C大阪・山村和也、トップ下で開花した才能

C大阪・山村和也、トップ下で開花した才能。ユン監督の慧眼。本人も知りえなかった潜在能力
前半戦を終えたJ1戦線で、最大の発見と言ってもいいだろう。ボランチやセンターバックを主戦場としていた昨シーズンまでと一変して、トップ下として眩い存在感を放っているセレッソ大阪の山村和也。今シーズンから指揮を執るユン・ジョンファン監督の慧眼に導かれ、12年ぶりとなる首位に立ったセレッソを攻守両面でけん引するプロ6年目の27歳の現在地に迫った。(取材・文:藤江直人)

2017年07月10日(Mon)12時13分配信
text by 藤江直人 photo Getty Images

ボランチやCB、「守備の人」という固定観念


セレッソ大阪のMF山村和也。トップ下にコンバートされ躍動している【写真:Getty Images】

 相手のゴールマウスに立つ守護神の一挙手一投足がよく見える。センターバックやボランチの息遣いや、ゴールに絡ませてなるものかという殺気も、90分間を通してひしひしと伝わってくる。

 ボランチやセンターバックが主戦場だった昨シーズンまでとは180度異なる景色や感覚を、セレッソ大阪のトップ下として眩い存在感を放っている山村和也は心の底から楽しんでいる。

「実は個人的には攻撃するのが大好きなんですよ。なので、前線でプレーしているのはすごく楽しいけど、守備で入ったときもまた違った面白さを感じているので。今日みたいにしっかり抑えられると、やっぱり嬉しいですよね」

 ホームのキンチョウスタジアムに柏レイソルを迎えた8日のJ1第18節。キックオフ前の時点で、2位のセレッソに対してレイソルは3位。上位への生き残りをかけた大一番で、山村のユーティリティー性が存分に発揮された。

 トップ下で先発し、1点を追ってDF松田陸、キャプテンのFW柿谷曜一朗を同時にベンチへ下げた後半16分からは3トップの右へ。FW杉本健勇、MFソウザのゴールで逆転すると一転して3バックの右に下がり、レイソルが仕掛けてきたパワープレーを跳ね返し続けた。

 ロンドン五輪出場をかけたアジア予選で、U‐22日本代表のキャプテンを務めた流通経済大学時代。即戦力の期待を背負って、2012シーズンから加入した鹿島アントラーズ時代。ロンドン五輪本大会を含めて、ボランチやセンターバックでプレーした山村は、いつしか「守備の人」という固定観念を抱かれていた。

 出場機会を求めて、昨シーズンから完全移籍で加入したセレッソでも然り。チーム統括部長と監督を兼任する形で昨シーズンのJ2を戦い、今シーズンからは前者に専念している大熊清氏も「攻撃が上手いことはわかっていましたけど」と、苦笑いを浮かべながらこう続ける。

「彼をトップ下で使うことまでは、正直、考えたことがなかったし、練習でやらせたこともなかった。ボランチのソウザを、トップ下で使ったことはありましたけど」

「僕よりもキープ力がありますよね」(杉本健勇)

 ターニングポイントは、今シーズンから指揮を執るユン・ジョンファン監督の慧眼に他ならない。開幕へ向けたキャンプ中の練習試合などで山村がトップ下に配置される光景は、ある意味でチーム内に大きな驚きとカルチャーショックを与え、時間の経過とともに全員を「なるほど」とうなずかせた。

「高さを含めて前線で起点になれるし、足元の技術も高い。何よりも守備面で、トップ下の位置から力強くスイッチを入れてくれる。スピードはそれほどないですけど、とにかく運動量はすごい。彼の動きが非常に効いているし、チームにもいい影響をもたらしてくれている」

 セレッソの元祖レジェンドで、いま現在はチーム統括部内のフットボールオペレーショングループのトップを務める森島寛晃氏が目を細めれば、ワントップの位置で山村と縦の関係を築く杉本健勇も「僕よりもキープ力がありますよね」とこう続ける。

「加えてテクニックもあるし、走れるし、守備もできるのですごくやりやすい。お互いに練習の段階からよく話し合うことで、コミュニケーションも取れてきていると思う」

 山村がトップ下として公式戦で“デビュー”したのは3月4日。浦和レッズのホーム、埼玉スタジアムに乗り込んだJ1第2節の後半28分だった。2点を追う状況で投入され、それまで杉本とツートップを組んでいた柿谷が2列目の左サイドに回ってから、にわかにセレッソの攻撃が活性化された。

 前線における起点が増えたことでチーム全体が押し上げられ、さらには187センチの杉本に186センチの山村が加わったことで、クロスやセットプレーにおける「高さ」でも相手の脅威になる。ユン監督をして「特に前半はいいところが何ひとつなかった」と嘆かせた試合展開を劇的に変えた。

すでに7ゴールを記録。試合中のポジション変更も柔軟に

 レッズ戦では新体制発足後に、セビージャから電撃的に加入した清武弘嗣を故障で欠いていた。本来の司令塔が復帰するまでの時限的な措置かと思われた山村のトップ下起用は、実際に清武がピッチに立った北海道コンサドーレ札幌との第3節以降も継続されていく。

