める総大将として常勝軍団の先頭に立ってきた。しかし、11年に鹿島に加入した昌子は、“キャプテン小笠原”がどうやって誕生したのかを知らなかった。そこで、鹿島のOBに「なんで満男さんがキャプテンになったのですか?」と聞いた。そのときのOBの回答は、昌子の胸に深く刻み込まれるものだった。



「彼は自分からキャプテンをやりたいとは一度も言わなかった。でも、まわりの誰もが『小笠原がキャプテン』と思っていた。だから、彼がキャプテンになったとき、誰も文句を言わなかった」

キャプテンは自分からなるものではなく、まわりから認められて初めてなれるものだった。

だから、昌子は焦ることなく、まずは自分の役目を全うすることに集中している。

「勝てばまわりもビビらせることができる」

FUJI XEROX SUPER CUPは今季最初の公式戦となる。出場すれば自身初の舞台。その試合を昌子は「ものすごく重要な試合」と位置付けていた。

「鹿島が勝つにしろ、浦和が勝つにしろ、勝った方の評価はグンと高まる。浦和は内容が悪くても勝てば『勝ち切る力がついた』と言われるようになる。僕らも内容が悪くても勝てば『さすが鹿島』と言われるだろうし、内容の良い勝ち方をしたら『今年の鹿島はすごい』と思わせることができる」

最近、昌子はこうした試合の意義深さに気が付くようになったという。

CSも天皇杯決勝も、そしてこのFUJI XEROX SUPER CUPも出場できるのは限られたクラブのみ。他のクラブの選手たちは試合を外から見ることしか許されない特別な戦い。しかし、その勝敗は、出場していない選手にまで影響を及ぼすことができた。

「まわりが見ているということはそれだけ視線が僕らに集中する。ディフェンスである僕が目立つ試合は良い試合ではないけれど、鹿島が目立つには絶好の機会だと思います。負けると悪い方に転ぶけれど、勝てばまわりをビビらせることができる。『今年は鹿島が本命だな』と対戦していない相手にも思わせることができれば、それほどラッキーなことはない」

勝ち抜きながら進むわけではなく、勝負は一発勝負。さらには今季最初の公式戦でタイトルを浦和と争う。



「シーズンを良い形でスタートさせるためにも大切な試合。相手も同じ気持ちで向かってくるはず。もしかしたら、FUJI XEROX SUPER CUPは最も掴むのが難しいタイトルかもしれません」

昨季、飛躍を遂げた昌子源が、さらなる高みを目指して初めてのFUJI XEROX SUPER CUPへ挑む。

(文・田中滋)


満男と源にインタビューを敢行した田中滋氏である。
満男の勝利への強く熱い気持ち、源は自分の立ち位置、キャプテンについて語る。
二人の思いが伝わってきて嬉しい。
富士ゼロックス・スーパー杯に向けて行われたインタビューではあるが、根気に欠ける意気込みも伝わる。
二人の力で勝利を掴む。
楽しみである。

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