常勝軍団アントラーズにまた一人、楽しみな新星が現れた

鹿島の新星FW安部裕葵。本田圭佑プロデュースチームの出身者が18歳でJデビュー
常勝軍団・鹿島アントラーズに将来楽しみな新星が現れた。1日の大宮アルディージャとのJ1第5節で、クラブ史上で3番目に若い18歳2ヶ月4日で公式戦デビューを果たしたFW安部裕葵。中学時代に日本代表FW本田圭佑の薫陶を受け、広島・瀬戸内高校をへて今シーズンから加入したルーキーは、記録には残らない泥臭い仕事で決勝点の起点となり、憧れ続けてきたプロの世界での第一歩を記した。(取材・文・藤江直人)

2017年04月06日(Thu)12時05分配信
text by 藤江直人 photo Getty Images


ほんのわずかながら、チームの勝利に貢献できた感触


鹿島アントラーズのFW安部裕葵【写真:Getty Images】

 ほんのわずかながら、それでもチームの勝利に貢献する大仕事に関われた感触が右足のつま先に残っている。鹿島アントラーズのルーキー、18歳の安部裕葵がはにかみながら胸を張った。

「ああいう小さなことがゴールにつながるんだと、あらためて実感することができました」

 大宮アルディージャのホーム、NACK5スタジアム大宮に乗り込んだ1日のJ1第5節。両チームともに無得点の状況でピッチに投入され、公式戦デビューを果たしてからわずか5分後の後半34分だった。

 ボールをもったアルディージャのセンターバック、河本裕之がセンターサークル付近にいたMF岩上祐三へ縦パスを入れる。距離は空いていたが、それでも安部は猛然とパスコースに飛び込んでいった。

「それまでは僕たちがずっと引き気味だったので、急に前からガーッとこられたら相手も嫌だろうなと思っていました。タイミングさせ合えば、どこかで奪ってやろうと狙っていたんですけど」

 必死に伸ばされた安部の右足のつま先をかすめ、微妙にコースを変えたボールはMFレオ・シルバの正面へ。すかさずパスを受けたFW鈴木優磨のアシストから、MF土居聖真の値千金の決勝弾が生まれた。

 出番が訪れる予感を抱きながら、ウォーミングアップを続けた。横浜F・マリノスとの第3節に続く2度目のベンチ入りを勝ち取ったが、このときはサイドハーフの控えという位置づけだった。

 翻ってアルディージャ戦は右足首を痛めたFW金崎夢生の欠場に伴い、リザーブメンバーのなかでフォワードは安部しかいない。自らの役割をイメージしていたからこそ、スムーズに試合に入れた。

交代カードの1枚目として投入された高卒ルーキー


鹿島アントラーズの石井正忠監督【写真:Getty Images】

 緊張感漂う状況で、高卒ルーキーを交代カードの1枚目として、しかもFWペドロ・ジュニオールに代えてデビューさせる。アントラーズの石井正忠監督は、流れを変えるジョーカーの仕事を託していた。

「彼は非常に動き出しがいいし、個人で仕掛けられるので、その点を期待して入れました」

 そして、ピッチに足を踏み入れてから1分とたたないうちに、ファーストタッチで指揮官の期待に応えてみせる。左サイドを駆けあがってきたDF山本脩斗が、グラウンダーのパスを送った直後だった。

 ペナルティーエリア内でボールを受ける体勢を取った安部が、二歩、三歩とバックステップを踏む。反転してシュートを打つのではと、マークについた大宮キャプテンのDF菊地光将は思ったはずだ。

 次の瞬間、安部は柔らかいタッチでボールを落とす。あうんの呼吸で走り込んできたのは土居。不意を突かれ、慌ててターンした菊地はバランスを崩して、その場に倒れ込んでしまう。

「自分でシュートを打とうか迷ったんですけど。でもあのプレーは間違っていなかったと思うし、ファーストプレーがああいう形になって、メンタル的に入りやすかった。よし、次だ、となりましたから」

