天王山で輝いた38歳の生え抜き
鹿島の“勝者のメンタリティ”を象徴する曽ヶ端。天王山で輝いた38歳の生え抜き
2017.08.30 | 6:31
鹿島の“勝者のメンタリティ”を象徴する曽ヶ端

鹿島の“勝者のメンタリティ”を象徴する曽ヶ端 写真提供:Getty Images
著者:チアゴ・ボンテンポ
1985年生まれのブラジル人ジャーナリスト。サンパウロ在住。幼少期よりスポーツとりわけサッカーを愛する。大学時代にジャーナリズムを専攻し2011年よりブラジル『GloboEsporte』で日本サッカーを担当している。ブラジルのボタフォゴ、アーセナル、そして日本代表の熱烈なサポーターである。将来の夢は日本語を流暢に扱うこと、富士山登頂、Jリーグスタジアムを巡ること。
Jリーグ2017シーズンは残すところ10節となり、もはや終わりに近づいている。ここにきて鹿島アントラーズが2位であったセレッソ大阪にヤンマースタジアム長居で勝利し、9度目のタイトル獲得に向けて大きく一歩前に出た。上位の川崎フロンターレと柏レイソルが、それぞれ降格争いのヴァンフォーレ甲府とアルビレックス新潟に引き分けたこともまた、鹿島にとっての恩恵となった。鹿島は現在2位となった横浜Fマリノスに勝点5の差をつけてトップに立っている。
鹿島にとっての決定的瞬間には、いつも“チャンピオン精神”が輝くように見える。プレーが良くなかろうが問題ではない。優位に立たれていようが、相手がひっきりなしに脅かしてこようが、相手ゴールキーパーを傍観者の気分にさせる攻撃を展開しようが問題ではない。彼らは最終的に勝ちを取ることができる。昨シーズンの決勝がこの筋書きに沿った究極の例であり、先週土曜に大阪で行われたC大阪戦でもそれが繰り返された。用心し過ぎることによって最近敗北を重ねたC大阪は、彼らの”リアクティブサッカー”を脇に置いて攻撃に乗り出す。それまでホームで負けなしだったC大阪が主導権を取って、初めから終わりまで試合をコントロールしていた。
C大阪ほどの良いプレーをしながら負かされるチームは珍しい。非常に激しく息の詰まるほどのプレーで、鹿島にスペースを与えずたくさんのチャンスを作り出していた。しかしながら鹿島のGK曽ヶ端準が彼の元に来る全てをブロックし、チームを生き残らせたのだ。DF昌子源はあまり調子が良くなく、自分のエリア内で2度、相手FW杉本健勇とリカルド・サントスに競り負けていた。昌子のパートナーであるDF植田直通がそれらを補った。一方で、C大阪のセンターバックコンビであるマテイ・ヨニッチと山下達也には欠点がなかった。ソウザはミッドフィールドのライオンのごとく勇敢であった。C大阪の守備はほぼ完璧だったが、後半48分、追いつめられた鹿が狼に致命的な打撃を与える。
それまでフィールドでは無効な存在だったFW金崎夢生が、右サイドからクロスを送ると、ファーポストに完全ノーマークのMFレアンドロがいた。このブラジル人選手をマークすべきC大阪右サイドバックの松田陸は、FW鈴木優磨を追いながらエリア中央に走っていた。彼はこの時、ヨニッチと同じポジションにいたのだ。レアンドロは冷静にボールをトラップし、GKキム・ジンヒョンの左へとクールなシュートを決めた。C大阪には痛いミスだった。
紙の上でもC大阪から優れたチームである鹿島は、アウェイで戦う上でも優勢とみられていた。にもかかわらず大岩剛監督の戦略は、主導権を取ることに慣れておらず本質的に“リアクティブサッカー”をするチーム相手に、“リアクティブサッカー”で対抗することだったのだ。手を出さず、カウンターの機会を待つ。これは川崎F相手にはうまくいかなかった(第22節に3-1で敗北した)が、ここまでタイトル争いの最大のライバルであったC大阪相手には成功した。
主に称賛に値するのは曽ヶ端だ。彼は技術的には優れたキーパーからは遠い。実際、彼のポジションは多くのシーズンで問題になり、常に代わりの他の選手の名前が噂に上がっていた。しかし最近では彼に対して不平を言う理由はない。今シーズン同先発スポットを獲得しにやってきたのは、現在のAFCチャンピオンズリーグの勝者で、過去3年に渡りKリーグのベストゴールキーパーであるクォン・スンテだ。曽ヶ端は2001年以来のポジションを失ったが、あちこちでプレーする機会を得ていた。クォンが柏戦で親指脱臼をした7月以降、ようやく曽ヶ端にまた連続出場の機会が与えられた。今月38歳になったこのベテラン選手は失望していなかった。彼のパフォーマンスは明らかに、韓国人チームメイトにも劣っていない。クォンがすでに怪我から回復しているにも関わらず、大岩監督はC大阪戦で彼をスターティングメンバーに残すことを選択した。
