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メルカリ✕アントラーズ

動画配信サービス・Paraviによる小泉社長と鈴木秀樹マーケティングダイレクターへのインタビューである。
『日経STARTUP X』という番組の性質上、ビジネス的な側面を秀樹さんが良く応えてくれる。
鹿島の経営マインドが良く伝ってくる。
ヘタを打つと即潰れる可能性を秘めているベンチャー的なクラブであることで、他の日本のクラブとは一線を画しておる。
メルカリが親会社になったことで、ベンチャー×ベンチャーとなり鹿嶋周辺にも影響を及ぼすようになっていく。
このクラブが更に新化する姿を観ていきたい。
楽しみである。

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メルカリ✕アントラーズ、小泉氏のゲームプラン
2020.01.24

「スタートアップ」が未来を創る――。話題のスタートアップや、イノベーティブな起業家をいち早く取り上げる「ビジネスにスグ効く」経済トークショー『日経STARTUP X』。PlusParaviでもテキストコンテンツとしてお届けする。

メルカリは2019年、サッカーJ1の鹿島アントラーズの経営権を取得した。サッカークラブの経営権を巡っては、RIZAPグループが2018年4月に湘南ベルマーレ(神奈川県平塚市)の経営権を、サイバーエージェントが同年10月にFC町田ゼルビア(東京都町田市)の経営権をそれぞれ取得。ITや新興企業の経営参画の動きが相次いでいる。メルカリは鹿島を舞台にサッカーだけでなく地域も巻き込んだ壮大な実験に取り組む。小泉文明会長が描く未来を聞く。


瀧口:今日の日経STARTUP Xは特別企画です。今回は茨城県鹿嶋市にあるカシマサッカースタジアムにやってきました。いつもはオフィスからお届けしておりますが、今日は特別にスタジアムからお届けします。

村山:広いところで気持ちがいいですね。

瀧口:しかも大型ビジョンに「日経STARTUP X」のロゴまで付けていただいて。

村山:おそらく日経STARTUP X史上最大のロゴ表示ですよね。

瀧口:ありがとうございます。

瀧口:ではゲストのお二人をご紹介させていただきます。メルカリの会長で鹿島アントラーズFC代表取締役社長でいらっしゃる小泉文明さんです。よろしくお願いします。

小泉:よろしくお願いします。

瀧口:そして元サッカー選手で現在はアントラーズFCマーケティングダイレクターを務めていらっしゃる鈴木秀樹さんです。鈴木さん、よろしくお願いします。

鈴木:よろしくお願いします。

瀧口:今日はあいにくの雨ということで芝生の様子は見られないんですが、レアな様子が見られますね。あれは何をしているところなんでしょうか。

鈴木:今養生中ですね。気温が下がっているので。

瀧口:あのピンクのライトは何でしょうか。

鈴木:あれは太陽光と同じ成分の光を当てて成長を促進させている状況です。

瀧口:こういう所はなかなか見られないですから貴重ですね。

村山:ハイテクな感じがしますね。

瀧口:ではお二人にはこの後たっぷりお話を伺っていきます。よろしくお願いします

瀧口:さて改めてどうぞよろしくお願いします。村山さん、鹿島アントラーズと言えば国内三大タイトルだったりアジアチャンピオンズリーグ合わせて50リーグの中で最多優勝記録を持っている強豪チームですよね。

村山:代表的なチームですよね。

瀧口:そこの経営権をメルカリが昨年夏に取得したということで、これはかなり大きなニュースでしたよね。

村山:有名な者同士が一緒になるということですからそういう意味でもインパクトありましたし、逆にどういう化学反応が起きるのかなってみんなを期待させる組み合わせでもあるんじゃないかと思いますね。

瀧口:そのあたりもお話伺っていきたいと思います。まず小泉さんは昔から鹿島アントラーズというチームに思い入れを持たれていたと伺いましたが、最初の思い出というのは。

小泉:父が鹿嶋市の隣町出身で、子どもの頃からよくこの周辺に遊びに来ていたんですね。ちょうど中学校1年生の時にJリーグができて、初めてこのスタジアムに遊びに来たらすごく熱狂的で。それでファンになったことがきっかけですね。

