代理人・田邉伸明氏、移籍市場について語る

DAZNマネーは日本に何をもたらすのか?
代理人が移籍市場から見た今季のJリーグ

宇都宮徹壱
2017年2月20日(月) 11:20


「浦和(レッズ)は、このところ堅実な補強を心がけていますよね。(中略)ただ、成功率ということでいうと、やっぱり鹿島(アントラーズ)のほうが高いと思います」

 18日に開催されたFUJI XEROX SUPER CUPで対戦した両クラブについて、選手の移籍という視点から興味深い証言をしていたのが、株式会社ジェブエンターテイメントの代表、田邉伸明氏である。確かに今オフの移籍リストを見ると、浦和は手堅く選手層に厚みを加えているのに対し、鹿島はより中期的な視野に立った補強をしているように感じられる。試合は3−2で鹿島が勝利したが、両クラブの編成の是非を語るのは、シーズン終了時の結果を見るまで控えるべきだろう。

 さて、敏腕エージェントとして知られる田邉氏には、日本国内の移籍ルールが大きく変わった2010年にもインタビューを試みている。あれから7年。JリーグはDAZN(ダ・ゾーン)マネーの流入により、新たな時代の局面を迎えることになった。果たして、分配金や優勝賞金が倍増されることで、Jリーグはどのように変化してゆくのだろうか。そして、今オフの移籍市場から何が見えてくるのか。さっそく田邉氏の言葉に耳を傾けてみることにしたい。(取材日:2017年2月10日)

年俸の高いベテランの加入は何をもたらすか?

(今年の移籍傾向について)去年と大きな違いはなかったと思っています。海外から、清武弘嗣(セビージャ/スペイン→セレッソ大阪)や小野裕二(シント=トロイデンVV/ベルギー→サガン鳥栖)、高萩洋次郎(FCソウル/韓国→FC東京)、太田宏介(フィテッセ/オランダ→FC東京)らが戻ってきましたが、決して特筆すべきことではない。スペイン系の監督が3人に増えた(東京ヴェルディのミゲル・アンヘル・ロティーナ監督、徳島のリカルド・ロドリゲス監督、千葉のフアン・エスナイデル監督。エスナイデル監督はスペインで経験を積んだアルゼンチン人)ことも、たまたまそうなったという話でしょう。

 あるいは、大久保嘉人(川崎フロンターレ→FC東京)、田中マルクス闘莉王(名古屋グランパス→京都サンガF.C.)、中村俊輔(横浜F・マリノス→ジュビロ磐田)といった、元日本代表のベテランが移籍したというのも話題になりましたが、俊輔以外は(移籍金のかからない)フリーでの移籍でした。「そういうこともありましたね」で終わりだと思います。ただ、俊輔を獲得した磐田が典型例だと思いますが、30歳以上の年俸が高い選手を獲得したということは、移籍先のクラブはそれだけ積極的にお金を使ったということです。闘莉王を獲得した京都にしてもそう。

 そして、俊輔や闘莉王がやって来たことによって、チーム内の年俸のバランスが変わった。つまり「格差が生まれた」と言えます。すぐに影響が出るとは思わないけれど、今までいる選手にしてみれば「自分も活躍すれば(年俸が)上がるんじゃないか」と考えるでしょうね。

 俊輔の年俸がいくらか分かりませんが、新聞などで億単位の額が出ているから、磐田の選手も意識しているでしょうし、実際に来てみたら練習でも「さすがだな」と思いますよね。特に若い選手にいい影響を与えるでしょうから、単に戦力というだけでない部分で「獲得して良かった」と思えるでしょう。話題性のある外国人を獲得してくることも、もちろん悪いことではない。でも一方で、実力と名前がある日本人選手の年俸をアップすることでも、Jリーグの活性化に十分つながるというのが僕の考えです。

ポドルスキの「年俸7億円」を分配金で賄えるのか?

 先日Jリーグが発表した、理念強化分配金に関連する話をしましょう。今年のオフ、ヴィッセル神戸がルーカス・ポドルスキを獲得するのではないか、という報道がありました。結果としてこのタイミングでは実現しませんでしたけれど、DAZNマネーによる強化分配金の増加によって、「有名な外国人選手を獲得できるのでは」という意味でも話題になりました。分配金は、優勝チームには1年目で10億、2年目で4億、3年目で1.5億でしたよね。仮にその分配金があったとして、年俸7億円と言われるポドルスキを獲得することができたんでしょうか?

