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メルカリとともに、世界目線のアントラーズが次のステージへと駆け上がる

サッカーダイジェスト誌に寄稿した報知新聞の岡島記者である。
これまでの経緯や今後のことなどが語られる。
期待と不安が入り交じるが、今後には期待せざるを得ない。
岡島記者を納得させる経営手腕を楽しみにしておる。

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“常勝軍団”鹿島&“ベンチャー企業”メルカリの新タッグが船出!! 経営権譲渡が映し出す未来は?
岡島智哉
2019年08月30日

メルカリへの経営権譲渡。きっかけは鹿島を取り巻く環境の変化にあった


経営権の譲渡でどんな未来を切り開くか――。左から日本製鉄の津加執行役員、鹿島の庄野社長、メルカリの小泉社長。(C)J.LEAGUE PHOTOS

 鹿島の運営母体が日本製鉄からメルカリに代わり、8月30日にその新体制がスタート。国内随一の常勝軍団と急成長中のベンチャー企業のタッグは、いかなるビジョンを掲げて、どんな未来を切り開いていくのか。突然の経営権譲渡劇の舞台裏と今後の展開について考察する。

―――◆―――◆―――

 フリーマーケットアプリ大手のメルカリが鹿島の経営権を取得。7月30日、Jリーグの理事会で、日本製鉄からメルカリに60パーセント超の株式が約16億円で譲渡されることが承認された。2018年からユニホームの鎖骨部分のスポンサーを務めていたメルカリの小泉文明社長は「さらにチームを常勝軍団として、地位を獲得していきたい」と意気込んでいる。


【鹿島アントラーズの持株比率】※小数点以下第2位を四捨五入

 譲渡のきっかけは、鹿島を取り巻く環境の変化にあった。鹿島の前身は1947年に創部された住友金属(住金)工業蹴球団。現在のクラブ幹部の多くは元住金の選手だ。住金は鹿島工場で働く社員の福利厚生として鹿島を組織。初代Jリーグチェアマンの川淵三郎氏から「99・9999パーセント無理」と言われたJリーグ入りに尽力し、無事に初年度の1993年から加盟。ジーコがクラブの礎を築き、茨城県の小さな町に日本屈指のビッグクラブを根付かせた。鹿島は今や、他の追随を許さない20個のタイトルを獲得する常勝軍団になった。

 その住金が2012年に新日鉄(当時)と経営統合した(後に日本製鉄に社名変更)。潮目が変わったのはこの時だ。会社の規模が大きくなり、鹿島は新日鉄が持つ約400の子会社の内のひとつに。Jリーグでは唯一「常勝軍団」を語る資格を持っているが、会社としての立場はあくまで「400分の1」の存在。経営判断のスピード感が落ちた。特例は認められない。日本製鉄側も課題としていたが、特別視するわけにもいかず、解決策はなかった。そもそも企業を対象に営業する「BtoB」企業にとり、鹿島を保有するメリットはそれほど多くはない。

「400分の1」から「4分の1」の存在に


体制が変わっても、勝利にこだわる姿勢は変わらず。「自分たちはピッチに集中するだけ」(伊藤翔、背番号15)だ。(C)SOCCER DIGEST

 日本製鉄側はこれらを総合的に判断し、「Jリーグも共存から競争の時代になった。(鹿島が)世界で戦い続けるためには経営基盤の強化、価値を高める具体的な方策が必要と考え、新たな展開、新しいパートナーを迎え入れることが最良の方策との結論に至った」(日本製鉄・津加宏執行役員)という。1947年に住友金属工業蹴球団から始まった運営母体の役割を終える決断に至る。譲渡の条件として挙げたのが①本拠を変えない。②地域密着の理念を継承すること。メルカリが名乗りを挙げ、アントラーズが乗った。メルカリの子会社は鹿島で4社目。「400分の1」から「4分の1」。経営判断のスピード化が期待できる。

 鹿島は「世界」に視野を広げている。2018年度の営業収入は、神戸、浦和に次ぐクラブ史上最高の約73億3000万円。前年度比約20億円アップだった。賞金や移籍金収入が大幅に増加した背景もあるが、広告料収入や入場料収入も前年度から大きく数字を伸ばした。

 それでも、ACLを制し、2度目のクラブワールドカップに出場した昨季の経験から、鹿島は日本で突き抜けた存在になるだけでなく「世界」を見据えた体制を作る将来像を掲げた。庄野洋社長は「(営業収入)100億を目指す。世界で戦うための最低限のライン」と宣言している。

 鹿島は勝利につながる言動だけが許されるクラブだ。今回の経営権譲渡も、勝利のため。「100億円のために勝利を目指す」のではなく、「勝利のために100億円を目指す」。業界騒然のメルカリの参入はそのための手段のひとつに過ぎない。

