金崎夢生インタビュー
「変化することに恐れはない」テクニシャンからストライカーへ。金崎夢生独占インタビュー
金崎夢生独占インタビュー第一回
文:BESTTIMES編集部/写真:高須力
2017年10月20日
Jリーグ二連覇に向けひた走る鹿島アントラーズ。牽引するのはFW・金崎夢生だ。ここまでチームトップの11得点を記録し、日本代表復帰も待望されるエースストライカーは、かつてトップ下タイプのテクニシャンだった――「理想のストライカー像」を聞く全三回の第一回。
新たに得た、力強さという武器。
――首位を走るチーム、金崎さんが牽引しているように見えます。好調の要因は何でしょうか。
金崎 うーん、そうですね。僕個人というより、チームとして上手くまわっているので、自分としてもそのチームの一員として上手く入っていけているのかな、と思います。
――2010年に取材をさせていただき、以降、トレーニングなども拝見していると少しずつプレーの姿勢も、表情も力強くなっている印象があります。
金崎 ははは、本当ですか(笑)。
――プレースタイルもかつてのテクニカルなものから力強さにシフトしているイメージがあります。変化したのか、したとすればターニングポイントはどこにあったのでしょうか。
金崎 うーん、そうですね。海外に行ったこと(※1)、経験したことはいろいろと貴重だったかな、とは思います。(※1ニュルンベルク【2013年1月〜同年9月】とポルティモンセ【2013年9月〜2015年1月】)。やっぱり結果に凄くこだわるようになりましたから。
――以前のインタビューでも「海外の選手を見ていると単純にゴール前に行く数が多い」と話されていました。結果というのはイコールゴール前ですか?
金崎 そうですね、やっぱり海外にはいい選手がたくさんいて、その中でポジションを取っていくために必要なものは結果でした。特に前線の選手はそれが大事だったので、だから結果にこだわってきているのかなとは思います。
――それは数字に表れる結果が大事なのでしょうか? それともチームが勝つ為に?
金崎 まずはチームが勝つことが一番ですけど……、やっぱりフォワードとしたら点を獲ることやアシストっていう、誰にでも目に見える結果をしっかり出すことは大事だと思います。それだけじゃないってことは分かっているんですけど。
――なるほど。そういう意味では本当に7年前とイメージが変わったように思います。当時はもっと柔らかいというか……、過去のご自分に対してどう思われますか?
金崎 あのときはあのときで、常に自分の物差しで一生懸命やってきましたし、あの頃があったからこそ今があるのだと思います。

求められる選択肢の中でベストな判断ができるように

――プレー面ではどうですか。かつてはドリブルが好きとおっしゃっていましたが今、そういうシーンが多いわけではありません。得点を獲ることにシフトしているのでしょうか?
金崎 そこはチーム状況ですよね。チームから求められることは常に変わっていくので、僕としてはその時の状況に合った一番良い判断が出来るようになりたいと考えています。それはある時は点を獲ることなのかもしれないですし、味方の為に走ること、アシスト、良いパスを出すことかもしれない。ドリブルもそのひとつかな、と。僕としては、求められる選択肢の中でベストな判断が出来る選手になりたいので、ゴールをたくさん決めるだけが全てではないと思っています。
――ゴールがベストではないということ。
金崎 ですね。チームとして足りない部分があるとしたら、そこを自分が補いたいということは思うので。
――なるほど。ただプレースタイルを変えるのは簡単ではありません。恐怖心もあるのではないでしょうか?
金崎 そういうことは別になかったですね。僕はとにかく試合に勝ちたい気持ちが強いんです。そのために自分自身が変わる必要があったので……、だからチームが変わるように自分のスタイルも自然と変わっていったのかな、と思います。
――変化しなければいけない過程の中で影響を受けるとしたら、チームメイトの言葉だったり、または自分の技術向上をより望む環境を作りたいということなのでしょうか?
金崎 あまりそういう風には考えないですかね。単純に目の前の試合に勝ちたいので「勝つ為に自分が出来ることは何か? このチームで今一番必要なことは何か?」と考え、やり続けているのかなと。
――だからその中で得点がマストではない。
金崎 はい、そうですね。
――とはいえ、ピッチでのプレーは得点への意欲にあふれているようにも見えます。
金崎 そうですね、最近はちょっとわからないですけど、日本ではガツガツいく選手が少ないと感じることもあったので、それがチームとして必要だと思ったのでそういうプレーを心掛けている部分はあります。
――あえてチームメイトを鼓舞する面も含めてということですか?
