鹿島は「強くブレない幹のよう」
"日韓対決"に敗れた韓国メディアがJリーグ勢を称賛!「とにかく川崎は執拗だった」。鹿島は「強くブレない幹のよう」
慎武宏
2017年04月28日
「韓国勢と対峙する時に不足しがちだった気迫がありました」とハン・ジュン記者。
ACLグループステージ5節で行なわれた日韓対決・2連戦は、Kリーグ勢にはほろ苦い結果になった。各メディアが報じたヘッドラインにもその悔しさは滲んでいる。
「水原、ACL16強行きに暗雲、川崎に0-1」(『スポーツ東亜』)
「水原、川崎のセットピース(セットプレー)一発に涙」(『ノーカットニュース』)
「蔚山、ホームで鹿島に0-4の惨敗、ACLグループステージ脱落」(『聯合ニュース』)
「集中力低下の蔚山、鹿島相手に0-4の大敗」(『OSEN』)
などだ。
その多くがホームで不甲斐ない結果に終わった水原三星と蔚山現代のチーム事情や問題点を指摘するものだったが、現地で取材した韓国人記者の目にJリーグ勢はどう映ったのだろうか。韓国の有名サッカーメディア『FOOTBALLIST』の記者に話を聞いた。
まず水原三星対川崎の試合を取材したハン・ジュン記者だ。同記者は「水原を疲れさせた川崎の戦略と意地」という試合分析記事も発表しているが、川崎についてさらに突っ込んで聞いてみると、こんな答が返ってきた。
「とにかく川崎は執拗だったということです。ほかのJリーグのチームもショートパスに長けていますが、日本人選手だけで先発を組んだ川崎は極端なくらいにショートパスに集中した。前半は裏のスペースを突いたり、サイドチェンジしたほうがもっと楽に水原を攻略できたはずと思えた瞬間でも、短いパスで試合を組み立てていたのが印象的でした。
プレッシャーを受けている状況でも、パス・コースを探して繋げていたのはさすがですが、一気に縦に攻めるプレーに対してはまだ手応えを得られていないようにも映りました。ただ、ボールを奪ってパスをつなげる過程で見せた集中力はとても印象的でした」
そんな川崎の中で印象的だった選手として最初に挙げたのが、中村憲剛。「ベテランとしての経験、技術的長所、最後まで献身的な姿は印象的。Jリーグでは中村俊輔、遠藤保仁、大久保嘉人といったベテランが技術、人格、精神力でチームの支柱を務めていると思いますが、中村もそのひとりだと再認識させられました」と語った。
鹿島も印象的だったのは遠藤康と土居聖真だ。

攻撃陣が爆発した鹿島。後半に4点を奪い、蔚山現代を一蹴した。(C)Getty Images
そしてもうひとりが三好康児。「サイド、2列目、中盤とさまざまな場所に顔を出し、川崎の円滑なパスプレーの潤滑油となっていたと思います」と、評価した。
「それ以外にも奈良竜樹も川崎勝利の影の立役者でしょう。彼だけではなく川崎のすべての選手がルーズボールに対して強くチャレンジし、身体を投げ打って水原の攻撃を遮断していた。これまでJリーグ勢が韓国勢と対峙する時に不足しがちだった気迫がありました」
一方の鹿島はどうか。「(グループリーグ)脱落よりも骨身に染みる“完敗”」と題した記事で蔚山現代の完敗を指摘しているリュ・チョン記者は、鹿島を直接見た印象についてこう語る。
「鹿島は強くブレない幹のようでした。前半は蔚山がラフに仕掛けましたが、鹿島は選手の距離感や間隔を維持しながら戦術的な動きでそれを見事にかわしていた。Kリーグ勢の長所は激しさと精神力ですが、鹿島はその部分でもまったく蔚山に劣らなかった。それどころか蔚山守備陣のミスを一切逃さない、したたかさもあった」
そんな鹿島の中でも、もっとも印象的だったのは遠藤康と土居聖真だったという。