 おそらく契約(年数)は単年ではなく2年でしょう。そうすると2年目(の分配金)が4億だと、払えない。年俸4億円の選手を2年契約でギリですよね。でも本当は多くのJクラブの場合、違約金は3年で減価償却しますので、違約金を2億×3年で6億として、年俸が4億だと、かかるお金が「(1年目)6億・(2年目)6億・(3年目)2億」になるんですね。であれば分配金の分割は「10億・4億・1.5億」ではなくて、「5億・5億・5億」にしたほうが良かったんじゃないですかね。

 分配金の他に(J1で)優勝したら、賞金が3億円入るんですよね。となると、10億プラス3億で13億か。でも、これをもらえるのが12月だとしたら、そこから億単位の選手を獲得するのは、なかなか難しいですよ(編注:Jクラブの多くが1月決算)。賞金は「選手に分配して終わり」ではないでしょうか。鹿島の人も言っていました。「今年はクラブワールドカップ(W杯)をはじめ、12月にたくさん賞金が入ってきたけれど、できれば年明けにもらいたかった。選手に分配することはいいことなんですけれど」って(笑)。そのタイミングだと使い道が限られてしまうので、選手に配るしかないんですよ。

 それにしても、分配金がちゃんと「強化」に使われているのかどうか、Jリーグはどうやって調べるんでしょうね。つまり、どんなことにお金を使えば、それが「強化」と認定されるのか。たとえば、海外からアカデミーダイレクターを年俸1億円で連れてくる。あるいは、新しいクラブハウスを建てることになった。こういった費用は、果たして「強化」と認められるのか。僕の認識としては、十分に認められると思うんですけれど。いずれにせよ、今季から分配金が増えるということで、それぞれのクラブがそのお金をどう使うのかは、ぜひ知りたいところです。

鹿島が「ビッグクラブになれない」理由


数多くのタイトルを獲得してきた鹿島だが、ヨーロッパにおけるビッグクラブの要素は満たしていない【写真:アフロスポーツ】

(分配金はJ1クラブに厚く支払われるが)それはやはり、Jにビッグクラブを作りたいという思惑があるからでしょうね。でも、ここで考えなければならないのが「ビッグクラブの定義とは何?」ということだと思うんですよ。

 去年のクラブW杯決勝で、レアル・マドリーと真っ向勝負を挑んだ鹿島はどうか? ヨーロッパにおけるビッグクラブの要素に照らすならば、明らかに違いますよね。ビッグクラブのホームタウンは、ロンドンやミラノ、マドリー、バルセロナなど、サッカーとは関係がない人でも知っている都市なんです。あるいは国際空港があるとか。残念ながら、鹿島はそうではない。予算規模が大きい浦和レッズも、ちょっと難しいと思います。

 では、日本でビッグクラブが生まれる可能性がある都市はどこか。東京や大阪、名古屋、あとは札幌や福岡。地理的な条件以外に、ビッグクラブで重要なのは観客が入ることですね。以前の欧州は、放映権収入が先行していましたけれど、今は入場料収入と放映権収入の両輪になっています。ですからスタジアムを新しく建て直したり、VIPボックスを作って売ったり、試合を開催することでお金を稼ぐようにしている。そうなると、やはり大都市を本拠としていることが、ビッグクラブの必須条件になりますよね。

 もちろん、鹿島みたいなクラブがあるのはいいと思うんですよ。CL(チャンピオンズリーグ)でも毎年1チームくらい、大きな都市でないホームタウンのクラブがあるじゃないですか。例えばビジャレアルみたいな。本質的なビッグクラブにはなれないけれど、大会で好成績を残すことで世界的に有名になるという話は割とありますよね。あるいは名古屋みたいに世界的な企業がバックについている、ヴィッセル神戸みたいにお金持ちのオーナーがいてバーンとお金を出すとか、いろいろあっていいと思います。

 今の日本には、大都市にあって観客がたくさん入って、スポンサー収入も潤沢で、タイトルもたくさん獲得できるクラブというのは存在しないんですよね。でももし、DAZNマネーによって日本国内にもビッグクラブが生まれたら、どうなるか。これまで海外志向一辺倒だったのが、今後は「国内のビッグクラブで活躍する」ということも、選択肢の1つになるかもしれない。先ほど申し上げたように、日本人選手の年俸をアップすることによって、Jリーグが活性化する可能性は十分にあると思います。

選手獲得に見るFC東京と鹿島の違い

 選手の移籍に関しては、もっといろんな見方があっていいと思います。考え方の原則として「レギュラークラスの選手かどうか」というのがポイントになると考えます。たとえばFC東京は今オフ、非常に積極的な補強をしたという評価をされています。大久保、高萩、永井謙佑(←名古屋)、太田、林彰洋(←鳥栖)。誰が見ても「レギュラーで考えているだろうな」という選手ですよね。「出来上がった選手」だから、お金をいっぱい使っている。それだけ本気で優勝を、13億円を狙っているんでしょうね。