金崎 はい。試合中でも誰かがガツガツプレーをしていると、それに影響を受けて、チーム全体がそうなっていくこともあるので。だから、逆にそういった選手がチーム内に沢山いるのであればそのガツガツしたプレーを僕がする必要はなくて(笑)、上手にその選手を使いながら自分は簡単なプレーを選択していければいいと思います。だからやっぱりその時のチーム状況ですね。1番必要なものを見極められる選手になりたいですね。
――なるほど。今みたいな考えの軸を作っていく際、金崎さんは人の言葉に影響を受けたり、人から聞いて吸収しようとすることはありますか?
金崎 それはそうですね。意外とサッカーとは全く関係無いところから吸収することのほうが好きですね。そっちのほうがすんなり入ってくるというか。
ビジネスマンからも。「言葉」から学んでいる
――サッカー選手がこうしてきた、とかじゃなく。
金崎 そうです、そうです。全然仕事も違う人とか、例えば、ビジネスマンの方の話しを聞いて「あぁ、なるほど」と学ぶ点があったり、自分の考えと照らし合わせながらそういうこともあるか、と思ったり。同じ社会人として働いていて少し重なる部分もありますからね。一見、関係無い所から、ふと出てきた言葉を面白いと感じることが多いです。
――アスリートの方だと機会としてもアスリートの方に偏ることが多いですものね。
金崎 そうですね。特定の分野だけでなく、それよりも関係のないところから出てきた言葉の方が好きなんです。プレーに生かされているかどうかは別として(笑)。人として、そういうものが好きで、という感じではありますね。
――チームメイトからはどうですか?
金崎 ふだん何か直接言ってもらうとかではないんですけど、毎日同じようにトレーニングをしている、普通の姿で感じることが多いのは(小笠原)満男さんやソガ(曽ケ端準)さんですね。上手く言葉では言い表せませんが、満男さんとソガさんがああいう風にやっているというだけで、特別なことをしているわけでもないんですけど、間違いなくチームに必要な存在、必要な姿勢なんだなと感じます。
――必要な姿勢。
金崎 はい、そうですね。それが何なのかは上手く表現できないんですけど。
――それは鹿島で初めて感じたタイプの選手でしたか?
金崎 いくつかチームを経験してきたので、各チームでベテラン選手の方が出す雰囲気を感じることはありますが、鹿島には鹿島の色があるのだと思いますね。
金崎夢生独占インタビュー・点を決めて褒められるより嬉しいことがある
金崎夢生独占インタビュー第二回
2017年10月21日
Jリーグ二連覇に向けひた走る鹿島アントラーズ。牽引するのはFW・金崎夢生だ。ここまでチームトップの11得点を記録し、日本代表復帰も待望されるエースストライカーは、かつてトップ下タイプのテクニシャンだった――「理想のストライカー像」を聞いた。インタビュー第2回。
勝つために必要であれば…

――小笠原さんを見ていて、金崎さんもキャプテンをやってみたいと思うことはありますか?
金崎 自分から「はい!キャプテンやりたいです」とかはないですけど、それもさっき言ったようにチームが勝つ為に自分が(キャプテンマークを)巻いた方が上手くまわるのであれば、やりますけど、まぁ、たぶんその状況は無いと思います。今のところ、全然その必要はないかなと(笑)。
――ではキャプテンではなく、坊主頭は……? チーム内で、曽ヶ端さんへのリスペクトから坊主頭の選手は増えています。
金崎 坊主にもしないですね(笑)。全然、そういうことはやらないです(笑)。
――そうすると、金崎さんが目指すプレイヤー像とは、自分なりの選手なのか、それともご自身に似た選手なのか、または海外の選手など何かおありなんですか?