「両選手ともに、シンプルながら確かな技術力を示していたと思います。蔚山が激しく仕掛けてもボールを奪われることはなく、安定していた。蔚山がふたりを攻略できればもう少し違う展開になっていたのではないかと思うほど、ふたりの存在が効いていたと思います」
ただ、ハン・ジュン記者にしてもリュ・チョン記者にしても、Jリーグ勢の強さよりもKリーグ勢の不甲斐なさのほうが目立った2連戦だったというのが正直なところでもあるという。
蔚山現代が鹿島に大敗した同じ日、FCソウルも敵地で中国の上海上港に2-4の敗北を喫してグループステージ敗退が確定。Kリーグ4クラブ中2クラブがグループステージで姿を消すことが決まり、残り2チームも安泰ではない。
水原三星は敵地で中国の広州恒大戦、済州ユナイテッドは敵地でのG大阪戦を残しており、その試合結果次第ではKリーグ勢がグループステージで全滅してしまう可能性もある。
Kリーグ勢はグループステージで全滅の危機に。
「蔚山、ソウルは脱落のKリーグ、ACLで全滅するか」(『スターニュース』)、「危機のKリーグ、16強“0チーム”という最悪の結果に直面」(『スポータルコリア』)、「全北現代なきKリーグのACL没落、中国の“金”+日本の“技術”に押された」(『スポーツ・ソウル』)と、各種メディアもその先行きを憂いでいる。
『サッカージャーナル』などは、「Kリーグ、“アジア最強”の自負心はもはや昔のこと」と、かなり厳しい。果たしてKリーグ勢はこのままどん底に突き落とされるのか。グループリーグ最終節となる5月9日に注目が集まる。
文:慎 武宏(スポーツライター)
シン・ムグァン/1971年、東京都生まれ。韓国サッカー取材歴20年。近著に歴代コリアンJリーガーへのインタビュー集『イルボン(日本)はライバルか 韓国人Jリーガー28人の本音』(ピッチコミュニケーションズ)。
ACLについて韓国人記者を取材したサッカーダイジェストの慎氏である。
鹿島の蔚山戦を観戦したリュ・チョン記者は「鹿島は強くブレない幹のようでした。前半は蔚山がラフに仕掛けましたが、鹿島は選手の距離感や間隔を維持しながら戦術的な動きでそれを見事にかわしていた。Kリーグ勢の長所は激しさと精神力ですが、鹿島はその部分でもまったく蔚山に劣らなかった。それどころか蔚山守備陣のミスを一切逃さない、したたかさもあった」、「両選手ともに、シンプルながら確かな技術力を示していたと思います。蔚山が激しく仕掛けてもボールを奪われることはなく、安定していた。蔚山がふたりを攻略できればもう少し違う展開になっていたのではないかと思うほど、ふたりの存在が効いていたと思います」と語る。
これまで、過去の対戦では苦しめられておった韓国のクラブを相手に激しさと精神力を評価されたことは嬉しい。
石井監督になり、球際の激しさは徹底されておる。
その成果が実った形と言えよう。
また、リュ・チョン記者は聖真とヤスの二人の名を挙げる。
「シンプルながら確かな技術力を示していた」と評しておる。
二列目であるこの両選手が、躍動しておったことを示す。
大型補強のFW、ボランチ、GKに注目が集まる今季の鹿島であるが、聖真のMF起用が陰ながら効いておるように感じる。
右サイドのヤスと西の連携は熟練の域に達しており、阿吽の呼吸で楽しませてくれる。
それに対して、昨季はカイオの移籍もあり、左サイドが不安定であった。
そこにぴたりとハマったのが聖真である。
ハードワークを厭わず、守備をサボらないこと以上に、ゴール前での動きが秀逸と言えよう。
この蔚山戦でも先制点は聖真のシュートのこぼれ球を夢生が決めた格好であった。
聖真の真骨頂と言えよう。
攻撃的MFの二枚看板の躍動でアジアの頂点を目指す。
楽しみである。