 ダイレクトで右足を合わせた土居の一撃は、GK塩田仁史が何とか伸ばした右足に弾かれる。そして、安部本人をして「次だ」と発奮させたプレーで、決勝点を導く泥臭い仕事をやってのけた。

 土居が決勝点をあげた直後も、4連勝で首位のヴィッセル神戸に勝ち点と得失点差で並び、総得点でわずか1及ばない2位に肉迫しても、右足のつま先でコースを変えたプレーは周囲から何も言われない。

「あれ、よく見ないと、多分わからないんじゃないですか。本当にちょっとしか触っていないので」

 だからこそ、試合後の取材エリアでその点を聞かれた直後には初々しい笑顔を弾けさせた。ただ、肝が座っていることは、発するコメントの内容からもひしひしと伝わってくる。出番を告げられてピッチに入るまで、武者震いの類はいっさい感じなかったという。

「自分、緊張とか全然しないタイプなので。人生で一度もしたことがないですね」

中学時代は本田圭佑プロデュースのチームでプレー

 中学校入学と同時に、東京都清瀬市にあるS.T.FOOTBALL CLUBで心技体を磨いた。日本代表FW本田圭佑(ACミラン)のマネジメント事務所、HONDA ESTILO株式会社が傘下にもつジュニアユースチームの5期生にして、初めて誕生したプロサッカー選手となった。

 中学3年生のときに、本田がS.T.FOOTBALL CLUBの練習を指導しに訪れたことがある。そのときにかけられた「夢をもて」という言葉と、先輩や後輩の関係なしにピッチでは貪欲に戦ってきたという本田の生き様に深く感銘を受けた。

 広島・瀬戸内高校では1年生の冬から頭角を現し、昨夏のインターハイではキャプテンとしてチームをベスト8へとけん引。大会優秀選手にも選出され、アントラーズからオファーを受けた。

「アントラーズさんから声をかけられた時点で、即決です」

 他にどのクラブからオファーが届いたかわからないと屈託なく笑う安部は、かつて本田から伝授された、弱肉強食のプロの世界を生き抜く心得をアントラーズでも貫いてきた。

「毎日が本当に充実しています。飽きない生活というか、一日一日の練習が新鮮で。自分の立場的には目立たないとメンバー入りができないので、毎日がセレクションのような気持ちで練習しています」

 夢の第一歩として、アントラーズでポジションを確立させる目標を立てた。石井監督以下の首脳陣にアピールするためには、ルーキーだからといってピッチのうえで遠慮などしていられない。

「アントラーズでベンチに入って、試合に出たという時点で自信はついています。正直、練習のほうが試合よりも難しいんじゃないかと思っているくらいなので。練習だと(昌子)源君や植田(直通)君を相手にするので、そこでかなりの自信はついているにで」

「お前はここからや。今日で満足するなよ」(昌子源)

 アルディージャ戦をにらんだ紅白戦では、招集されていたハリルジャパンから戻ったばかりの昌子源、植田直通がセンターバックを組むレギュラー組が、一方的に攻め込まれた末に負けている。

 リザーブ組のツートップを務めたのは、アビスパ福岡から加入したリオデジャネイロ五輪代表候補の金森健志と安部。実際にゴールを決められたのはペドロ・ジュニオールと鈴木がツートップを組んだ後半だったが、昌子は前半からの悪い流れがアルディージャを無失点に抑える糧になったと感謝する。

「僕とナオ(植田)がまったく我慢できなかったからね。紅白戦のおかげといったら情けない話やけど、3点くらいぶち込まれたおかげで我慢というか、特にディフェンスラインはすごく集中できたと思う」

 その昌子から、安部はアルディージャ戦後に「お前はここからや。今日で満足するなよ」と檄を飛ばされた。期待が込められているからこそ、やや厳しくなったと昌子は振り返る。