曽ヶ端は日本のクラブの最大チームの歴史の中で、疑いなく偉大なスターの1人である。彼はすでに自身のキャリアの中で、どんな日本人選手よりも多い24タイトルを獲得してきた。鹿島の獲得した全28タイトル中、彼が存在していなかったのは4タイトルのみである。これは1998年に曽ヶ端がトップチーム昇格の形で鹿島に入団する以前のものだ。鹿島の地元出身の唯一の選手であり、彼以上に同クラブへの帰属意識や勝者のメンタリティを持った者は他にいない。もっともサポーターたちが常に強調するのは有名な巨大フラッグに書かれた「スピリット・オブ・ジーコ」であって、曽ヶ端ではない。そんなわけで、彼を私の個人的な今週のJリーグMVPプレーヤーとする。
セレッソとの天王山について記すFOOTBALL TRIBEのチアゴ・ボンテンポ氏である。
今季の優勝を争う上でとても重要な試合であったこの試合を、“リアクティブサッカー”で対抗したとと分析する。
大岩監督は耐えるサッカーを選択したと述べておる。
そして賞賛に値するのはGKである曽ケ端であるという。
ただ、「技術的には優れたキーパーからは遠い」「彼のポジションは多くのシーズンで問題になり、常に代わりの他の選手の名前が噂に上がっていた」というコメントは、的外れと言って良かろう。
そもそも、曽ケ端は2002日韓W杯の日本代表GKであり、当時のトルシエ日本代表監督は初戦のベルギー戦に曽ケ端を先発させたがっていたことは有名である。(山本昌邦備忘録参照)
この際、サッカー協会の力によって曽ケ端のピッチに立てなかったことは誠に持って残念と言えよう。
また、鹿島がGKを探すのは、年齢構成の問題があるからであり、それはボランチを探し続けていることと同義である。
曽ケ端(と小笠原満男)の能力に不満はない。
しかしながら、次世代に常に目を向けておるのは鹿島というクラブが、常に先を見た動きをしているからである。
このあたりは、鹿島というクラブに深くない筆者を責めるところではなかろう。
実際にこのセレッソ戦にて曽ケ端は最高のプレイをし、チアゴ・ボンテンポ氏の個人的な今週のJリーグMVPプレイヤーとされた。
素晴らしい結果を出したと思う。
最高GK・曽ケ端と共に今季もタイトルを狙う。
楽しみである。

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2017.08.30 | 6:31
鹿島の“勝者のメンタリティ”を象徴する曽ヶ端

鹿島の“勝者のメンタリティ”を象徴する曽ヶ端 写真提供:Getty Images
著者:チアゴ・ボンテンポ
1985年生まれのブラジル人ジャーナリスト。サンパウロ在住。幼少期よりスポーツとりわけサッカーを愛する。大学時代にジャーナリズムを専攻し2011年よりブラジル『GloboEsporte』で日本サッカーを担当している。ブラジルのボタフォゴ、アーセナル、そして日本代表の熱烈なサポーターである。将来の夢は日本語を流暢に扱うこと、富士山登頂、Jリーグスタジアムを巡ること。
Jリーグ2017シーズンは残すところ10節となり、もはや終わりに近づいている。ここにきて鹿島アントラーズが2位であったセレッソ大阪にヤンマースタジアム長居で勝利し、9度目のタイトル獲得に向けて大きく一歩前に出た。上位の川崎フロンターレと柏レイソルが、それぞれ降格争いのヴァンフォーレ甲府とアルビレックス新潟に引き分けたこともまた、鹿島にとっての恩恵となった。鹿島は現在2位となった横浜Fマリノスに勝点5の差をつけてトップに立っている。
鹿島にとっての決定的瞬間には、いつも“チャンピオン精神”が輝くように見える。プレーが良くなかろうが問題ではない。優位に立たれていようが、相手がひっきりなしに脅かしてこようが、相手ゴールキーパーを傍観者の気分にさせる攻撃を展開しようが問題ではない。彼らは最終的に勝ちを取ることができる。昨シーズンの決勝がこの筋書きに沿った究極の例であり、先週土曜に大阪で行われたC大阪戦でもそれが繰り返された。用心し過ぎることによって最近敗北を重ねたC大阪は、彼らの”リアクティブサッカー”を脇に置いて攻撃に乗り出す。それまでホームで負けなしだったC大阪が主導権を取って、初めから終わりまで試合をコントロールしていた。
C大阪ほどの良いプレーをしながら負かされるチームは珍しい。非常に激しく息の詰まるほどのプレーで、鹿島にスペースを与えずたくさんのチャンスを作り出していた。しかしながら鹿島のGK曽ヶ端準が彼の元に来る全てをブロックし、チームを生き残らせたのだ。DF昌子源はあまり調子が良くなく、自分のエリア内で2度、相手FW杉本健勇とリカルド・サントスに競り負けていた。昌子のパートナーであるDF植田直通がそれらを補った。一方で、C大阪のセンターバックコンビであるマテイ・ヨニッチと山下達也には欠点がなかった。ソウザはミッドフィールドのライオンのごとく勇敢であった。C大阪の守備はほぼ完璧だったが、後半48分、追いつめられた鹿が狼に致命的な打撃を与える。