瀧口:まさか自分がそのチームの経営をすることになるとは。

小泉:そうですね。いまだにそこはちょっと自分でもピンと来ていないというか、まだまだ実感ないですけれども。

瀧口:いつかそういうことができたらいいなという思いが漠然とあったんでしょうか。

小泉:そういうわけではないですけど、テクノロジーが進化していてエンターテイメントがテクノロジーと掛け算して大きな産業になっていくだろう、今後インターネットとの相性も良くなっていくだろうという中でいうと、サッカーをはじめとするスポーツのコンテンツは相性がいいなとは思っていたので、スポンサーシップの関係から今回のM&Aになったというのは、テクノロジーを追ってきた者としてはこうなったというのがある程度見えていた気がします。

瀧口:なるほど。そして鈴木さんですが、鈴木さんはアントラーズの前身だった住友金属工業時代に選手としてチームに入られたと伺っていますが、選手として活躍された後に経営の方に入られたと。

鈴木:そうですね。立ち上げから。

瀧口:ずっと鹿島のチームを支え続けていらっしゃったということですね。

鈴木:はい。年だけは。

瀧口:そんなことないです(笑)。どのようにチームの運営に関わってこられたんでしょうか。

鈴木:私自身はずっと事業畑ですから、チケットの販売からスポンサーなど、主に収入のところをずっとやってきています。

瀧口:そしてそんなお二人が出会われたお話を伺いたいんですけど、メルカリは2017年からアントラーズのスポンサーをされていたということですが、その頃からのお付き合いということでしょうか。

小泉:最初に私が柴崎岳選手と知り合う機会があって、試合見に来てくださいよと言われて来た時に初めてお会いさせていただきました。そこで「今後テクノロジーでフットボールももっと変わらなきゃいけないよね」ということで「何か面白いこと一緒に何かやりませんか?」ということになりました。僕らも会社を作って2、3年目くらいだったので、当時は女性がユーザーとして多かったので、男性ユーザーもしくは40、50代くらいのユーザーをしっかり獲得していきたいなと思っていて、ある意味アントラーズの持っているアセットと相性がいいなと思ったので、そこで一緒になることになりました。

瀧口:鈴木さんは最初に小泉さんに合われた時の印象はどうでしたか?

鈴木:いわゆるネット企業の社長さんって、カリスマ性があったり、強いものがあったりするイメージじゃないですか。それがまったく覆されて。

瀧口:覆されたんですか。

鈴木:人の話をよく聞けるし、ある意味リベラルだし、スポーツだけじゃなくいろいろなものを見ている。その時は割と衝撃的でした。

瀧口:なるほど。同じ目線で話せる相手だなと思われたということでしょうか。

鈴木:そうですね。プロスポーツの周辺環境がだんだん変わってきている中で、いわゆるメーカーがプロスポーツを支えていけるかどうかという疑問を実は僕も持っていて。その時に小泉さんの考え方と、将来はやはりこの業種だよねというところが握れたというところですね。

瀧口:それはこの2017年からスポンサーをされていて、2019年のタイミングに経営権を取得されたというのは、どういう背景があったんですか?

小泉:ずっとスポンサーとして話していく中で、DAZN(ダゾーン)さんが入ってきて、賞金であったりお金の面も変化があって、選手もヨーロッパに移籍があったり、サッカーを取り巻く環境の中でダイナミックな変化があって。今までの親会社であられた日本製鉄さんとの話の中で、私たちのような"toC"のサービスをやっている会社でありテクノロジーを持っている会社がやった方が、アントラーズの企業価値というか、今後発展していく上ではそれがベストだろうということで経営権を交代することになったんですね。

村山:プロ野球のチームを経営しているところはたくさんあるじゃないですか。そういう意味では野球もメルカリのユーザー層を広げていく意味では可能性があったのかなと思うんですが、そこでサッカーにしたのはグローバルで見るとやはりサッカーなのかなということからでしょうか。そこはいかがですか?

小泉:グローバル目線は当然ありましたね。コンテンツとしては若い人達も野球と同じように多くの人が見ているコンテンツだし、今回サイバーエージェントさんも町田ゼルビアを買収したり、かなりネット企業がサッカーに増えてきてはいますので。テクノロジー系にいるとエンターテイメントであるとか、リアルなビジネスがテクノロジーでかなり変わってくるんじゃないかなと。

地域に根ざしているJリーグというのはある意味ローカルなところで、フットボールビジネスではない地域に根差したビジネス、これをテクノロジーで変えていこうというと、サッカーチームが持っている地域との連携というのはむしろ強いんじゃないかなと思います。

瀧口:小泉さんは今までずっとIT企業をやって来られて、スポーツビジネスというのはもちろん初めてだと思うんですけど、入ってみて驚いたことや最初の印象はいかがでしたか?

