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地方の会社が「鹿島アントラーズから学ぶべきこと」

鹿島アントラーズFCの経営について記す経済アナリストの中原氏である。
極東の辺境に位置するこのクラブがどのような努力をして成り立ち、成功を収めておるのか。
“軌跡”という言葉で片付けてはならぬ。
多くの経営者がモデルケースとして学習すべきである。
チームの強さとその継続性がクローズアップされる事は多いが、それを支える経営も素晴らしい。
ますます鹿島アントラーズが好きになる。
これからもこのクラブについて勉強していきたい。
素晴らしい企業である。

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地方の会社が「鹿島アントラーズから学ぶべきこと」(前編)
中原圭介 | 経営アドバイザー、経済アナリスト
7/27(土) 10:00



カシマスタジアムの観客の半数は首都圏から訪れている。(写真:ロイター/アフロ)

なぜアントラーズの経営は凄いといえるのか

 私は鹿島アントラーズが地方の会社経営(自営業も含む)のお手本になるとずっと考えてきました。経営の常識から判断すれば、茨城県の東端という人口の少ない地域で、Jリーグのトップリーグ(J1)で優勝争いをするクラブ運営ができているのは凄いことだからです。

 サッカー業界では以前から、クラブチームの商圏(マーケット)は半径30キロだといわれています。アントラーズの本拠地がある鹿嶋市は人口が6万7千人、半径30キロの同心円の半分は海(太平洋)と地理的にも厳しく、マーケットには78万人しか住んでいないのです。

 プロサッカー球団の経営をするためには、マーケットが最低100万人いないと成り立たないといわれています。たとえば、FC東京のマーケットには2300万人、浦和レッズには1700万人~1800万人が住んでいます。経済合理性から考えたらありえない状況のなかで、アントラーズが存続してきたこと自体が奇跡に近いというわけです。

マーケットが小さいのに、Jリーグで最も成功を収めている秘訣とは

 人口が少ない地域で成功を収めている秘訣は、マーケットの外から顧客を呼ぶことができているということです。それは、最大の収入源であるカシマスタジアムの観客数の内訳を見れば一目瞭然です。

 カシマスタジアムの平均観客数は約2万人ですが、実は半径30キロのマーケット内からの観客数は全体の25%を占めているに過ぎません。マーケット外の茨城県や北関東からの観客数が25%、東京23区などの首都圏からの観客数が50%というのが、アントラーズの顧客シェアになっているのです。

 なぜ茨城県の東端にあるチームにわざわざ首都圏から半数もの観客が訪れるのかというと、それはアントラーズが常に優勝争いができる強いチームであるからです。だからこそアントラーズは、徹底的に勝利にこだわって強いチームづくりを進めてきたというわけです。

 茨城のチームを応援するのは東京のチームを応援するよりも、時間と体力とお金を使います。そういう顧客に渋滞の中でも満足して帰ってもらえるようにと、アントラーズの選手全員に勝ちへのこだわりとファンへの感謝の気持ちが浸透しているといいます。

世界のトップと勝負するためには、売り上げを上げていくしかない

 鹿島アントラーズの鈴木秀樹取締役事業部長によれば、J1で親会社から自立したうえで優勝しようとしたら、とにかく売り上げを伸ばしていくしかないといいます。昨年度のJ1の18チームの平均売り上げが30億円に達しない状況下で、日本のチームが世界のトップチームと互角の勝負をするためには、将来的に100億円を目指さなければならないというのです。

 FIFA(国際サッカー連盟)はクラブワールドカップなどの大会に参加する各チームにパッケージとして50人分の費用を出しています。選手以外にもメディカルスタッフをはじめ様々な役割のスタッフが必要になるからです。鈴木氏がそこで驚きだったのは、レアル・マドリードが周辺のスタッフだけで50人を大幅に超える人数を連れてきていたということです。

 クラブワールドカップでレアル・マドリードに2回負けてわかったのは、選手の技術力の差は別として、スタッフの差の部分だけでも埋めなければアントラーズがレアルに勝ちたいとは言えないということです。そのために、売り上げ規模で100億円を目指そうということになったといいます。

 前年度はAFCチャンピオンズリーグの優勝で約4.5億円、クラブワールドカップのベスト4で約2.3億円の賞金が入ってきたため、クラブとして売り上げが初めて70億円台を達成することができたということです。今後のアントラーズが志すのは、顧客を満足させるために勝つ、それによって売り上げを増やしていく、この好循環を実現していくことだといいます。

マーケティングに人手と時間を惜しまない

 そこでマーケティングが重要な要素になってくるわけですが、アントラーズはすでにアメリカのプロスポーツチームのデジタル戦略を模倣して、国内で試行錯誤を繰り返してきました。Jリーグのチームで初めてスタジアム内にハイスペックWi-Fiを導入し、インターネットの環境整備にも余念がありません。