金崎 この選手1人という感じではなく、色々な選手の良い所や上手なプレーを真似したいな、という感じですね。
――昔から頑なに「理想の選手」の具体名を挙げられませんでした。自分のなりたい像を決めないっていうのは変わらずあるんですか。
金崎 ありますね。性格的にもあまり狭くなりたくないというか、縛られる感じがあまり好きではなくて。なんでも自由ではないですけど、さっきの変化とかがあってもいいんじゃないかな、って。それも色々経験して自分の中である程度、軸ができてきたので、そう思えるようになったのかなと。
――しかし、その変化というのもベースがあって上積みの部分を変えるというレベルじゃなく、ベースから変えるイメージがあるのですが。
金崎 そうですね。まあ、でもそのときは勝つ為にという感じですね。先ほど話した通り、目の前の試合に勝つにために必要であればやりますし、そのくらい一試合、一試合、勝ちたいですし優勝したいので。
だから、どちらかと言うと自分がいっぱい点を決めたことより「あの選手が入るとチャンスが増える、試合に勝つ」といった言葉の方が僕は嬉しいですね。誰が点を決めてもいいんですよ。最終的にチームが勝つことが一番嬉しいので。
たまたまゴールを決めたのはフォワードの選手であっても、それまでにディフェンスの頑張りだったりいろいろあるので。それがチーム全体として上手く機能しているから「あの選手が入ったら点が生まれる」「あの選手が入ったら試合に勝つよね」っていう評価はうれしいです。
「たまたまゴールを決めたのが僕」

――金崎さんがゴールを決めた試合は勝つと言われ、現在28試合無敗の“不敗神話”がありますが、ご自身ではあまり興味は無いのでしょうか。
金崎 そうですね、たまたまゴールを決めたのが僕であって、それで勝つなら周りの選手がもっと評価されるべきであって、あれは僕の評価ではないですよね。チーム全体の評価だと思っています。
――やはり勝つ事の喜びなんですね、原動力は。
金崎 幼い時から勝つ為に試合をしてきましたからね。逆にほかに目指すところがあるんですかね(笑)?
――例えば、負けてしまったけどハットトリックをしたから満足をする、っていう選手はいる。特に海外とかでも。
金崎 もちろん自分もしっかり活躍できて、その上でチームが勝つというのが何よりベストだと思いますし、それを目指していますけど、ハットトリックした選手も勝った方がよりうれしいはずなんですよね。
――まずは勝利だ、と。ご自身の中でそういう思考に至った原点、経験で一番大きいものは具体的に言うと何かありますか?
金崎 どうですかね。いや、自分の性格的にそういう考え方でいる方が力を発揮できるというか頑張ろうと思えるんですよね。
色々な選手が集まっていることの強み
――7年前の取材で「自分の性格は?」とお聞きしたら「自分の性格が一番わからない。人の性格はすぐわかるけど、自分の性格はわからない」と。
金崎 あの頃よりはわかってるかな、7年分、自分を観察したので(笑)
――はははは。海外(※)でプレーした期間、まずチームが勝つことにこだわるメンタリティは機能したんでしょうか。自分のために、キャリアアップのためにとプレーする選手もいるなかで。※ドイツと(ニュルンベルク所属:2013年1月~同年9月)とポルトガル(ポルティモンセ所属:2013年9月~2015年1月)
金崎 海外はすごく貴重な経験でした。色々なタイプの選手がいて、実際そういうタイプもいましたけど、僕はそれはそれで良いと思います。そういう選手が上手く絡むことでチームとして試合も勝てますし。
――また海外でプレーしてみたいという気持ちはありますか?
金崎 それはありますよ。やはり海外の良さはすごい感じますし、逆に大変さっていうのも短い間でしたが経験した部分はあったので、今も海外でプレーしている選手に対してリスペクトしてます。単純にすごいなって。
――海外の良さとはレベルや環境ですか?
金崎 やっぱり色々な選手が集まっているっていうのが大きいですよね。日本でやっていれば当然、日本人が多いわけで(笑)。でも特にヨーロッパだと南米からアジアからって本当に色々な国の選手が集まっていて、その中で一つのチームを作り、勝利を目指し合っていくので。それは大変なことも沢山あり、だからこそ面白みを感じることもあって。
――ストライカーとして考えた時に、端的に海外で出来る部分と出来ない部分はどことどこに感じますか?
金崎 本当にフォワードでやっていくなら得点の部分をもっと上げていかないとダメですし、それが皆がイメージするフォワード像だと思います。フォワードは基本、点を獲ってなんぼじゃないですか。そういう風に照らし合わせたら、自分としてはまだまだ得点の部分が全然足らないかなと。海外だと1試合1点以上のペースで獲る選手もいますしね。
鹿島・金崎夢生「フォワードとして僕はまだまだ物足りないと思う」
金崎夢生独占インタビュー第三回
2017年10月22日
Jリーグ二連覇に向けひた走る鹿島アントラーズ。牽引するのはFW・金崎夢生だ。ここまでチームトップの11得点を記録し、日本代表復帰も待望されるエースストライカーは、かつてトップ下タイプのテクニシャンだった――「理想のストライカー像」を聞いた。インタビュー第3回。
今は得点の部分で足りていない
――やはり勝たせるフォワードが重要で、客観的に外から見てアントラーズには勝たせるフォワードがいる。それはやはり金崎さんだっていうイメージが強いのですが、例えば点を獲る選手は沢山いますが最後、勝たせるフォワードって少ないと思うんですね。そういう評価ではやはり物足りないところはありますか?