小泉:そういう意味では2年間スポンサーをやっていたので驚いたことはないんですけど、一方で仕事の進め方がネット企業のようにオンラインで完結するものと、サッカーチームの選手もいて地域経済もあってというところでケアするところが全然違ったり、シーズンも1年を通してPDCAを回していくのと、ネット企業のように1日でPDCA回すみたいなところとはまた違うので。

ただ時間軸みたいなものは違うと思うんですけど、一方でファンやコンシューマーがいて、きちんと楽しんでいただいて、お金を頂戴して、データを持って経営していくという意味でいうとやっていることはそれほど変わらないなと思います。

瀧口:"toC"というところでは。

小泉:アントラーズというといろんなことをやってきていますし、そこはそれほど変わらないんじゃないかなと思います。

瀧口:鈴木さんが今まで作ってきたアントラーズについては、小泉さんはどう思われますか?

小泉:めちゃめちゃベンチャー企業だと思いますね。やはりこの鹿嶋市って6万7、8千人しかいないんですよね。これは4万人入るスタジアムなんですけど、年間46万人とか来るわけです。ある意味J1に入るのも無理だと言われたところをスタジアムを強引に作って、"鹿島の奇跡"と言われているんですけど。何もないところから作ってきたところがあって、ある意味すごくベンチャーマインドがあってチャレンジしているクラブだなと思っています。

瀧口:ちなみにヴィッセル神戸の神戸市は約人口150万人。浦和レッズのさいたま市は約130万人と言う中で6、7万人の中でここまで作ってこられたというのはいろんな工夫があったと思うんですけど、一番鈴木さんが注力されてこられたのはどういう部分ですか?

鈴木:サッカーの場合は半径30kmでマーケットを計算するんです。そうすると鹿島の場合は約80万人弱。地域で言うと千葉県が半分くらい入ってしまう。面積で言うと半分太平洋が入ってしまう。

瀧口:半分太平洋なんですね。

小泉:魚入れると結構いるんですけどね(笑)。

鈴木:さっきの理論で言うと我々はこの180万人弱のマーケットでこの4万人の箱をどう転がしていくかという議論をしなくてはいけない中で、一番多いところで2200万人くらいいるわけです、東京、埼玉のクラブは。そことどう競争していくかというと、やはりマーケット以外からどうお客さんを運んでくるかという作業が必要なので、ですから割と早くから回していかなければできなかったという理由があったんですね。ですからベンチャーみたいだと言われると、そういうことをしてこないと支えてこれなかった背景があります。

瀧口:スタジアムの中にもいろいろな工夫が。温泉があるんですよね。ミスト浴が受けられる施設があって。

鈴木:さっきの理屈で言うと多くのクラブは入場料収入をベースにスポンサーやグッズを売ったりすることで成り立っているんですけど、マーケットが小さい分それだけだと不安なのでスタジアムの経営権を取ってスタジアムでどう収益を上げていくかというところにいちはやく目をつけた。法律が変わってから我々がスタジアムの管理権を取得することに参入して、そうするとフットボールのファンとフットボール以外のファン、その両方で経営を支えていくという4本の足でフットボールと地域に根差したビジネスをやっていきましょうということで進めてきたので、必然的にスタジアムのノンフットボールビジネスと言うんですが、日常的に地域の人たちとビジネスとするというところが生まれてきたんです。

瀧口:なるほど。フットボールビジネスだけですと1位なのか2位なのか3位なのかというだけで賞金が違うと伺いましたが、かなり売上に振り幅が出てしまいますよね。

小泉:賞金や移籍金みたいなフットボールのところは少しボラティリティがあるので、地域のところで足腰を強くしていこうと。なので湯治施設があったりボルダリングがあったりスポーツ施設があったりクリニックがあったり、その周辺になるべくサッカーが無い日も来ていただいて、活動していただくという工夫をしている感じですね。

瀧口:それを初期の頃から考えていたと。

鈴木:と言うよりも、それをやらないと明日にでもつぶれてしまうだろうという危機感ですね。

瀧口:それがベンチャーマインドだと。

小泉:そうですね。

瀧口:共感して意気投合されたのかなという気がしますね。

小泉:工夫をすごくしてきている、知恵を絞ってきているというところがあるので、僕らが新しいチャレンジしようという話を社内でしていても基本的にみんなポジティブなんですよね。一般的にそういう新しいチャレンジをしようとすると、それをやらなくてもどうせ売上は変わらないよっていう感じだと思うんですけど、秀樹さんをはじめアントラーズのメンバーと話すと新しいことに対するストレスがあまりないというか、非常に前向きにやってもらえるんですね。