 デジタル戦略を推し進めた成果として、ファンに関する様々な調査によってデータが蓄積していき、新しいアイデアが次々と生まれているといいます。こういうアイデアを実行すれば、こういう結果が出るということが予想しやすくなったというのです。仮に予想が外れて思わしくない結果が出れば、次回からやめればいいというわけです。

 10年以上前にはスポンサーからチラシを配るように依頼され、その効果があるのか疑わしい中で多くの人員を使って配っていましたが、デジタル戦略を駆使するようになってからは、逆にこちらからスポンサーに「デジタルクーポン」を配ろうと提案できるようになったといいます。データの裏付けがあるならばスポンサーは賛同してくれますし、コストが安いゆえに失敗しても次は成功しようと前向きに考えられるというのです。

 デジタル技術の進化が日進月歩で進み、マーケティングの結果に基づいて以前の数分の一のコストでビジネスができることは、アントラーズにとって売り上げを伸ばす原動力となっています。ただし、決してアナログの調査を軽視することなく、デジタルとアナログの両方の調査には、人手と時間を惜しまずにかけているということです。

アントラーズは地方の会社経営のお手本になる

 私は、アントラーズのデジタル戦略は地方の会社経営にとってお手本になると思っております。人口の減少度合いが大きい地方で経営をすればするほど、デジタルを駆使しなければならないということ、マーケティングに労力と時間をかけなければならないということ、この二つの要素が重要であると考えております。

 これまでの地方の会社経営では、とりわけ小売業では商圏(マーケット)で何事も考える傾向があったため、距離というものが絶対的に大事な尺度になっていました。ところが、デジタルを駆使すれば距離はあまり意識する必要がないことがわかってきています。地方の経営者に最も求められるのは、マーケティングの結果をもとに、顧客の興味を引きつけるアイデアや仕掛けを次々とつくっていくことなのです。

地方の会社が「鹿島アントラーズから学ぶべきこと」(後編)
中原圭介 | 経営アドバイザー、経済アナリスト
7/28(日) 8:45



鹿島アントラーズの経営は地方の会社経営のお手本になるだろう。(写真:アフロスポーツ)

アントラーズは「町おこし」で始まったチームだった

 前回の記事(前編)では、アントラーズが地方の会社経営のお手本となる秘訣として、デジタルを駆使しながらマーケティングに労力と時間をかけていることについて述べました。アントラーズの前年度の売り上げはクラブとして初めて70億円台に達し、今後は100億円を目指して会社と選手が一丸となって邁進しているそうです。

 アントラーズが発足した25年前には、そのような売り上げを伸ばそうという発想はまったくなかったといいます。親会社の住友金属(現在の日本製鉄)や鹿島臨海工業地帯に進出した企業の方針に従って、町おこしをしようと始まったクラブチームだったからです。そういう経緯があったため、アントラーズの経営陣は親会社や鹿島進出企業がしっかりとチームを支援してくれるだろうと思っていたというのです。

 ところが意外にも、Jリーグのクラブチームとしてスタートした直後から、親会社や鹿島進出企業が「イニシャルコスト(初期費用)は出すが、ランニングコスト(運営費用)は何とか自らで稼げるようになりなさい」と自立した経営を促されたといいます。他のJリーグのチームとは異なり初めから厳しい現実に直面し、それでは一生懸命稼ぐしかないだろうと腹をくくったということです。

アントラーズが生き残ることができたのは、強い危機意識があったからこそ

 これまでアントラーズの経営を支えてきたのは、25年ものあいだ常に「明日、つぶれるかもしれない」と考えながら、強い危機意識を持ってやってきたということです。商圏(マーケット)が他のチームと比べて圧倒的に小さいために、「つぶれないためには、勝つしかない」「勝つためには、何をなすべきか」といった思考回路のもとに、強いチームづくりと売り上げの伸びの両立を目標として運営されてきたのです。

 Jリーグが誕生した当時のクラブチーム(10チーム)は親会社の単なる広告・宣伝部門と見なされていたのですが、今でもJ1からJ3までの55チームのうち、経営的に親会社から自立できているチームはほとんどありません。日本のプロスポーツチームの経営はその親会社がある程度は補填して成り立っているので、そういった意味では、アントラーズは稀有な存在だったといえるでしょう。