金崎 うーん、そうですね。さっきの話と同じで個人として沢山得点を決めていてもチームとしてあまり成績が良くなかったら、そういう見られ方をしますし、個人として得点数はあまり多くはないけれどチームとして勝っていたら、得点以外の部分で貢献があるという見られ方もあると思います。自分としてはどちらも大切にしていきたいですが、ただ今は得点の部分で足りない部分が単純にあると思っています。どっちも大事ですけどね。

――周りの方はそこまで足りないとは思ってないと思いますが。
金崎 いやあ、感じてると思いますよ。言わないだけであって。例えば僕が中盤の選手だったらフォワードにはシーズン通して20点くらいは獲ってほしいなと思いますしね。そのくらい獲ってくれないとさすがに、って部分を感じます。理想ですけどね。
――聞いていると、フォワードにこだわっているわけではないようにも感じます。
金崎 それはそうですね。根本的に今のチームとして、何が必要かっていうのを一番感じるので。今のチームだったら自分が得点の部分で伸ばしていけば、チームも単純に勝てると思いますしね。今はそう思うからで、トップ下で機能するならそれが一番いいと思いますし。
――変化してきたことが生きますしね。トップ下でもウィンガーもできる。
金崎 でも結構、試合中でもありますよ。年間通して、ずっとやってて例えば、今日はあの選手が調子良くて二点決める試合とかがあるわけじゃないですか。その選手がフォワードみたいな感じで。だから本当に、毎試合状況、状況で変わってくる。それでだんだん形ができてきたりはしますけどね。
――特に鹿島だからかもしれないですね。かつてのグランパスや大分は形がしっかりあった気がします。
金崎 そういうものがあるかもしれないですね。もし形があって一人の選手が20点獲っていたら、その選手を抑えてしまえばいいわけですからね。
プレーを見て感じてほしい
――そうですね。いろいろと深く考えながらプレーされているのを感じましたが、鹿島に来て以降、メディアの前でそういう部分を出すことはあまりないように思います。それは話す言葉がうまく伝わらないと感じるからですか?
金崎 まぁ、それを感じる時はありますが、プレーを言葉で上手に説明できないんですよね。もちろん僕が言葉足らずな部分もありますが、プレーを見てくれた方、その人が感じるように感じ取ってほしいというか。僕のプレーを見て本当に自由にその人が感じるように感じてもらえればいいなと。
こう伝えてほしいと思うことはないですけど、伝えることが難しいなとは思います。伝えてくれる人と24時間一緒にいるわけではないので、例えばさっき言われたように本当に選手が伝えたい事を文章で、しかも決められた何文字で伝えることは難しいなとは思います。だから今回も取材して感じた部分を素直に書いてもらうのが一番良いかなと思います。

――頑張ります。少し話が変わって日本代表です。日本代表への思いは相変わらずありますか?
金崎 代表でやりたいという気持ちはあります。普段できない選手とプレー出来るので、そういう楽しみもありますね。
――代表の時はクラブでやっている時と少し感覚は違ってきますか?
金崎 そうですね、変わりますね。少し個人に寄ってしまう部分もありますが自分としては代表でも、出来るだけ鹿島のように「チームで勝ちたい」という気持ちにもっていけたらいいなと思っています。
生き残りとか色々言われるので、やはり個人個人になりがちな部分はあって、それは当然だと思うんですけどね。
――ハリルホジッチ監督の印象はどうでしたか?
金崎 身体、大きいなぁって思いました(笑)
――鹿島だと大岩監督と1対1でお話できますが、ハリルホジッチ監督とは言葉の関係で難しいと思うのですが、そういった部分で自分を出しきれてないと感じることはありますか?
金崎 難しいと感じる時はありますね。ドイツやポルトガルに移籍していた時もそうですが、通訳の方の顔を見てお互い話すので、1対1で話せたらいいなと思うことはありますね。
――鹿島サポーターもサッカーファンも代表入りを期待していると思います。では最後に、現在、二連覇が凄く近い所にあると思いますがいかがですか?