村山:鈴木さんも面白いこと大好き人間みたいな感じでしょうから、そういう意味では波長も合うんでしょうし、相乗効果でますますチャレンジしていこうという風土になっていくんじゃないでしょうかね。

小泉:そうですね。今社内にSlackを入れて、結構順応早かったですよね。僕Slackは正直大丈夫かなって結構ドキドキしながら導入したんですけど、ものの1、2週間で皆ガンガン使っていて、むしろ便利でメールに戻れないよね、みたいな感じになってきているので。

瀧口:私たちの番組にもSlack入れたいですよね。連絡がメールなので。

鈴木:そういうマインドがある中で製造業の関係会社にいたものですから、意思決定プロセスの段階がすごいわけです。むしろそっちにストレスを感じていた社員が多かったのかなと。情報共有とか意思決定のプロセスの階層が少なくなることに関してみんな飢えていたという感じですよね。

瀧口:「待ってました!」という感じなんでしょうかね。あと小泉さんのツイッターで稟議書をデジタル化したと出ていましたが。

小泉:紙の稟議だとサッカーって遠征多いので、遠征に行っちゃってそこで稟議が止まってしまうと経営面だと1、2日の遅れが非常にロスしてしまうので、いろいろな紙をデジタル化したりしています。なるべく小さいチャレンジができるような、ある意味ネット企業っぽい考え方で運営しているので、徐々にチャレンジの数を増やしていって。ある意味このスタジアムとかファンビジネスの中でもどうしてもやはり既存の仕組みが大事であるんですけど、新しいことしないとファンも飽きちゃうと思うんですよ。新しいことたくさんしていこうというところで大きな変化が見えてくるんじゃないかなと思っています。

鈴木:名刺管理ソフトなんて2年間議論して入れるべきだってみんな言うわけですよ。でも最後計算していくとちょっと高いから駄目だよねって二の足を踏んでいたんですけど、経営統合したら3日後に入ってました。これメルカリじゃ当たり前でしょって。議論の余地なく入るでしょってそんな感じでしたね。

瀧口:メルカリでも社内のカルチャーを作られることに長けていらっしゃるなと。「Go Bold」だったり、性善説に基づいた人事だったり。アントラーズでは今までの伝統を守りながらだと思うんですけど、そういう意味ではどう見ていらっしゃいますか?

小泉:そういう意味では非常にカルチャーも似ていて。伝統を守るというところは当然あるんですけど、ベンチャーマインドのようにチャレンジしてきた歴史があるので、比較的アントラーズとメルカリのカルチャーは似ているなと思っています。なので逆に言うとその中でさらにチャレンジできるその背中をどう押してあげられるかというところだと思っています。答えは社員が持っていると思うので、彼らが表現しやすいような仕組みやシステムを入れていって、今ある制限を取っ払っていきながらもっとベンチャー企業っぽくする感じですね(笑)。

瀧口:そこが最後決定できなくて止まっていたというところもあったということですよね。

鈴木:でも2年間のスポンサー期間、ある意味お見合い期間だと思っているんですが、そこがあったのがすごく大きくて。お互いのカルチャーを理解する時間があったんですね。それがなくてじゃあSlack入れましょう、となったらもう少し拒否反応があったのかなという気もしますね。

瀧口:スタジアムの中もメルペイでキャッシュレス化があったり。実際反応はどう感じていらっしゃいますか?

小泉:徐々にキャッシュレス化も進んできていまして、そうは言ってもキャッシュレス使ったこと無い人もまだまだいらっしゃいますので、メルペイスタッフが設定しますよ、というスペースを設けたらそこが大行列になっていて。設定してあげると便利だねと感じて使ってくれたりしますし。

事実かなり利便性を感じてキャッシュレスの比率もどんどん上がってきていまして、私たちドコモさんもスポンサーなので、メルペイとdポイントはどこでも使えるようになってきて、チケットもQRコードになってきていますし、そういうデータがたまっていって次に来場していただいた時にお得な情報があったり。1回来た人が2回3回来たくなるような仕組みを作っていきたいと思っています。

村山:スタジアムというリアルな場でいろいろな決済など新しいものを試していくのも一つの方向でしょうし、いろいろなシナジーも出てくるでしょうけど、そのあたりは小泉さん、始まったばかりではありますけど、見えてきた手ごたえみたいなものはありますか?