 ただし、アントラーズと同じように町おこしで始めた小さなクラブの中には、今現在、しっかりと自立できているチームもあります。たとえば、J1に昇格して優勝を目指そうとしたりしなければ、運営にかかる規模や経費を縮小しながら、稼げる範囲でクラブ経営をすることは可能です。しかし、Jリーグの発足時は1リーグ10チームしかなかったこともあり、当時は縮小均衡という状況は考えられなかったといいます。

技術の進歩に合わせて、時代の変化に敏感にならなければならない

 携帯電話(スマートフォン)の世界では、あと数年のうちに第5世代移動通信システム(5G)が普及し始めるといわれていますが、それは携帯の通信システムが第4世代から第5世代に変化するまでに10年程度しかかからない計算になります。人間の世代が1つ変わるのに30年程度かかるのと比べて、デジタル通信は10年程度で1世代進むのだから、アントラーズの経営も同じ早さで進化していかなければ、世の中の変化のスピードについていけなくなるという緊迫感を持っているといいます。

 その一方で、今の経営陣がいくら頑張ったとしても10年後~20年後には誰もいなくなるので、会社に新しい人材を次々と入れて成長させていかなければ、遅かれ早かれビジネスの現場では後れを取ってしまいます。時代の変化に敏感になっていなければ、その変化に気づいた時に適応しようとしても、すでに手遅れになってしまうという危機意識も持っているといいます。

 アントラーズの経営陣は、サッカーにかぎらずプロスポーツはエンターテインメント・ビジネスかつコンシューマー・ビジネスの中心にいると自覚しています。だからこそ、アントラーズが嫌いになったといわれないように、顧客のニーズに対して絶えず手抜きをするわけにはいかないというのです。プロスポーツチームはデジタル戦略で顧客のニーズに鋭敏に対応しながら、ビジネスのやり方を変化させていく必要があるというわけです。

会社経営は10年後、20年後を予測して取り組まなければならない

 私は、会社の経営者は10年あるいは20年スパンで未来を予測して対応していかねばならないと思っています。とりわけ地方の会社経営者は10年後や20年後に人口が具体的にどれだけ減るのかということを意識しながら、戦略的に事業を縮小して利益が出やすい体質に変えていかなければなりません。今からそういった備えを怠れば、地方の会社が生き残ることは難しいのではないでしょうか。

 それに加えて私は、アントラーズが会社としていつも考えているように、10年後の顧客の変化を予想しなければこれからビジネスはできないという意識が欠かせないと考えています。10年後の社会はどう変わっているのだろうか、10年後の顧客のライフスタイルはどう変わっているだろうか予測をしながら、今から少しずつ準備をしていかなければならないのです。

 アントラーズの鈴木秀樹取締役事業部長は社員たちに対して「その仕事をやることによって、10年後はどうなっているの?」という問いかけをいつもしているそうですが、考えることができる社員はきちんと考えていて、「10年後はこうなるから、今はこの仕事をやるのです」と答えてくれるといいます。それは、社員の中でも「変化に気づいてから対応しても遅すぎるだろう」という考えが共有されていることを示しています。

人口減少社会に対応した「縮む戦略」の有効性

 アントラーズが将来を見据えて成し遂げたいのは、カシマスタジアムの収容能力を現在の4万人から2万5000人に大幅に落としたいということです。2002年に日韓ワールドカップがすでに開催され、2020年に東京オリンピックが終わった後は、ワールドカップやオリンピックに適応できる収容能力は維持する必要がないと考えているというのです。

 アントラーズの構想では、最大利益を得るための適正な収容能力は2万5000人であり、そのうち5000人分をスイートボックス(いわゆるVIP席)にしたいということです。ヨーロッパでは2割のエグゼクティブの入場料収入が全体の収入の8割を占めるという手法が成り立っていることを鑑みれば、スイートボックスを5000席にすることで収益は今よりもずっと上がるといいます。

 私もその考え方には大いに賛成です。人口減少社会に備えて戦略的に縮小していくと同時に、付加価値が高いスイートボックスを増やすことで収益力が高まるというのは、感覚的に正しいと思っています。ただし、私がスイートボックスで観戦した経験からいえば、スイートボックスはもっと豪華なつくりにして、茨城だけでなく首都圏の経営者たちが集まるサロンみたいな場所にしたらおもしろいだろうと思い描いています。

地方の会社経営はアントラーズを参考にしよう

 鹿島アントラーズの運営が上手くいっている理由について、前編と後編の2回にわたって述べてきましたが、これは人口減少が加速している地方の会社経営にとって非常に重要な内容であります。今回のお話の内容が地方の経営者の心に響いて行動を起こすきっかけになってもらえれば幸いであると思っています。

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Author:Fundamentalism
鹿島愛。
狂おしいほどの愛。
深い愛。
我が鹿島アントラーズが正義の名のもとに勝利を重ねますように。

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