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慎武宏
2017年04月28日
「韓国勢と対峙する時に不足しがちだった気迫がありました」とハン・ジュン記者。
ACLグループステージ5節で行なわれた日韓対決・2連戦は、Kリーグ勢にはほろ苦い結果になった。各メディアが報じたヘッドラインにもその悔しさは滲んでいる。
「水原、ACL16強行きに暗雲、川崎に0-1」(『スポーツ東亜』)
「水原、川崎のセットピース(セットプレー)一発に涙」(『ノーカットニュース』)
「蔚山、ホームで鹿島に0-4の惨敗、ACLグループステージ脱落」(『聯合ニュース』)
「集中力低下の蔚山、鹿島相手に0-4の大敗」(『OSEN』)
などだ。
その多くがホームで不甲斐ない結果に終わった水原三星と蔚山現代のチーム事情や問題点を指摘するものだったが、現地で取材した韓国人記者の目にJリーグ勢はどう映ったのだろうか。韓国の有名サッカーメディア『FOOTBALLIST』の記者に話を聞いた。
まず水原三星対川崎の試合を取材したハン・ジュン記者だ。同記者は「水原を疲れさせた川崎の戦略と意地」という試合分析記事も発表しているが、川崎についてさらに突っ込んで聞いてみると、こんな答が返ってきた。
「とにかく川崎は執拗だったということです。ほかのJリーグのチームもショートパスに長けていますが、日本人選手だけで先発を組んだ川崎は極端なくらいにショートパスに集中した。前半は裏のスペースを突いたり、サイドチェンジしたほうがもっと楽に水原を攻略できたはずと思えた瞬間でも、短いパスで試合を組み立てていたのが印象的でした。
プレッシャーを受けている状況でも、パス・コースを探して繋げていたのはさすがですが、一気に縦に攻めるプレーに対してはまだ手応えを得られていないようにも映りました。ただ、ボールを奪ってパスをつなげる過程で見せた集中力はとても印象的でした」
そんな川崎の中で印象的だった選手として最初に挙げたのが、中村憲剛。「ベテランとしての経験、技術的長所、最後まで献身的な姿は印象的。Jリーグでは中村俊輔、遠藤保仁、大久保嘉人といったベテランが技術、人格、精神力でチームの支柱を務めていると思いますが、中村もそのひとりだと再認識させられました」と語った。
鹿島も印象的だったのは遠藤康と土居聖真だ。

攻撃陣が爆発した鹿島。後半に4点を奪い、蔚山現代を一蹴した。(C)Getty Images
そしてもうひとりが三好康児。「サイド、2列目、中盤とさまざまな場所に顔を出し、川崎の円滑なパスプレーの潤滑油となっていたと思います」と、評価した。
「それ以外にも奈良竜樹も川崎勝利の影の立役者でしょう。彼だけではなく川崎のすべての選手がルーズボールに対して強くチャレンジし、身体を投げ打って水原の攻撃を遮断していた。これまでJリーグ勢が韓国勢と対峙する時に不足しがちだった気迫がありました」
一方の鹿島はどうか。「(グループリーグ)脱落よりも骨身に染みる“完敗”」と題した記事で蔚山現代の完敗を指摘しているリュ・チョン記者は、鹿島を直接見た印象についてこう語る。
「鹿島は強くブレない幹のようでした。前半は蔚山がラフに仕掛けましたが、鹿島は選手の距離感や間隔を維持しながら戦術的な動きでそれを見事にかわしていた。Kリーグ勢の長所は激しさと精神力ですが、鹿島はその部分でもまったく蔚山に劣らなかった。それどころか蔚山守備陣のミスを一切逃さない、したたかさもあった」
そんな鹿島の中でも、もっとも印象的だったのは遠藤康と土居聖真だったという。