小泉:おそらくこの2月末の新シーズンスタート後にスタジアムに来ていただくと、もっといろいろ変化しているんじゃないかと思いますね。

村山:仕込まれていることがいろいろあるんですね。

小泉:仕込んでます。そこはやはり僕らももっとチャレンジしていくので、たぶん今までのアントラーズファンからするとだいぶ今シーズン以降変わったなと思っていただけるところが多いんじゃないかと思いますね。キャッシュレスだけじゃなくて。

村山:楽しみですね。

(C)Paravi

アントラーズ買収、メルカリが企む未来都市鹿島
2020.01.31

「スタートアップ」が未来を創る――。話題のスタートアップや、イノベーティブな起業家をいち早く取り上げる「ビジネスにスグ効く」経済トークショー『日経STARTUP X』。PlusParaviでもテキストコンテンツとしてお届けする。

今、世界でイノベーションの起点として注目されているのが、都市や地域とテクノロジーとの組み合わせだ。鹿島アントラーズの経営権取得を契機に、メルカリはテクノロジーを駆使して、鹿島と言う地域の抱える課題に取り組む考えだ。新たなイノベーションやビジネスが、カシマサッカースタジアムから生まれようとしている。


瀧口:今回の日経スタートアップXは、前回に引き続き茨城県のカシマサッカースタジアムからお届けします。引き続き村山恵一さん、よろしくお願いします。

村山:よろしくお願いします。

瀧口:そしてゲストのお二人をご紹介させていただきます。メルカリの会長で鹿島アントラーズFC社長でいらっしゃる小泉文明さん、そして鹿島アントラーズFCマーケティングダイレクターの鈴木秀樹さんです。後半もよろしくお願いします。

小泉・鈴木:よろしくお願いします。

瀧口:さて、今回はメルカリがテクノロジーを使い、地域と一体となってどういうことをしていくのか、どう変わっていくのかというところを伺っていきたいと思います。具体的にテクノロジーを使った実証実験というのはこれまでどういったものをされて、今後はどのような計画があるんでしょうか。

小泉:地域の課題は多々あると思っていまして、例えば交通の課題。渋滞もそうですし、将来的には信号をネットワーク化していったりしたいと思っています。もちろん警察や県とも精査が必要ですが。交通の課題についてはアントラーズの試合がある日にかなり渋滞してしまうので、その日をめがけていろいろな実証実験をしたり、ライドシェア(相乗り)みたいなものも当然あると思っています。

それ以外にも地域の課題というのは人口減少もそうですよね。テクノロジーは関係ないですけど、例えば出会いが少ないと言われている中でサッカーの試合をうまく使ったり、地域の課題に対してフットボールチームやテクノロジーがどう応えていくのかというところにビジネスのチャンスがあるんじゃないかと思っています。

瀧口:やはり場所柄遠方から来られる方も多いですよね。そういった特性が他のスタジアムとも違う部分も多いんでしょうか。

鈴木:それは大きく違いますね。約50%くらい首都圏から観戦に来ている方がいるので、それだけ時間とお金がかかっているわけです。勝ち負けもすごく大事ですけど、往復のストレスをどう軽減するか。それ以上にスタジアムの楽しみをどう提供するかということはすごく大事なことかと思います。

瀧口:サッカー好きの友人に聞いたんですけど、東京駅からカシマサッカースタジアムまでバスが出るようになって本当に楽になったと。しかもそのバスはビジネスマンの方も利用できて、サッカーファン以外の方にもすごく役立っているという話を聞きました。

鈴木:今「東京―鹿島間」は鉄道より高速バスが主流になってきて、それが試合日には増便されるんです。去年で言うと最大30本くらい増便しているという感じです。

瀧口:そういった改革の部分にもっとテクノロジーが入ってくるということですよね。

小泉:そうですね。逆にそこで1時間半から2時間くらいバスに乗っているので、Wi-Fiを積んだりスポンサーさんと一緒に何かコンテンツを提供することも可能だと思いますし、地域で言えばバスや自家用車で東京からここまでたくさんの方が来てくださっているので、サッカーの試合の前後にどうやって街に人を流していくか。