それまでフィールドでは無効な存在だったFW金崎夢生が、右サイドからクロスを送ると、ファーポストに完全ノーマークのMFレアンドロがいた。このブラジル人選手をマークすべきC大阪右サイドバックの松田陸は、FW鈴木優磨を追いながらエリア中央に走っていた。彼はこの時、ヨニッチと同じポジションにいたのだ。レアンドロは冷静にボールをトラップし、GKキム・ジンヒョンの左へとクールなシュートを決めた。C大阪には痛いミスだった。
紙の上でもC大阪から優れたチームである鹿島は、アウェイで戦う上でも優勢とみられていた。にもかかわらず大岩剛監督の戦略は、主導権を取ることに慣れておらず本質的に“リアクティブサッカー”をするチーム相手に、“リアクティブサッカー”で対抗することだったのだ。手を出さず、カウンターの機会を待つ。これは川崎F相手にはうまくいかなかった(第22節に3-1で敗北した)が、ここまでタイトル争いの最大のライバルであったC大阪相手には成功した。
主に称賛に値するのは曽ヶ端だ。彼は技術的には優れたキーパーからは遠い。実際、彼のポジションは多くのシーズンで問題になり、常に代わりの他の選手の名前が噂に上がっていた。しかし最近では彼に対して不平を言う理由はない。今シーズン同先発スポットを獲得しにやってきたのは、現在のAFCチャンピオンズリーグの勝者で、過去3年に渡りKリーグのベストゴールキーパーであるクォン・スンテだ。曽ヶ端は2001年以来のポジションを失ったが、あちこちでプレーする機会を得ていた。クォンが柏戦で親指脱臼をした7月以降、ようやく曽ヶ端にまた連続出場の機会が与えられた。今月38歳になったこのベテラン選手は失望していなかった。彼のパフォーマンスは明らかに、韓国人チームメイトにも劣っていない。クォンがすでに怪我から回復しているにも関わらず、大岩監督はC大阪戦で彼をスターティングメンバーに残すことを選択した。
曽ヶ端は日本のクラブの最大チームの歴史の中で、疑いなく偉大なスターの1人である。彼はすでに自身のキャリアの中で、どんな日本人選手よりも多い24タイトルを獲得してきた。鹿島の獲得した全28タイトル中、彼が存在していなかったのは4タイトルのみである。これは1998年に曽ヶ端がトップチーム昇格の形で鹿島に入団する以前のものだ。鹿島の地元出身の唯一の選手であり、彼以上に同クラブへの帰属意識や勝者のメンタリティを持った者は他にいない。もっともサポーターたちが常に強調するのは有名な巨大フラッグに書かれた「スピリット・オブ・ジーコ」であって、曽ヶ端ではない。そんなわけで、彼を私の個人的な今週のJリーグMVPプレーヤーとする。
セレッソとの天王山について記すFOOTBALL TRIBEのチアゴ・ボンテンポ氏である。
今季の優勝を争う上でとても重要な試合であったこの試合を、“リアクティブサッカー”で対抗したとと分析する。
大岩監督は耐えるサッカーを選択したと述べておる。
そして賞賛に値するのはGKである曽ケ端であるという。
ただ、「技術的には優れたキーパーからは遠い」「彼のポジションは多くのシーズンで問題になり、常に代わりの他の選手の名前が噂に上がっていた」というコメントは、的外れと言って良かろう。
そもそも、曽ケ端は2002日韓W杯の日本代表GKであり、当時のトルシエ日本代表監督は初戦のベルギー戦に曽ケ端を先発させたがっていたことは有名である。(山本昌邦備忘録参照)
この際、サッカー協会の力によって曽ケ端のピッチに立てなかったことは誠に持って残念と言えよう。
また、鹿島がGKを探すのは、年齢構成の問題があるからであり、それはボランチを探し続けていることと同義である。
曽ケ端(と小笠原満男)の能力に不満はない。
しかしながら、次世代に常に目を向けておるのは鹿島というクラブが、常に先を見た動きをしているからである。
このあたりは、鹿島というクラブに深くない筆者を責めるところではなかろう。
実際にこのセレッソ戦にて曽ケ端は最高のプレイをし、チアゴ・ボンテンポ氏の個人的な今週のJリーグMVPプレイヤーとされた。
素晴らしい結果を出したと思う。
最高GK・曽ケ端と共に今季もタイトルを狙う。
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トルシエと協会とでそんなことがあったのですね。確かにトルシエは曽ヶ端選手を信頼してましたね。特にメンタルと人間性を評価していたように思います。やはりサッカー協会って…
曽ヶ端選手は身体にバネがあって、一つ一つの所作が美しい。試合前のアップでも、曽ヶ端選手より上の選手を見たことがない。
曽ヶ端選手は身体にバネがあって、一つ一つの所作が美しい。試合前のアップでも、曽ヶ端選手より上の選手を見たことがない。