 FW伊藤翔が「自分たちはピッチに集中するだけ」と語るように、選手たちは目の前の試合を勝ちにいく。日本製鉄でもメルカリでも、やることは変わらない。そして「『全ては勝利のために』という鹿島の哲学の中で、世界に出るためにビジネスをしっかり回し、そのお金でチームを強くする」と語る小泉社長はビジネスで勝ちにいく。どれだけの札束を積んでも得られない哲学・伝統が鹿島にはある。その礎を壊さず、ビジネス面で世界と戦う土壌を作りたい鹿島と、世界でのシェア拡大を目指すメルカリが手を組む。

「何度優勝しても危機感は消えない」


鹿島は20個のタイトルを獲得している常勝軍団だ。しかしビジネスの観点では不利な面も。写真:徳原隆元

 では、具体的に何が変わるのか。ドラスティックな改革は起きないだろう。組織としての鹿島は、ある程度完成されている。スポーツ界では一般的に、大手IT企業に経営権が移ると、良くも悪くもチームがガラリと変わるケースが多かった。貧乏球団だった福岡ダイエーホークスは球界随一の金持ち球団『福岡ソフトバンクホークス』に変貌を遂げ、負けに負けていた横浜ベイスターズは『横浜DeNAベイスターズ』として、スポーツビジネス界の手本となるような抜本的な取り組みでスタジアムに観客を呼び戻し、成績も向上させた。

 一方の鹿島は、国内で最も完成されているクラブといっていいだろう。前述の通り営業収入は右肩上がり。強化部の有能ぶりは他クラブが羨むレベルで、現有戦力の伸びしろにフタをせず、適材適所に選手を補強する。この1年間で海外移籍した選手はみな、多かれ少なかれ移籍金を残して巣立っている。

 カシマスタジアムの半径30キロ圏内人口はわずか78万人(浦和は1700万人、FC東京は2207万人)。あるクラブ幹部は「何度優勝しても危機感は消えない」と語る。他クラブのサポーターから「鹿島国」と揶揄される片田舎を本拠地としながらも、各部署が一枚岩となり、勝利だけを目指すクラブとして地位を築いている。小泉社長は「チームのことについてはこれまでの歴史、伝統がある」と語っており、ここまで鹿島が築き上げてきたクラブの理念、方針には断じて口出ししない意向を示している。

 メルカリはその盤石な「幹」を支え、より太くしていくアクションを行なっていく。「現状維持は衰退」という言葉があるように、鹿島はメルカリの参入で、固まりつつある経営地盤をさらに高みへ導き、世界を舞台に戦う規模への成長を目指す。

新規顧客の呼び込みやスタジアム改革も期待


メルカリが持つノウハウを活かして、鹿島は次のステージへ進もうとしている。(C)SOCCER DIGEST

 期待されることのひとつは、新規顧客の呼び込みだ。「BtoC」企業であるメルカリのメイン顧客は20代の女性。Jリーグ側はスタジアムに足を運ぶサポーターの平均年齢が上昇傾向にあることを危惧しているが、メルカリの顧客にアントラーズを認知させる役割が期待される。

 また小泉社長は「インターネットを使ってファン・サポーターの皆さまと触れ合えるような取り組みをしたい」「もっともっとスタジアムで楽しく過ごしてもらえるような環境を提供したい」と話す。鹿島はこれまでもネットでの情報発信に力を入れ、スタッフの人数も割いてきた。時代の変化に合わせ、硬派を地でいくクラブからは卒業済み。それでも実店舗を持たず、ネットの世界だけで急成長を遂げたメルカリが持つノウハウは生かされるはずだ。

 さらに、スタジアム改革も期待されている。すでにクラブは、将来的にカシマスタジアムの座席数を減らす方針を明言。満員に近いスタジアムの臨場感を求めると同時に、より高価なロイヤリティー席を充実させ、客単価を上げることを目指している。試合で勝利することが、ファン・サポーターにとって最も「楽しい空間」という認知につながる。だが、それは選手や現場スタッフ、強化部の仕事だ。メルカリは試合時間の90分以外のところにフォーカスしたアクションで、「楽しい空間」作りへ尽力することになるだろう。スタジアム
への滞在時間を増やすようなイベントや仕掛けを行なうことは、積年の課題でもある渋滞対策にもつながっていく。

 期待と不安が入り交じる突然の経営権譲渡劇。もちろん、まだ正式に経営権が移っていない現段階で「心配ご無用」とは言えないが、期待すべき点は多い。メルカリとともに、世界目線のアントラーズが次のステージへと駆け上がる。

取材・文●岡島智哉(報知新聞社)

※『サッカーダイジェスト9月12日号』(8月22日発売)より転載

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狂おしいほどの愛。
深い愛。
我が鹿島アントラーズが正義の名のもとに勝利を重ねますように。

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