街の飲食やコンテンツを楽しんでいただくような情報を僕らがどう提供するのか、せっかく交流人口でたくさんの人が(茨城・)鹿嶋市に来てくださっているので、どうやって地域と触れ合ってお金を落としていただけるか考えて、また来たくなるようなものを作っていきたいと思います。

村山:地域にそれぞれ固有のニーズがあったり課題があったり、それをテクノロジーでどういう風に解決していくのかという切り口からいろんなイノベーションが起こるというのが世界各地で起こっていると思うんですよね。

例えば私が注目しているものに「mercari R4D」という研究開発の組織がありますけど、人工知能やブロックチェーンなどの技術があり、また地域に根差したアントラーズというある意味の「場」も持たれている。この掛け算というのは結構世界の大きいトレンドにもはまっているし、今お話しいただいたようないろいろなシナジーが出そろうことはたくさんあると思うので、いろいろ期待できそうですよね。

小泉:交通課題はAIと相性がいいだろうなと思っています。あとはR4Dの中でもVRやARをやっているメンバーがいるので、視聴体験をどうやってリッチにしていくかという面では、アントラーズやコンテンツの掛け算が非常にいいと思っています。スタジアムの中での視聴もそうですし、来ない人たちが家やパブリックビューイングを通して、どうやってスタジアムに来ているような臨場感を楽しめるのか。そこで楽しんでいただいて次はスタジアムに行ってみようというようなこともあると思うので、テクノロジーが入ることで今までのファンの楽しみ方をアップデートしたり、今までファンじゃなかった人を取り込んだり、そういうことをやっていきたいと思っています。

瀧口:鈴木さんが一番注目していらっしゃるテクノロジーはどの分野ですか?

鈴木:やはり地域課題って医療や健康、教育や環境などたくさんあるわけですよね。我々がプロサッカーを28年前にここでスタートした時に地域の人たちに非日常をどう体験させるかということでスタートしたんですけど、今Jリーグ全体で見ると56のクラブがそれぞれの地域の中で、スポーツを核としてどうやってまちづくりをするかと言うフェーズに入ってきている。

音楽でもスポーツでもエンターテイメントビジネスの顧客への接し方というのは、10年後の顧客をどう見るかということに進化している。我々が地域の皆さんのためにスタジアムで見せられることというのは、10年後の顧客のために今何を始めているかというのを見せられる場所なので、さっき言ったようなテクノロジーのスタートのところをきちんと理解していかなくてはいけない。

新しい技術がいきなり地域に入ってくると拒否反応から始まってしまうので、まずその体験の場になることでスタジアムが大きな役割を果たせるのかなという気がしています。ペイメントもそうですよね。地元の人がものすごい構えてしまうことが、ここで簡単に使えるようになると地域に広がっていく気がします。

瀧口:たしかに鹿島というチームが好きだからやってみようという、楽しいところから入るのはいいですよね。

小泉:スタジアムや地域をPoC(概念実証)の場として大企業が使っていくという中で、新しいスポンサーさんを獲得するとかですね。今NTTドコモさんがスポンサーで、例えば5Gを使ってスタジアムでどういうことができるかということを僕ら提供しているわけなんですけど、そういった形でスタジアムを一緒に運営していく中で何か実証実験が行われていくような場を僕らとしては提供していきたいと思いますし、チームがあると、みんながアントラーズのためならやろうかと、地域の理解やストレスが一気にサッカーチームがあることで下がるので、それを僕らが進めていきたいと思っています。

瀧口:何事も楽しいというところから入る、提供できるのはサッカーチームがあるからということですね。

鈴木:自治体の距離感があると思うので、アントラーズが中に入ることによって自治体の理解度が違う。例えば鹿嶋市と連携協定を結んで将来テクノロジーを使ったまちづくりをどうしましょうかということをスタートしていると、それが近隣に広がっていく。良い事例が見せられるといいなと思いますね。

小泉:スタートアップやテック業界にとってはどの自治体に話していいかわからない、自治体もどの技術を使っていいかわからないというミスマッチが起こるので、そこをアントラーズやメルカリが入ることによってマッチングさせるようなハブになりたいと思っています。それがメルカリで応えられるものもあれば、メルカリで応えられないけどあそこのベンチャーはこの技術があるとわかることもある。そこをつないであげることによって本当にシナジーが生まれやすいプラットフォームを作ってあげられると、まちづくりも一気に進むんじゃないかと思いますね。

