オイペンの師弟関係、豊川とマケレレ監督
今季最高の奇跡を起こした海外組。
豊川雄太とマケレレ監督の信頼関係。
posted2018/05/25 10:30

かつて“ジダンのサポート役”として名を馳せたマケレレ監督から信頼される豊川雄太。ベルギーの地で残したインパクトは大だ。
text by
中田徹
Toru Nakata
photograph by
AFLO
今季、欧州組の日本人選手で最もチームを救ったのは、ベルギーリーグ1部オイペンでプレーする豊川雄太だろう。
2018年3月11日、ベルギーリーグ・レギュラーシーズン最終のムスクロン戦の57分、クロード・マケレレ監督から「ゴールを取ってこい。相手GKの前へ飛び出すんだ。自分の持っている力をすべて出せ」と指示を受けてピッチに立った豊川は、73分の先制ゴールを皮切りに3ゴール1アシストという大活躍を見せた。
チームは4-0で勝利し、得失点差「1」でメヘレンをかわして最下位から脱出。奇跡の1部残留を果たしたのだ。
「このドラマ、短編すぎ(笑)」
「俺がピッチに入った時は0-0でした。このままだったらオイペンは完全に終わりでした。1点目を取った時にスタジアムがワーッとなって、チームも『まだ行けるぞ!』みたいになったのを感じました。自分が2点目を取って3-0となって、コーチから『もう1点取りに行け。行くんだ!』と言われました。それで4-0。ちょっと出来過ぎで怖いですよね。たった17分間のこのドラマ。短編すぎるでしょう(笑)」
1部残留が決まった瞬間、歓喜のサポーターがピッチになだれ込み、オイペンの英雄となった豊川を胴上げし、さらに肩車までした。
「ヤバイ、ヤバイ。ヤバかったですね。胴上げされた時は『頼むから落とさないでくれ』『コイツらマジ酔っているから落としそうだな』と思って『頼むからストーップ!』って何回も言いました。だけど、肩車された時はとりあえず嬉しいという感じ。みんなが盛り上がっているなと思いました」
周りの興奮に対して、どこか俯瞰的に見ていたかのようにも感じる豊川のコメントに、「自身は盛り上がらなかったの?」と尋ねると「盛り上がりましたよ。でも、周りが盛り上がり過ぎていて、限度を超えちゃっていた」と笑った。
「日本人だろ? 出来んのかよ」
小野伸二がフェイエノールトに来た頃、オランダでは「日本人にサッカーが出来るのか」と言われていたが、その後の活躍で「日本人のMFなら大丈夫」という評価が生まれた。それでも堂安律はフローニンゲンで「舐められている」と感じ、結果を出すことで周りを黙らせたという。
「俺も最初はそんな感じでしたよ。『日本人だろ? 出来んのかよ』って。別に言われたわけではないですが、そういう雰囲気というのを敏感に感じました。
日本人はみんな、どっかでそう感じていると思いますよ。だから変えていくしかない。俺はその悔しさが原動力になった。とりあえず練習で結果を出すしかない――となって、練習のミニゲームで点を取ったんです。そしたら、周りが『お前はめっちゃ点取るな』と言ってくるんですよ。そこから出場機会を得ることが出来たんです」
入団後ベンチ入りが3回、ベンチ外が2回と、5試合続けて出場機会がなかった時は「悔しい。早く練習来い!」と思っていたという。
練習で点を取ったら使ってくれた。
豊川のベルギーリーグ・デビューは、2月17日のズルテ・ワレヘム戦の70分だった。以降、マケレレ監督は少しずつ豊川に出場時間を与えていった。
「やっぱりマケレレ監督は見てくれているんだと思いました。マケレレ監督は俺が練習で点を取った週に試合で使ってくれたんです。そこから全試合に出ました。それが最終戦のハットトリックまでのシナリオです。監督によっては練習で結果を残してもダメな人っているじゃないですか。俺の場合、そうじゃなかったから良かったのかもしれません」
レギュラーシーズンの7位から15位までのチームが参加する、プレーオフ2の第4節、4月18日のアントワープ戦では初先発を果たした。続く第5節、4月21日のSTVV戦では1トップを務めゴールを決めた。
「1トップに入った時『結果を出せるな』という感覚が自分のなかであって、運良く結果を出せました。それまで俺は2トップかサイドで、ハットトリックを決めた時もサイドでプレーしていました。でも、中央でプレーする方が自分は生きると思っています。ゴールに近いところで相手DFラインと駆け引きするのが、とても好きなんです」
マケレレ監督も「大好き」と絶賛。