金崎 選手が変わっているので、みんなも二連覇っていう意識はしていないんじゃないですかね。やっぱりその年の、このメンバーで獲った優勝っていう風に僕とかは凄く思うので。今は単純に目の前の一試合、一試合が本当に大事だと思っています。2位以下の順位は関係無いです。間違いなく自分達次第なので。
――ありがとうございました。
金崎 ありがとうございました。
夢生にインタビューを行ったBESTTIMES編集部である。
夢生の考え方・姿勢が伝わってくる。
やはりこの男は頼りになる。
長く長く鹿島にて活躍して欲しい。
心からの願いである。

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金崎夢生独占インタビュー第一回
文:BESTTIMES編集部/写真:高須力
2017年10月20日
Jリーグ二連覇に向けひた走る鹿島アントラーズ。牽引するのはFW・金崎夢生だ。ここまでチームトップの11得点を記録し、日本代表復帰も待望されるエースストライカーは、かつてトップ下タイプのテクニシャンだった――「理想のストライカー像」を聞く全三回の第一回。
新たに得た、力強さという武器。
――首位を走るチーム、金崎さんが牽引しているように見えます。好調の要因は何でしょうか。
金崎 うーん、そうですね。僕個人というより、チームとして上手くまわっているので、自分としてもそのチームの一員として上手く入っていけているのかな、と思います。
――2010年に取材をさせていただき、以降、トレーニングなども拝見していると少しずつプレーの姿勢も、表情も力強くなっている印象があります。
金崎 ははは、本当ですか(笑)。
――プレースタイルもかつてのテクニカルなものから力強さにシフトしているイメージがあります。変化したのか、したとすればターニングポイントはどこにあったのでしょうか。
金崎 うーん、そうですね。海外に行ったこと(※1)、経験したことはいろいろと貴重だったかな、とは思います。(※1ニュルンベルク【2013年1月〜同年9月】とポルティモンセ【2013年9月〜2015年1月】)。やっぱり結果に凄くこだわるようになりましたから。
――以前のインタビューでも「海外の選手を見ていると単純にゴール前に行く数が多い」と話されていました。結果というのはイコールゴール前ですか?
金崎 そうですね、やっぱり海外にはいい選手がたくさんいて、その中でポジションを取っていくために必要なものは結果でした。特に前線の選手はそれが大事だったので、だから結果にこだわってきているのかなとは思います。
――それは数字に表れる結果が大事なのでしょうか? それともチームが勝つ為に?
金崎 まずはチームが勝つことが一番ですけど……、やっぱりフォワードとしたら点を獲ることやアシストっていう、誰にでも目に見える結果をしっかり出すことは大事だと思います。それだけじゃないってことは分かっているんですけど。
――なるほど。そういう意味では本当に7年前とイメージが変わったように思います。当時はもっと柔らかいというか……、過去のご自分に対してどう思われますか?
金崎 あのときはあのときで、常に自分の物差しで一生懸命やってきましたし、あの頃があったからこそ今があるのだと思います。

求められる選択肢の中でベストな判断ができるように

――プレー面ではどうですか。かつてはドリブルが好きとおっしゃっていましたが今、そういうシーンが多いわけではありません。得点を獲ることにシフトしているのでしょうか?
金崎 そこはチーム状況ですよね。チームから求められることは常に変わっていくので、僕としてはその時の状況に合った一番良い判断が出来るようになりたいと考えています。それはある時は点を獲ることなのかもしれないですし、味方の為に走ること、アシスト、良いパスを出すことかもしれない。ドリブルもそのひとつかな、と。僕としては、求められる選択肢の中でベストな判断が出来る選手になりたいので、ゴールをたくさん決めるだけが全てではないと思っています。
――ゴールがベストではないということ。
金崎 ですね。チームとして足りない部分があるとしたら、そこを自分が補いたいということは思うので。
――なるほど。ただプレースタイルを変えるのは簡単ではありません。恐怖心もあるのではないでしょうか?
金崎 そういうことは別になかったですね。僕はとにかく試合に勝ちたい気持ちが強いんです。そのために自分自身が変わる必要があったので……、だからチームが変わるように自分のスタイルも自然と変わっていったのかな、と思います。
――変化しなければいけない過程の中で影響を受けるとしたら、チームメイトの言葉だったり、または自分の技術向上をより望む環境を作りたいということなのでしょうか?
金崎 あまりそういう風には考えないですかね。単純に目の前の試合に勝ちたいので「勝つ為に自分が出来ることは何か? このチームで今一番必要なことは何か?」と考え、やり続けているのかなと。
――だからその中で得点がマストではない。
金崎 はい、そうですね。
――とはいえ、ピッチでのプレーは得点への意欲にあふれているようにも見えます。
金崎 そうですね、最近はちょっとわからないですけど、日本ではガツガツいく選手が少ないと感じることもあったので、それがチームとして必要だと思ったのでそういうプレーを心掛けている部分はあります。
――あえてチームメイトを鼓舞する面も含めてということですか?