瀧口:スタートアップもオンライン上が多かったと思うんですけど、OMO(=Online Merges with Offline)でオンラインとオフラインが混ざりあうというところで言うと、実証実験だったりリアルの場でいかに試していくかということが大事ですよね。そうするとやはりこういう場が欲しいですね。

小泉:この前もecbo cloak(エクボクローク)というスタートアップがスタジアムに入りまして。彼らは手荷物を空いたスペースを使って処理するというサービスなんですが、この前カシマサッカースタジアムでやったらかなりニーズが強くて。スタートアップを僕らもどんどん率先して使っていこうと思うし、そういう成功事例ができるとスタートアップの中でもカシマサッカースタジアムで実験できるらしいよとなっていく。僕らもある意味会社作って6年半のスタートアップであると思うので、次のスタートアップがうまく出るような輪を作っていきたいと思いますね。

瀧口:メルカリが他のスタートアップを引き上げていくようなエコシステムの中心になっていくわけですね。

小泉:それがスタジアムであればスポーツの観戦の仕方、映像であるとかデータであるとかいろいろなスタートアップがあると思うので、僕らとしても地域やチームとどうやって掛け算をさせるのかということで、ビジネスチャンスがあればそこを取り込んでいきたいと思っています。

村山:ここの場所がある種今までにないインキュベーション施設というか、いろいろなテクノロジーを試してみたり、いろんなデータが集められて分析して新しいサービスが試せたりする場になる。ある種スタジアムがリアルな場というのもそうですし、いろいろな面白いことをやりたい人が集まっているわけですし、そういうところに起業家の方もジョインしたり、自治体の人も知恵を出さないといけない時代ですので、ひとつのモデルケースになっている感じですね。東京の渋谷区というのもいいんですけど、こういう地にこういうアプローチの仕方があったのか、というのは結構発見かなと思いますね。

小泉:スマートシティというと福岡などの政令指定都市のサイズでやりがちではあるんですけど、あれは特別だと思うんですね。鹿島地域は今ホームタウンだけで20万人後半くらいですけど、基本的には高齢化も進んでいることを考えると鹿島地域のような20万~30万人くらいを基礎的な人数として、この地域が実証実験としてワークすると日本全国に鹿島モデルを出しやすいんじゃないかと思うんですよね。福岡のモデル見てもちょっとうちでは無理だな、という感じだと思うので。

村山:福岡は少しハードルが高いですよね。

小泉:違う形のスマートシティというか、生活のテクノロジーの実験の場にしていきたいという思いはあります。

村山:結構地に足のついたスマートシティというか、従来のスマートシティのイメージとはちょっと違うイメージでひな形となりうると思いますし、むしろそういう地域の方が日本全体で見ると圧倒的に多いと思うので、これはぜひ形をどんどん具体化してほしいと思いますね。

瀧口:スマートシティというとすごく未来都市的な遠い感じがしますよね。それが鹿島で。

村山:鹿島もある意味未来都市というか、未来感ただよっているわけですけれども(笑)。スタート地点というと福岡などの大都市とは違うアプローチが日本にはより求められているような気がしますから。

瀧口:サイズとして真似しやすいですよね。そして鹿島のチームが今後どう発展していくかというビジョンについてもお伺いしたいんですが、どうでしょうか。世界ではマンチェスター・ユナイテッドFC(イングランド)やレアル・マドリード(スペイン)などのチームがありますけど。

小泉:僕らもアジアでチャンピオンになりまして、「次は世界だ」というところでいうとチームの強化のためにはお金もそうですし、いろいろチャレンジが必要で。チームの強化と事業というこの両輪をうまくどう回せるかというところだと思うんですよね。そもそも稼がないと強化できないので。稼いで強化して成績を上げて、多くの方に来てもらって、スポンサー収入があって事業が太くなってチームに還元していくというこのサイクルをどれだけ回せるかという風に思っております。

私たち今売上高100億円というのを一つの目標にしてますけど、世界を見ると200億、300億というもっと大きなクラブがあるわけで、そこにステップアップしていかなくてはと思いますが。そこにはやはりテック企業らしくテクノロジーをどう使うかで10%、20%の成長をどう持っていくか。ノンフットボールビジネスをやることによって売上を作るか。変な話アントラーズがフリマアプリやってもいいわけじゃないですか。アプリビジネスをやってもいいわけであって。ノンフットボールビジネスもしっかり作っていくことによって、ちゃんと売り上げを作ればチームの強化に還元できると思っていて。そこをどう回せるかですね。

瀧口:例えばマンチェスター・ユナイテッドFCは中国でも1億人以上のファンがいると聞いたことがありますが、そういったアジアでの人気だったり、どの地域を特に強化したいというのはありますか?