 FC東京と同じくらい、積極的な補強を試みたのが鳥栖でした。たぶん今オフ、J1クラブで一番オファーを出したのではないでしょうか。でも、それほど思い通りの選手を獲得できたようには見えませんでした。移籍が決まったのは、水野晃樹(←ベガルタ仙台)、小林祐三(←横浜FM)、小川佳純(←名古屋)、あとは小野と権田修一。このうち、小野と権田以外は3人とも契約満了の選手です(権田はFC東京と契約解除)。つまりそこは「お金だけの問題ではない」ということですよ。さっきの「ビッグクラブの条件」の話とも関連する、地理的なハンディが背景にあるのかもしれません。

 浦和は、このところ堅実な補強を心掛けていますよね。失敗もあるけれど、武藤雄樹のような成功例もありますし。ただ、成功率ということでいうと、やはり鹿島のほうが高いと思います。今季の鹿島は外国人選手を入れ替えて、日本人に関してはアビスパ福岡の金森健志や湘南ベルマーレの三竿雄斗ら、前所属がJクラブで伸びしろがある選手を入れている。かつての鹿島は、高卒の新人を獲ってきて鍛え上げるのが主流でしたが、だんだんJリーグ経験者にシフトしています。とはいえ、瀬戸内高校(安部裕葵)と東福岡(小田逸稀)からも選手を獲得している。時代に合わせてアレンジを加えながらも、基本コンセプトは絶対に崩さないんですよね。

 新加入選手を見てみると、鹿島よりも浦和の方が少し年齢が高く、浦和よりも年齢と経験値の高い選手を獲得しているのがFC東京。こうした傾向からも、クラブが目指しているものがどこにあるのか、よく表していると思います。短期的に見れば、お金を使ったFC東京の戦力は魅力的です。でも、もう少し長い目で見ると、鹿島の補強は実にスキがないと思いますね。鹿島はディフェンディングチャンピオンですが、彼らは(昨シーズン)年間勝ち点1位の浦和に15ポイント差を付けられた事実をしっかり認識していて、それをどうやって埋めていくかを考えて補強している。加えて戦い方にブレがないし、勝者のメンタリティーも持っている。そうして考えると、今季も鹿島がひとつ抜けているという感じがしますね。


代理人の田邉氏を取材したSportsnaviの宇都宮氏である。
田邉氏と言えば、2005年の中田浩二マルセイユ移籍や、2014年の西移籍騒動を巻き起こしたことで、罪深き人間との認識が強い。
しかしながら、長くに渡って代理人という業務を行っている、この世界の識者でもある。
彼の言葉には耳を貸したいところ。
その田邉氏は、鹿島について、こう語る。
「浦和(レッズ)は、このところ堅実な補強を心がけていますよね。(中略)ただ、成功率ということでいうと、やっぱり鹿島(アントラーズ)のほうが高いと思います」とのこと。
宇都宮氏も「浦和は手堅く選手層に厚みを加えているのに対し、鹿島はより中期的な視野に立った補強をしているように感じられる」と記す。
このあたりがクラブの方向性が伝わってきて良い。
また、田邉氏が鹿島関係者から「今年はクラブワールドカップ(W杯)をはじめ、12月にたくさん賞金が入ってきたけれど、できれば年明けにもらいたかった。選手に分配することはいいことなんですけれど」と聞いたという。
ボーナスにはなったが、選手獲得などクラブ強化には使いようがなかった様子。
そして、「成功率ということでいうと、やはり鹿島のほうが高いと思います。今季の鹿島は外国人選手を入れ替えて、日本人に関してはアビスパ福岡の金森健志や湘南ベルマーレの三竿雄斗ら、前所属がJクラブで伸びしろがある選手を入れている。かつての鹿島は、高卒の新人を獲ってきて鍛え上げるのが主流でしたが、だんだんJリーグ経験者にシフトしています。とはいえ、瀬戸内高校(安部裕葵)と東福岡(小田逸稀)からも選手を獲得している。時代に合わせてアレンジを加えながらも、基本コンセプトは絶対に崩さないんですよね」と語る。
鹿島の移籍成功率の高さ、そしてブレぬコンセプトを伝えてくれる。
これこそ、鹿島の伝統であろう。
そして、田邉氏は最後に「今季も鹿島がひとつ抜けているという感じがしますね」と締める。
今季のJリーグは、昨季に続き、鹿島のリーグとなろう。
今週末の開幕が楽しみである。

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