金崎 はい。試合中でも誰かがガツガツプレーをしていると、それに影響を受けて、チーム全体がそうなっていくこともあるので。だから、逆にそういった選手がチーム内に沢山いるのであればそのガツガツしたプレーを僕がする必要はなくて(笑)、上手にその選手を使いながら自分は簡単なプレーを選択していければいいと思います。だからやっぱりその時のチーム状況ですね。1番必要なものを見極められる選手になりたいですね。
――なるほど。今みたいな考えの軸を作っていく際、金崎さんは人の言葉に影響を受けたり、人から聞いて吸収しようとすることはありますか?
金崎 それはそうですね。意外とサッカーとは全く関係無いところから吸収することのほうが好きですね。そっちのほうがすんなり入ってくるというか。
ビジネスマンからも。「言葉」から学んでいる
――サッカー選手がこうしてきた、とかじゃなく。
金崎 そうです、そうです。全然仕事も違う人とか、例えば、ビジネスマンの方の話しを聞いて「あぁ、なるほど」と学ぶ点があったり、自分の考えと照らし合わせながらそういうこともあるか、と思ったり。同じ社会人として働いていて少し重なる部分もありますからね。一見、関係無い所から、ふと出てきた言葉を面白いと感じることが多いです。
――アスリートの方だと機会としてもアスリートの方に偏ることが多いですものね。
金崎 そうですね。特定の分野だけでなく、それよりも関係のないところから出てきた言葉の方が好きなんです。プレーに生かされているかどうかは別として(笑)。人として、そういうものが好きで、という感じではありますね。
――チームメイトからはどうですか?
金崎 ふだん何か直接言ってもらうとかではないんですけど、毎日同じようにトレーニングをしている、普通の姿で感じることが多いのは(小笠原)満男さんやソガ(曽ケ端準)さんですね。上手く言葉では言い表せませんが、満男さんとソガさんがああいう風にやっているというだけで、特別なことをしているわけでもないんですけど、間違いなくチームに必要な存在、必要な姿勢なんだなと感じます。
――必要な姿勢。
金崎 はい、そうですね。それが何なのかは上手く表現できないんですけど。
――それは鹿島で初めて感じたタイプの選手でしたか?
金崎 いくつかチームを経験してきたので、各チームでベテラン選手の方が出す雰囲気を感じることはありますが、鹿島には鹿島の色があるのだと思いますね。
金崎夢生独占インタビュー・点を決めて褒められるより嬉しいことがある
金崎夢生独占インタビュー第二回
2017年10月21日
Jリーグ二連覇に向けひた走る鹿島アントラーズ。牽引するのはFW・金崎夢生だ。ここまでチームトップの11得点を記録し、日本代表復帰も待望されるエースストライカーは、かつてトップ下タイプのテクニシャンだった――「理想のストライカー像」を聞いた。インタビュー第2回。
勝つために必要であれば…

――小笠原さんを見ていて、金崎さんもキャプテンをやってみたいと思うことはありますか?
金崎 自分から「はい!キャプテンやりたいです」とかはないですけど、それもさっき言ったようにチームが勝つ為に自分が(キャプテンマークを)巻いた方が上手くまわるのであれば、やりますけど、まぁ、たぶんその状況は無いと思います。今のところ、全然その必要はないかなと(笑)。
――ではキャプテンではなく、坊主頭は……? チーム内で、曽ヶ端さんへのリスペクトから坊主頭の選手は増えています。
金崎 坊主にもしないですね(笑)。全然、そういうことはやらないです(笑)。
――そうすると、金崎さんが目指すプレイヤー像とは、自分なりの選手なのか、それともご自身に似た選手なのか、または海外の選手など何かおありなんですか?