 前方にワントップの杉本、左に柿谷、右には清武が配され、後方からはソウザと日本代表の山口蛍に支援される新布陣のなかで、山村は長崎・国見高校時代に務めたことのあるトップ下の感覚を、時間の経過とともに蘇らせていった。

「僕自身も本当に意外だったというか、できるのかなという半信半疑の部分はあったんですけど。でも、最初から楽しみながらプレーすることできたし、周りのいいサポートもあって少しずつ慣れてきてチーム全体が連動するようになり、いい攻撃につながっているのかなと思います。

 たとえば動き出しの部分ではどちらかが裏へ抜けて、どちらかが足元でもらうといった具合に、僕と(杉本)健勇の動きが重ならないことが一番大事にしていますし、僕がサイドに張るときには、バイタルエリアのスペースを(柿谷)曜一朗や(清武)弘嗣が使えるように心がけています」

 チームへフィットした証は記録として刻まれる。コンサドーレ戦以降は先発に定着し、ともに1‐0で勝利したサガン鳥栖との第4節、古巣・アントラーズとの第6節での決勝弾を含めて7ゴールをマーク。杉本の8ゴールに次ぐ数字であり、アントラーズでの4年間であげた4ゴールをあっさり更新した。

 前述したように追いかける展開では最前線で高さを、リードを奪ってからは最終ラインで守備力を生かす一人三役としても貢献。選手交代のカードを使うことなくフォーメーションを変えられる点で、ユン監督の采配を大きく助けてもいる。

「フォーメーションが変わっても、自分がやるべきことはある程度、整理できているつもりなので、その意味では戸惑いはなかったですね。(最終ラインに下がることも)試合の流れのなかでけっこう多いので、その準備は常にしています」

 こう語る山村が三役を務めあげたレイソル戦は2‐1で逃げ切り、キンチョウスタジアムでは歴代2位の1万6759人で埋まり、チームカラーのピンク色で染まったスタンドと勝利の喜びを分かち合った。

「新しい課題が出てきて、自分としては面白いと感じています」


柏レイソル戦に勝利し首位に浮上したセレッソ大阪【写真:Getty Images】

 レッズに負けた第2節以降で、喫した黒星はわずかにひとつだけしかない。5月6日に0‐1で苦杯をなめさせられたレイソルにしっかりと借りを返し、FC東京と引き分けたアントラーズを勝ち点1差で上回ってついに単独首位に立った。

 セレッソの歴史を紐解けば、首位に立つのは2005シーズンの第33節以来、実に12年ぶりとなる快挙。攻守両面で抜群のハーモニーが奏でられ、7勝1分けと連続無敗試合を「8」に伸ばした新生・セレッソの中心で大きな存在感を放つ山村はしかし、現状に満足することなく貪欲に前を見つめる。

「レイソル戦の前半は、僕たちがボールを収めることができなかった。相手にボールをもたれる時間が長かったこともあって前半のうちに失点してしまったけど、90分間を通して走り切れるところが僕たちの強みでもあるので、そうした献身的な姿勢が結果につながっているのかなと思う。

 個人的にはボールを受ける部分でスペースがなくて難しくなる試合や、難しくなる時間帯があるので。そうなったときにどのようなタイミングで受ければいいのかを、周りとコミュニケーションを取りながら詰めていきたい。新しい課題が出てきて、自分としては面白いと感じています」

 第18節を最後に、J1は今シーズンから新設されたサマーブレイクに入る。もっともセレッソはセビージャと17日に『StubHub ワールドマッチ2017』で対峙。22日には『スルガ銀行チャンピオンシップ2017』にレッズが出場する関係で、8月13日に開催される第22節が前倒しで行われる。

 セビージャ戦は世界との差を、レッズ戦は開幕直後からどれだけ力を伸ばせたのかをはかれる、それぞれ絶好の機会となる。レッズ戦を終えれば、敵地・市立吹田サッカースタジアムでガンバ大阪との大阪ダービーからリーグ戦が再開。優勝戦線が一気に白熱化していくが、山村はいたって泰然自若としている。

「まだ18試合が終わっただけなので。これからの1試合、1試合をしっかり勝って、終わったときに喜べるようなシーズンにできたらいいなと思っています」

 1995シーズンのJ1初参戦以来、いまだタイトルを獲得していない歴史に、光り輝く1ページを書き込むために。真夏の消耗戦の先に豊穣の秋を見すえるセレッソの中心に、適材適所を見抜くユン監督のもとで本人も知りえなかった潜在能力を開花させ、無欲の心で確実に、力強く前へ進んでいく山村がいる。

(取材・文:藤江直人)

【了】


セレッソの山村について取材したフットボールチャンネルの藤江氏である。
今季より指揮を執るユン監督に攻撃の才能を見いだされ、トップ下として開花しておる。
山村本人も「実は個人的には攻撃するのが大好きなんですよ。なので、前線でプレーしているのはすごく楽しいけど、守備で入ったときもまた違った面白さを感じているので。今日みたいにしっかり抑えられると、やっぱり嬉しいですよね」とポジションへの手応えを語る。
また、リードした試合終盤にDFに下がるという戦術変更も機能しており、セレッソの首位に大貢献しておる。
まさにチームの顔。
「代表に」という声が聞こえるほどの活躍である。
この山村擁するセレッソとの対戦は8月26日。
首位を争う大事な戦いとなろう。
楽しみである。

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まさかトップ下で開花するとは
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