さらに5月9日の第8節アントワープ戦、5月12日の第9節オーステンデ戦でも豊川はフル出場を果たした。最初はベンチから、次に観客席から試合を見せて、そこから徐々に出場時間を伸ばしていった豊川の起用法を、マケレレ監督に振り返ってもらった。
「雄太にはベルギーリーグのこと、そしてベルギーという国をよく知る時間が必要でした。チームメイトとの関係もそう。最初は20分間プレーし、出場時間を伸ばしてから先発し、いまは90分間プレーしている。
そのことは大きな進歩。彼は毎日の練習から非常にプロフェッショナルでハードワーカーだ。メンタルも素晴らしいし、試合ではゴールも決める。こうした選手が私は大好きなんだ。彼がチームにいて、私はとても嬉しい」
「雄太の将来を疑っていません」
――マケレレ監督、あなたは豊川選手を1トップとして抜擢しています。背の低い彼を1トップとして起用しているのは、何かを見つけたからですか?
「その通り。私は彼がスペースを好むことを分かっています。チームにとってスペースに走る選手がいることは、とても重要。雄太はクレバーで、スペースの感覚を持っています。
雄太は相手DFを背負ってプレーするタイプではなく、スピードを活かして走り、相手DFの間を突いてゴールを決めるタイプです。逆に言えば、彼にはスペースが必要なのです。もちろん、体格に秀でたストライカーの側に雄太を配置する戦術を採れば、雄太にもっとスペースが生まれ、より多くのチャンスが生まれるでしょう」
――豊川選手はボールをどこまでも追いかけます。守備的MFだった監督も、どこまでもボールをしつこく追い回す選手でした。
「背が高いこと、パワフルであることが成功の鍵ではありません。雄太はとてもインテリジェンスのあるプレーヤーです。また、ゴールに対する嗅覚も秀でている。どこに走れば、どこにいれば、ボールが来るかが分かっている。それもまたストライカーにとって大事なクオリティです。私は雄太の将来を疑っていません」
最終戦で今季7ゴール目をゲット!
マケレレ監督も疑わない豊川の未来。しかし、本人は地に足を着けてこう言うのだ。
「一歩ずつ一歩ずつ、23年間、人生を送ってきましたから、いきなりグワーンと上がる人生はない。一歩ずつ来ましたので、これからもそうしていきたいです」
5月19日、今シーズンの最終戦となったベールスホット戦で、豊川は直接FKを決めて今季7ゴール目を記録した。
オイペンを救った「17分間のドラマ」の印象が強い豊川だが、コツコツとゴールを積み重ねていった姿も、また立派なものだった。
オイペンの豊川について取材したNumberWebの中田氏である。
「今季、欧州組の日本人選手で最もチームを救った」と評す。
奇跡の残留劇の主役となった豊川は、日本人として舐められたところから、周囲に認めさせ、信頼を勝ち得ていったことを伝える。
素晴らしい。
また、オイペンを率いるマケレレ監督から、「背が高いこと、パワフルであることが成功の鍵ではありません。雄太はとてもインテリジェンスのあるプレーヤーです。また、ゴールに対する嗅覚も秀でている。どこに走れば、どこにいれば、ボールが来るかが分かっている。それもまたストライカーにとって大事なクオリティです。私は雄太の将来を疑っていません」という言葉を引き出す。
日本人としても大きくは無い豊川が、欧州にて1TOPを張ることは、サッカーの奥深さとともに勇気を与える。
豊川は来季もオイペンにて輝いてくれるであろう。
活躍を楽しみにしておる。

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豊川雄太とマケレレ監督の信頼関係。
posted2018/05/25 10:30

かつて“ジダンのサポート役”として名を馳せたマケレレ監督から信頼される豊川雄太。ベルギーの地で残したインパクトは大だ。
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中田徹
Toru Nakata
photograph by
AFLO
今季、欧州組の日本人選手で最もチームを救ったのは、ベルギーリーグ1部オイペンでプレーする豊川雄太だろう。
2018年3月11日、ベルギーリーグ・レギュラーシーズン最終のムスクロン戦の57分、クロード・マケレレ監督から「ゴールを取ってこい。相手GKの前へ飛び出すんだ。自分の持っている力をすべて出せ」と指示を受けてピッチに立った豊川は、73分の先制ゴールを皮切りに3ゴール1アシストという大活躍を見せた。