金崎 この選手1人という感じではなく、色々な選手の良い所や上手なプレーを真似したいな、という感じですね。
――昔から頑なに「理想の選手」の具体名を挙げられませんでした。自分のなりたい像を決めないっていうのは変わらずあるんですか。
金崎 ありますね。性格的にもあまり狭くなりたくないというか、縛られる感じがあまり好きではなくて。なんでも自由ではないですけど、さっきの変化とかがあってもいいんじゃないかな、って。それも色々経験して自分の中である程度、軸ができてきたので、そう思えるようになったのかなと。
――しかし、その変化というのもベースがあって上積みの部分を変えるというレベルじゃなく、ベースから変えるイメージがあるのですが。
金崎 そうですね。まあ、でもそのときは勝つ為にという感じですね。先ほど話した通り、目の前の試合に勝つにために必要であればやりますし、そのくらい一試合、一試合、勝ちたいですし優勝したいので。
だから、どちらかと言うと自分がいっぱい点を決めたことより「あの選手が入るとチャンスが増える、試合に勝つ」といった言葉の方が僕は嬉しいですね。誰が点を決めてもいいんですよ。最終的にチームが勝つことが一番嬉しいので。
たまたまゴールを決めたのはフォワードの選手であっても、それまでにディフェンスの頑張りだったりいろいろあるので。それがチーム全体として上手く機能しているから「あの選手が入ったら点が生まれる」「あの選手が入ったら試合に勝つよね」っていう評価はうれしいです。
「たまたまゴールを決めたのが僕」

――金崎さんがゴールを決めた試合は勝つと言われ、現在28試合無敗の“不敗神話”がありますが、ご自身ではあまり興味は無いのでしょうか。
金崎 そうですね、たまたまゴールを決めたのが僕であって、それで勝つなら周りの選手がもっと評価されるべきであって、あれは僕の評価ではないですよね。チーム全体の評価だと思っています。
――やはり勝つ事の喜びなんですね、原動力は。
金崎 幼い時から勝つ為に試合をしてきましたからね。逆にほかに目指すところがあるんですかね(笑)?
――例えば、負けてしまったけどハットトリックをしたから満足をする、っていう選手はいる。特に海外とかでも。
金崎 もちろん自分もしっかり活躍できて、その上でチームが勝つというのが何よりベストだと思いますし、それを目指していますけど、ハットトリックした選手も勝った方がよりうれしいはずなんですよね。
――まずは勝利だ、と。ご自身の中でそういう思考に至った原点、経験で一番大きいものは具体的に言うと何かありますか?
金崎 どうですかね。いや、自分の性格的にそういう考え方でいる方が力を発揮できるというか頑張ろうと思えるんですよね。
色々な選手が集まっていることの強み
――7年前の取材で「自分の性格は?」とお聞きしたら「自分の性格が一番わからない。人の性格はすぐわかるけど、自分の性格はわからない」と。
金崎 あの頃よりはわかってるかな、7年分、自分を観察したので(笑)
――はははは。海外(※)でプレーした期間、まずチームが勝つことにこだわるメンタリティは機能したんでしょうか。自分のために、キャリアアップのためにとプレーする選手もいるなかで。※ドイツと(ニュルンベルク所属:2013年1月~同年9月)とポルトガル(ポルティモンセ所属:2013年9月~2015年1月)
金崎 海外はすごく貴重な経験でした。色々なタイプの選手がいて、実際そういうタイプもいましたけど、僕はそれはそれで良いと思います。そういう選手が上手く絡むことでチームとして試合も勝てますし。
――また海外でプレーしてみたいという気持ちはありますか?
金崎 それはありますよ。やはり海外の良さはすごい感じますし、逆に大変さっていうのも短い間でしたが経験した部分はあったので、今も海外でプレーしている選手に対してリスペクトしてます。単純にすごいなって。
――海外の良さとはレベルや環境ですか?
金崎 やっぱり色々な選手が集まっているっていうのが大きいですよね。日本でやっていれば当然、日本人が多いわけで(笑)。でも特にヨーロッパだと南米からアジアからって本当に色々な国の選手が集まっていて、その中で一つのチームを作り、勝利を目指し合っていくので。それは大変なことも沢山あり、だからこそ面白みを感じることもあって。
――ストライカーとして考えた時に、端的に海外で出来る部分と出来ない部分はどことどこに感じますか?
金崎 本当にフォワードでやっていくなら得点の部分をもっと上げていかないとダメですし、それが皆がイメージするフォワード像だと思います。フォワードは基本、点を獲ってなんぼじゃないですか。そういう風に照らし合わせたら、自分としてはまだまだ得点の部分が全然足らないかなと。海外だと1試合1点以上のペースで獲る選手もいますしね。
鹿島・金崎夢生「フォワードとして僕はまだまだ物足りないと思う」
金崎夢生独占インタビュー第三回
2017年10月22日
Jリーグ二連覇に向けひた走る鹿島アントラーズ。牽引するのはFW・金崎夢生だ。ここまでチームトップの11得点を記録し、日本代表復帰も待望されるエースストライカーは、かつてトップ下タイプのテクニシャンだった――「理想のストライカー像」を聞いた。インタビュー第3回。
今は得点の部分で足りていない
――やはり勝たせるフォワードが重要で、客観的に外から見てアントラーズには勝たせるフォワードがいる。それはやはり金崎さんだっていうイメージが強いのですが、例えば点を獲る選手は沢山いますが最後、勝たせるフォワードって少ないと思うんですね。そういう評価ではやはり物足りないところはありますか?
