CWCの戦いを分析

鹿島、FIFAクラブワールドカップ2016で躍進の秘訣。サッカー戦術解析モデルBuildup 6による分析
昨年日本で開催されたFIFAクラブワールドカップ2016で決勝進出を果たした鹿島アントラーズ。開催国枠での出場となったが、Jリーグチャンピオンシップからの勢いをもって臨んだ大会では、日本のサッカーファン・関係者に強烈な印象を残す戦いぶりを見せつけた。鹿島の強さはどこにあったのか。サッカー戦術解析モデルBuildup 6による分析で、その一端が見えてきた。(文:大井義洋)

2017年03月26日(Sun)9時00分配信
text by 大井義洋 photo Getty Images


FIFAクラブワールドカップ2016で躍進した鹿島アントラーズ


FIFAクラブワールドカップ2016で決勝進出を果たした鹿島アントラーズ【写真:Getty Images】

 昨年、鹿島アントラーズがFIFAクラブワールドカップ2016で決勝進出を果たした。代表チームの国際舞台とは別の次元であるクラブレベルでアジアサッカークラブ初の快挙。世界最高のクラブと呼ばれるレアル・マドリーとの決勝での対戦はそれ自体だけでも話題になり、日本では放送した日本テレビの視聴率が実に26.8%という驚異的な数字を記録した。

 鹿島の挑戦は準優勝に終わったが、鹿島のレベルと完成度は日本のサッカーファン・関係者に強い感銘を与えるものとなった。鹿島アントラーズはいったい何が優れていたのだろうか。今回は、データ分析会社であるTeam Twelve社が開発したサッカー戦術解析モデルであるBuildup 6(ビルドアップ6)*(以下「Buildup 6解説」参照)を使用して紐解いていきたい。

 Buildup 6はサッカーの試合で起きる攻撃のパターンを6つに分類し、各プレーの達成度に応じて3つのレベル分けをし、立体的にチームのプレーパターンを分析するモデルである。

 従来のデータ分析では、パスやシュート数を単純に数値化するのみで、攻撃の有効性やプレーの質と脈絡を把握できていなかった。だが、Buildup 6では各プレーに関与した選手もデータとして蓄積し、それぞれのチームまたは選手のプレーがどれほど効率的で脅威的であるかどうかを客観的、定量的に把握することができる。

 また、あるチームの Buildup 6データ分析は相手チームの守備力の分析にも活用できる。全く新しいサッカー戦術解析モデルであるといえよう。

サッカー戦術解析モデルBuildup 6、分析の枠組み


【図1】鹿島の攻撃ではZone14が効果的に活用された。

 Buildup 6ではピッチを横6等分、縦3等分に分けて18分割し、上から下、左から右に番号を振り分けている。14番目に位置するエリアが攻撃の最も重要な空間であり、これをZone14(コア領域)と呼んでいる(図1参照)。

 Buildup 6において、プレーの達成度を区分けするプレーレベルは以下のように定義されている。

レベル1:攻撃を試みたとき
レベル2:ボールを失わずに相手のペナルティエリアまで侵入したとき
レベル3:シュートまでたどり着くまたはゴールにつながる攻撃をしたとき

 また、攻撃パターンは以下の6つに分類される。

(1) Zone14(コア領域)プレー:Zone14のコア領域を活用した攻撃
(2) Penetrate(スペース侵入)プレー:相手守備の後方のスペースを攻略する攻撃
(3) Side(サイド)プレー:サイドを使った攻撃
(4) Counter(カウンター)プレー:相手からボールを奪取したあと迅速に行う攻撃
(5) Long Ball(ロングボール)プレー:相手からボールを奪取したあとに、相手の陣地までロングボールで運ぶ攻撃
(6) Simple Link(単純連結)プレー:自陣でボールを回しながらチャンスをみる攻撃

 サッカーの試合は戦術の戦いであると言える。対戦相手との力関係に応じて、戦術を変えなくてはならない。相手に合った戦術を選択し、その戦術を選手たちがどれだけ体現できるかが、そのチームの成績を左右する。この点において、鹿島の戦術は秀逸であった。

 最初の2試合で対戦したチームは鹿島より戦力が比較的劣っていて、危なげなく勝利することができた。準決勝では、戦力的に優位のチームを相手にCounter(カウンター)プレーを活用し、高い決定力で勝利。決勝戦では敗れたが、2ゴールを入れ、意義のある結果を納めている。

 Buildup 6を用いると、大会を通して鹿島が戦術的に安定していたことがよく分かる。最初のゲームから決勝まで、相手の戦力が強くなるほどCounter(カウンター)プレーを試み、回数は10回-12回-19回-27回と増えていった。相手の攻撃を先に受け止めてからCounter(カウンター)プレーで得点を狙うパターンを多く駆使したことが分かる。

 一方で、相手の裏のスペースを利用するPenetrate(スペース侵入)プレーの回数は試合を重ねるごとに減少した。強いチームの裏のスペースは、攻め入ることが難しい。相手が強くなるほど、Penetrate(スペース侵入)プレーの数が14回-13回-10回-5回と減ったのは自然なことであった。