チームは4-0で勝利し、得失点差「1」でメヘレンをかわして最下位から脱出。奇跡の1部残留を果たしたのだ。
「このドラマ、短編すぎ(笑)」
「俺がピッチに入った時は0-0でした。このままだったらオイペンは完全に終わりでした。1点目を取った時にスタジアムがワーッとなって、チームも『まだ行けるぞ!』みたいになったのを感じました。自分が2点目を取って3-0となって、コーチから『もう1点取りに行け。行くんだ!』と言われました。それで4-0。ちょっと出来過ぎで怖いですよね。たった17分間のこのドラマ。短編すぎるでしょう(笑)」
1部残留が決まった瞬間、歓喜のサポーターがピッチになだれ込み、オイペンの英雄となった豊川を胴上げし、さらに肩車までした。
「ヤバイ、ヤバイ。ヤバかったですね。胴上げされた時は『頼むから落とさないでくれ』『コイツらマジ酔っているから落としそうだな』と思って『頼むからストーップ!』って何回も言いました。だけど、肩車された時はとりあえず嬉しいという感じ。みんなが盛り上がっているなと思いました」
周りの興奮に対して、どこか俯瞰的に見ていたかのようにも感じる豊川のコメントに、「自身は盛り上がらなかったの?」と尋ねると「盛り上がりましたよ。でも、周りが盛り上がり過ぎていて、限度を超えちゃっていた」と笑った。
「日本人だろ? 出来んのかよ」
小野伸二がフェイエノールトに来た頃、オランダでは「日本人にサッカーが出来るのか」と言われていたが、その後の活躍で「日本人のMFなら大丈夫」という評価が生まれた。それでも堂安律はフローニンゲンで「舐められている」と感じ、結果を出すことで周りを黙らせたという。
「俺も最初はそんな感じでしたよ。『日本人だろ? 出来んのかよ』って。別に言われたわけではないですが、そういう雰囲気というのを敏感に感じました。
日本人はみんな、どっかでそう感じていると思いますよ。だから変えていくしかない。俺はその悔しさが原動力になった。とりあえず練習で結果を出すしかない――となって、練習のミニゲームで点を取ったんです。そしたら、周りが『お前はめっちゃ点取るな』と言ってくるんですよ。そこから出場機会を得ることが出来たんです」
入団後ベンチ入りが3回、ベンチ外が2回と、5試合続けて出場機会がなかった時は「悔しい。早く練習来い!」と思っていたという。
練習で点を取ったら使ってくれた。
豊川のベルギーリーグ・デビューは、2月17日のズルテ・ワレヘム戦の70分だった。以降、マケレレ監督は少しずつ豊川に出場時間を与えていった。
「やっぱりマケレレ監督は見てくれているんだと思いました。マケレレ監督は俺が練習で点を取った週に試合で使ってくれたんです。そこから全試合に出ました。それが最終戦のハットトリックまでのシナリオです。監督によっては練習で結果を残してもダメな人っているじゃないですか。俺の場合、そうじゃなかったから良かったのかもしれません」
レギュラーシーズンの7位から15位までのチームが参加する、プレーオフ2の第4節、4月18日のアントワープ戦では初先発を果たした。続く第5節、4月21日のSTVV戦では1トップを務めゴールを決めた。
「1トップに入った時『結果を出せるな』という感覚が自分のなかであって、運良く結果を出せました。それまで俺は2トップかサイドで、ハットトリックを決めた時もサイドでプレーしていました。でも、中央でプレーする方が自分は生きると思っています。ゴールに近いところで相手DFラインと駆け引きするのが、とても好きなんです」
マケレレ監督も「大好き」と絶賛。
さらに5月9日の第8節アントワープ戦、5月12日の第9節オーステンデ戦でも豊川はフル出場を果たした。最初はベンチから、次に観客席から試合を見せて、そこから徐々に出場時間を伸ばしていった豊川の起用法を、マケレレ監督に振り返ってもらった。
「雄太にはベルギーリーグのこと、そしてベルギーという国をよく知る時間が必要でした。チームメイトとの関係もそう。最初は20分間プレーし、出場時間を伸ばしてから先発し、いまは90分間プレーしている。
そのことは大きな進歩。彼は毎日の練習から非常にプロフェッショナルでハードワーカーだ。メンタルも素晴らしいし、試合ではゴールも決める。こうした選手が私は大好きなんだ。彼がチームにいて、私はとても嬉しい」
「雄太の将来を疑っていません」
――マケレレ監督、あなたは豊川選手を1トップとして抜擢しています。背の低い彼を1トップとして起用しているのは、何かを見つけたからですか?