金崎 うーん、そうですね。さっきの話と同じで個人として沢山得点を決めていてもチームとしてあまり成績が良くなかったら、そういう見られ方をしますし、個人として得点数はあまり多くはないけれどチームとして勝っていたら、得点以外の部分で貢献があるという見られ方もあると思います。自分としてはどちらも大切にしていきたいですが、ただ今は得点の部分で足りない部分が単純にあると思っています。どっちも大事ですけどね。

――周りの方はそこまで足りないとは思ってないと思いますが。
金崎 いやあ、感じてると思いますよ。言わないだけであって。例えば僕が中盤の選手だったらフォワードにはシーズン通して20点くらいは獲ってほしいなと思いますしね。そのくらい獲ってくれないとさすがに、って部分を感じます。理想ですけどね。
――聞いていると、フォワードにこだわっているわけではないようにも感じます。
金崎 それはそうですね。根本的に今のチームとして、何が必要かっていうのを一番感じるので。今のチームだったら自分が得点の部分で伸ばしていけば、チームも単純に勝てると思いますしね。今はそう思うからで、トップ下で機能するならそれが一番いいと思いますし。
――変化してきたことが生きますしね。トップ下でもウィンガーもできる。
金崎 でも結構、試合中でもありますよ。年間通して、ずっとやってて例えば、今日はあの選手が調子良くて二点決める試合とかがあるわけじゃないですか。その選手がフォワードみたいな感じで。だから本当に、毎試合状況、状況で変わってくる。それでだんだん形ができてきたりはしますけどね。
――特に鹿島だからかもしれないですね。かつてのグランパスや大分は形がしっかりあった気がします。
金崎 そういうものがあるかもしれないですね。もし形があって一人の選手が20点獲っていたら、その選手を抑えてしまえばいいわけですからね。
プレーを見て感じてほしい
――そうですね。いろいろと深く考えながらプレーされているのを感じましたが、鹿島に来て以降、メディアの前でそういう部分を出すことはあまりないように思います。それは話す言葉がうまく伝わらないと感じるからですか?
金崎 まぁ、それを感じる時はありますが、プレーを言葉で上手に説明できないんですよね。もちろん僕が言葉足らずな部分もありますが、プレーを見てくれた方、その人が感じるように感じ取ってほしいというか。僕のプレーを見て本当に自由にその人が感じるように感じてもらえればいいなと。
こう伝えてほしいと思うことはないですけど、伝えることが難しいなとは思います。伝えてくれる人と24時間一緒にいるわけではないので、例えばさっき言われたように本当に選手が伝えたい事を文章で、しかも決められた何文字で伝えることは難しいなとは思います。だから今回も取材して感じた部分を素直に書いてもらうのが一番良いかなと思います。

――頑張ります。少し話が変わって日本代表です。日本代表への思いは相変わらずありますか?
金崎 代表でやりたいという気持ちはあります。普段できない選手とプレー出来るので、そういう楽しみもありますね。
――代表の時はクラブでやっている時と少し感覚は違ってきますか?
金崎 そうですね、変わりますね。少し個人に寄ってしまう部分もありますが自分としては代表でも、出来るだけ鹿島のように「チームで勝ちたい」という気持ちにもっていけたらいいなと思っています。
生き残りとか色々言われるので、やはり個人個人になりがちな部分はあって、それは当然だと思うんですけどね。
――ハリルホジッチ監督の印象はどうでしたか?
金崎 身体、大きいなぁって思いました(笑)
――鹿島だと大岩監督と1対1でお話できますが、ハリルホジッチ監督とは言葉の関係で難しいと思うのですが、そういった部分で自分を出しきれてないと感じることはありますか?
金崎 難しいと感じる時はありますね。ドイツやポルトガルに移籍していた時もそうですが、通訳の方の顔を見てお互い話すので、1対1で話せたらいいなと思うことはありますね。
――鹿島サポーターもサッカーファンも代表入りを期待していると思います。では最後に、現在、二連覇が凄く近い所にあると思いますがいかがですか?
金崎 選手が変わっているので、みんなも二連覇っていう意識はしていないんじゃないですかね。やっぱりその年の、このメンバーで獲った優勝っていう風に僕とかは凄く思うので。今は単純に目の前の一試合、一試合が本当に大事だと思っています。2位以下の順位は関係無いです。間違いなく自分達次第なので。
――ありがとうございました。
金崎 ありがとうございました。
夢生にインタビューを行ったBESTTIMES編集部である。
夢生の考え方・姿勢が伝わってくる。
やはりこの男は頼りになる。
長く長く鹿島にて活躍して欲しい。
心からの願いである。

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