「両選手ともに、シンプルながら確かな技術力を示していたと思います。蔚山が激しく仕掛けてもボールを奪われることはなく、安定していた。蔚山がふたりを攻略できればもう少し違う展開になっていたのではないかと思うほど、ふたりの存在が効いていたと思います」
ただ、ハン・ジュン記者にしてもリュ・チョン記者にしても、Jリーグ勢の強さよりもKリーグ勢の不甲斐なさのほうが目立った2連戦だったというのが正直なところでもあるという。
蔚山現代が鹿島に大敗した同じ日、FCソウルも敵地で中国の上海上港に2-4の敗北を喫してグループステージ敗退が確定。Kリーグ4クラブ中2クラブがグループステージで姿を消すことが決まり、残り2チームも安泰ではない。
水原三星は敵地で中国の広州恒大戦、済州ユナイテッドは敵地でのG大阪戦を残しており、その試合結果次第ではKリーグ勢がグループステージで全滅してしまう可能性もある。
Kリーグ勢はグループステージで全滅の危機に。
「蔚山、ソウルは脱落のKリーグ、ACLで全滅するか」(『スターニュース』)、「危機のKリーグ、16強“0チーム”という最悪の結果に直面」(『スポータルコリア』)、「全北現代なきKリーグのACL没落、中国の“金”+日本の“技術”に押された」(『スポーツ・ソウル』)と、各種メディアもその先行きを憂いでいる。
『サッカージャーナル』などは、「Kリーグ、“アジア最強”の自負心はもはや昔のこと」と、かなり厳しい。果たしてKリーグ勢はこのままどん底に突き落とされるのか。グループリーグ最終節となる5月9日に注目が集まる。
文:慎 武宏(スポーツライター)
シン・ムグァン/1971年、東京都生まれ。韓国サッカー取材歴20年。近著に歴代コリアンJリーガーへのインタビュー集『イルボン(日本)はライバルか 韓国人Jリーガー28人の本音』(ピッチコミュニケーションズ)。
ACLについて韓国人記者を取材したサッカーダイジェストの慎氏である。
鹿島の蔚山戦を観戦したリュ・チョン記者は「鹿島は強くブレない幹のようでした。前半は蔚山がラフに仕掛けましたが、鹿島は選手の距離感や間隔を維持しながら戦術的な動きでそれを見事にかわしていた。Kリーグ勢の長所は激しさと精神力ですが、鹿島はその部分でもまったく蔚山に劣らなかった。それどころか蔚山守備陣のミスを一切逃さない、したたかさもあった」、「両選手ともに、シンプルながら確かな技術力を示していたと思います。蔚山が激しく仕掛けてもボールを奪われることはなく、安定していた。蔚山がふたりを攻略できればもう少し違う展開になっていたのではないかと思うほど、ふたりの存在が効いていたと思います」と語る。
これまで、過去の対戦では苦しめられておった韓国のクラブを相手に激しさと精神力を評価されたことは嬉しい。
石井監督になり、球際の激しさは徹底されておる。
その成果が実った形と言えよう。
また、リュ・チョン記者は聖真とヤスの二人の名を挙げる。
「シンプルながら確かな技術力を示していた」と評しておる。
二列目であるこの両選手が、躍動しておったことを示す。
大型補強のFW、ボランチ、GKに注目が集まる今季の鹿島であるが、聖真のMF起用が陰ながら効いておるように感じる。
右サイドのヤスと西の連携は熟練の域に達しており、阿吽の呼吸で楽しませてくれる。
それに対して、昨季はカイオの移籍もあり、左サイドが不安定であった。
そこにぴたりとハマったのが聖真である。
ハードワークを厭わず、守備をサボらないこと以上に、ゴール前での動きが秀逸と言えよう。
この蔚山戦でも先制点は聖真のシュートのこぼれ球を夢生が決めた格好であった。
聖真の真骨頂と言えよう。
攻撃的MFの二枚看板の躍動でアジアの頂点を目指す。
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