「その通り。私は彼がスペースを好むことを分かっています。チームにとってスペースに走る選手がいることは、とても重要。雄太はクレバーで、スペースの感覚を持っています。
雄太は相手DFを背負ってプレーするタイプではなく、スピードを活かして走り、相手DFの間を突いてゴールを決めるタイプです。逆に言えば、彼にはスペースが必要なのです。もちろん、体格に秀でたストライカーの側に雄太を配置する戦術を採れば、雄太にもっとスペースが生まれ、より多くのチャンスが生まれるでしょう」
――豊川選手はボールをどこまでも追いかけます。守備的MFだった監督も、どこまでもボールをしつこく追い回す選手でした。
「背が高いこと、パワフルであることが成功の鍵ではありません。雄太はとてもインテリジェンスのあるプレーヤーです。また、ゴールに対する嗅覚も秀でている。どこに走れば、どこにいれば、ボールが来るかが分かっている。それもまたストライカーにとって大事なクオリティです。私は雄太の将来を疑っていません」
最終戦で今季7ゴール目をゲット!
マケレレ監督も疑わない豊川の未来。しかし、本人は地に足を着けてこう言うのだ。
「一歩ずつ一歩ずつ、23年間、人生を送ってきましたから、いきなりグワーンと上がる人生はない。一歩ずつ来ましたので、これからもそうしていきたいです」
5月19日、今シーズンの最終戦となったベールスホット戦で、豊川は直接FKを決めて今季7ゴール目を記録した。
オイペンを救った「17分間のドラマ」の印象が強い豊川だが、コツコツとゴールを積み重ねていった姿も、また立派なものだった。
オイペンの豊川について取材したNumberWebの中田氏である。
「今季、欧州組の日本人選手で最もチームを救った」と評す。
奇跡の残留劇の主役となった豊川は、日本人として舐められたところから、周囲に認めさせ、信頼を勝ち得ていったことを伝える。
素晴らしい。
また、オイペンを率いるマケレレ監督から、「背が高いこと、パワフルであることが成功の鍵ではありません。雄太はとてもインテリジェンスのあるプレーヤーです。また、ゴールに対する嗅覚も秀でている。どこに走れば、どこにいれば、ボールが来るかが分かっている。それもまたストライカーにとって大事なクオリティです。私は雄太の将来を疑っていません」という言葉を引き出す。
日本人としても大きくは無い豊川が、欧州にて1TOPを張ることは、サッカーの奥深さとともに勇気を与える。
豊川は来季もオイペンにて輝いてくれるであろう。
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コメントの投稿
真のワールドクラスから絶賛される豊川、ぜひ日本の代表に!
トヨ、カッコイイ!
まだまだ国内の報道は小さいかもだけど、確実に凄いことを成し遂げている。
このまま頑張って代表で見たい!
まだまだ国内の報道は小さいかもだけど、確実に凄いことを成し遂げている。
このまま頑張って代表で見たい!