「本人が仕事をできたのか、そうじゃないのかはわからないけど、じゃあ次もベンチ入り、そして先発という保証は、このチームには絶対にないので。そういう慢心のようなものがないように、ひと言だけ言いましたけど。でも、ヒロキ(安部)は上手いよね。人とはちょっと違うドリブルをしてくる感じもあるので」

 印象に残るプレーはしたが、記録に残るそれはピッチに刻んでいない。放ったシュート数はゼロ。潜在能力を高く評価するからこそ、石井監督も手放しで褒めることはなかった。

「僕もそうですけど、彼自身も納得いくプレーはできなかったんじゃないかと思っています。ただ、能力は高いので、今日をきっかけにチームの力になっていってくれれば」

クラブ史上3番目の若さでJデビュー


安部が2トップを組んだ鹿島アントラーズのFW鈴木優麿【写真:Getty Images】

 そして、ほかならぬ安部自身が満足していなかった。18歳2ヶ月4日でのJ1デビューは、アントラーズの歴史ではMF野沢拓也(現ベガルタ仙台)の17歳7ヶ月29日、DF内田篤人(現シャルケ)の17歳11ヶ月6日に次いで若いが、ただ単にスタートラインに立っただけだと表情を引き締める。

「試合後はいろいろな先輩方やスタッフにナイスプレーではなく、『とりあえずデビューはおめでとう』という声をかけられました。もうちょっとやれることはあったと思いますけど、これがいまの実力だし、僕自身もこれからだと思っているので、練習からどんどん頑張っていきたい。

 やっぱりフィジカル的にも練習と試合は全然違いましたし、こういう環境に慣れることも大事だと思うので。今日はいい経験で終わってしまったんですけど、常に得点に絡めるような、前を向いてボールをもっただけで相手ディフェンスが嫌がるような選手になっていきたい」

 ピッチに入ると、ツートップを組む鈴木が笑顔で出迎えてくれた。キックオフから攻撃だけでなく守備でも走り回り、疲労困憊だった3年目の20歳は、安部にこんなミッションを託している。

「オレは中央に残っているから、角(コーナーフラッグ)へどんどん走って流れてくれ」

 アルディージャの最終ラインに絶えずプレッシャーをかけて、下げさせることで全体を間延びさせる。元気いっぱいに「わかりました。走ります」と返した安部は、6分間のアディショナルタイムを含めた22分間で2.985キロを走破している。

 90分間に換算すれば12キロを軽く超える運動量に「たくさん走りましたね」と笑った18歳は、こんな言葉をつけ加えることも忘れなかった。

「状況によっては自分が引かなければいけない場面もあったし、そこでセカンドボールを拾えなかったことがあった。あれはナンセンス。そういうことも大事にしていかないと」

 攻撃だけでなく守備でも課題と積極的に向き合い、成長への糧に変えていく。171センチ、65キロのやや小柄な体には無限の可能性が凝縮されている。常勝軍団アントラーズにまた一人、楽しみな新星が現れた。

(取材・文・藤江直人)

【了】


安部裕葵について取材したフットボールチャンネルの藤江氏である。
大宮戦でのプレイ、S.T.FOOTBALL CLUBに所属していたこと、源からの言葉などが伝えられる。
どれもこれも興味深いエピソードと言えよう。
結果だけ見れば、ファーストタッチのアシスト未遂とゴールに繋がるつま先パスカットだけであり、大きな成果だったとは言い難い。
しかしながら、これだけメディアに登場するのは、裕葵が「なにか」を持っている証拠であろう。
この週末からまた過密日程が続く。
裕葵の出場機会も増えてこよう。
大きな結果を出し、更に大きくメディアに登場して欲しい。
期待しておる。

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狂おしいほどの愛。
深い愛。
我が鹿島アントラーズが正義の名のもとに勝利を重ねますように。

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