鹿島のレベルの高さが示されたZone14(コア領域)でのプレー頻度


【表1】Zone14(コア領域)でのプレー割合。鹿島はすべての試合で対戦相手を上回っていた。

 Buildup6の分析によると、選手個人の技量が優れており、戦術的完成度が高いチームはPenetrate(スペース侵入)プレーとZone14(コア領域)プレー、Side(サイド)プレーを中心に試合を進めていく。戦略的完成度が低いチームの場合は、Long Ball(ロングボール)プレーとCounter(カウンター)プレー、Simple Link(単純連結)プレーが多くなってしまう。

 鹿島の攻撃戦術が優れていることは決勝で奪った2点にも表れているが、鹿島の真価は、Zone14(コア領域)プレーに示されている。最初の試合で11回のZone14(コア領域)プレーを試みた鹿島は、2試合目には15回、第3試合目で10回、さらには敗れた決勝戦でも15回を記録した。

 Zone14(コア領域)と呼ばれるこの重要なエリアを攻略するチームは、レベルの高いサッカーを駆使するチームに分類される。では、鹿島のZone14(コア領域)プレーは具体的にはどのようなものであったのだろうか?

 最初の試合ではZone14(コア領域)プレーにおいて、プレーレベル3(シュートまでたどり着くまたはゴールにつながる攻撃をしたとき)の割合は45.5%であった。第2戦では26.7%、第3戦では20%、第4戦でも20%とかなりの割合を維持した。平均27.5%という高い数値だ。

 試合ごとにZone14(コア領域)プレーにおけるプレーレベル3の割合を、鹿島と相手チームとで対照して見てみると、オークランド戦は45.5%:20%、マメロディ戦は26.7%:5.3%、ナシオナル戦は20%:18.2%、レアル・マドリー戦は20%:18.5%と、すべてが相手チームよりも上回ったという事実を発見することができる。ちなみにSide(サイド)プレーのプレーレベル3の割合は4%、全体プレーのプレーレベル3の割合が7%であった。

シュート技術が高かった鹿島。今後の課題は?

 またFIFAクラブワールドカップ2016の中で鹿島が秀でていた部分として、枠内シュート率がある。鹿島は確実なチャンスでなければ、むやみにシュートを打たないチームだった。最初のゲームで鹿島の枠内シュート率は45.5%、2試合目のマメロディーサンダウンズFCとの試合では、50%になっている。

 同大会最大の峠であったクラブ・アトレティコ・ナシオナルSA戦ではまさに70%という驚異的なシュート有効率 を記録し、シュート技術の高さを見せつけ、さらに今回の大会で鹿島が唯一敗れた試合であるレアル・マドリー戦でも鹿島は40%の枠内シュート率を記録した。これはなんとレアル・マドリーの38.5%を上回るものであった。

 もちろん鹿島にもいくつかの弱点があった。攻撃面では、Side(サイド)プレーの完成度が低かったことだ。鹿島が最も多く試みたプレーは、Side(サイド)プレーだが、プレーレベル3の到達率は4%と低調だった。

 いっぽう守備では左サイドから比較的多くのクロスを許し、今後補強が必要であるというのがデータで明らかになった。攻撃時において、完成度の高いZone14(コア領域)プレーは大変強力な武器だが、守備時に相手のZone14(コア領域)プレーを防げない場合、致命的なピンチを招くことになる。

 守備時におけるZone14(コア領域)プレーは鹿島の弱点でもあった。FIFAクラブワールドカップ準優勝という成績に見合ったプレーを見せていた鹿島が、これから弱点を補完してけば、さらなる高みに到達できるかもしれない。

(文:大井 義洋)

【了】


Team Twelve社が開発したサッカー戦術解析モデル・Buildup 6にてCWCの鹿島の戦いを分析するフットボールチャンネルの大井氏である。
端的に言うと、鹿島はカウンタープレイにて安定した戦いをしたとのこと。
また、鹿島の強みは高い枠内シュート率と分析する。
これは、シュート技術もさることながら、シュート数自体が少なく、数少ない決定機を決めた結果と言えよう。
この特別な戦いにて、高い集中力を持って挑んだことが伝わってくる。
そして弱点として左サイドを挙げる。
これに関しては、カイオ移籍後固定できなかった左サイドのMF問題もあった。
それ以上に山本脩斗が負傷を抱えながらプレイを続けたことが大きな点ではなかろうか。
もし、脩斗が万全な状態であれば、もっと良いデータが得られたことであろう。
新しいシーズンに入り、左サイドは聖真が安定したプレイを魅せ、また、脩斗に加え、三竿雄斗・小田逸稀が補強された。
左サイドが補完された2017年の鹿島が、再びCWCを目指す。
次なる分析時にはどのようなデータが出るのか楽しみである。

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我が鹿島アントラーズが正義の名のもとに勝利を重ねますように。

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