鈴木:デジタルビジネスの中では先駆者としてアメリカですよね。スポーツをデジタルでどうマネタイズしていくか。我々は今ニューヨークに拠点を持って4年目になります。スタジアムのWi-Fi化やコンテンツ化を新しい情報を持ってやっているんですけど、ASEANで考えると圧倒的なサッカーの支持層がいるのですごく大事だと思っています。

「toC」の手前に「toB」があるべきだと思っているので去年シンガポールに拠点を持ちました。それは我々のステークホルダーがアジアに出ていく時に、我々が何をお手伝いできるかという窓口業務をきちんとやろうということで。その裏付けとして我々が常にアジアや世界に挑戦するチームでなければならないので、そのためには国内できちんと数十億円得るための成績が必要なんですね。

そこの挑戦権を必ず取って、常にアジアで戦い世界に立ち向かうというスタイルがなければそこを補完できない。チーム力としてはそこを目指す。そこにビジネスがのっかってくるというスタイルをどう作るのか、という気がしていますね。

瀧口:小泉さんは今までメルカリの社長として、プロダクトそのものに関してはいろいろ言われてきたと思うんですけど、オーナーという立場だとやはり監督もいらっしゃるわけで、その辺りはどうでしょう。

小泉:当然監督や強化部がいるので、彼らの意見は常にリスペクトしながらやっています。逆に僕が常に思っているのは強化部や監督がこういう強化をしたいという時に、そこにちゃんとお金が張れる経営にしていかなきゃいけないと思っているんです。僕らとしてはしっかりとお客様を楽しませて、スポンサーにビジネスしていただく。

スポンサーも今までの広告を出すからお金をくださいというモデルではなく、僕らが課題解決のパートナーになってちゃんとソリューションを提供できるパートナーシップ型のセールスに変えていただきながら、もしかしたらモデルも広告料くださいからコンサルティング費をくださいであるとか、違うビジネスモデルを開発していきながら収益を上げていきたいと思っています。これまでのサッカークラブであるようなビジネスモデルじゃないものはこれからできてくると思っていますね。

瀧口:あと「日経STARTUP X」ということでメルカリの話も少し伺いたいんですが、メルカリの会長として対外的な部分に注力されると伺っておりますが、具体的には経団連など、そういうところの活動になってくるんでしょうか。

小泉:なんだかいろいろやってるんですけど、そういう財界活動もあればPRも営業担当もしてますし、メルペイの開拓も実は結構やっていて。いろいろなところで人脈ができたところにメルペイを入れてください、という感じですね。昨日もある大きい小売りの社長さんに提案しに行ったり。そういう形で対外的な方に時間を使わせていただいてます。

この前もメルペイのセールスに行ったら、「小泉さんが来るからアントラーズのスポンサーセールスかと思ってました」って言われて。あ、両方すればよかったな、失敗したなって思ったんですけど(笑)。それくらい二つの名刺を持ってやっていくというのが僕の今の時間の使い方ですね。

瀧口:あとは鹿島アントラーズのオーナーとして見える違う景色が、メルペイやメルカリの事業にいい形で還元されていきそうですね。

小泉:やはりリアルなビジネスの難しさと言う面で非常に勉強になりますね。例えばキャッシュレスについてはスタジアムの運営者とも親しいので、「キャッシュレスこれじゃまずいよね」という面も見えてくるんです。立場が違って見えてくるところもたくさんあるので、それはメルペイチームに指示することも多いですね。立場が変わって見えてくることも非常にいいなと思います。

瀧口:シナジーが生まれているということですね。

村山:やはりメルカリという日本を代表する企業、そしてアントラーズという日本で有名なスポーツチームのコンビネーションじゃないですか。スマートシティの新しいモデルであったり、ビジネスモデルであったり、新しいモデルを見せてもらえるという期待を抱かせるお話をうかがえたと思いますし、その辺りすごく期待していきたいですね。

瀧口:新しいひな形を作っていかれるんじゃないかと。

村山:これだったらうちも真似したいというチームや地域が出てきたり、そういう広がり方があったらいいと思いますし、そういうポテンシャルのある組み合わせだと思いますね。

瀧口:非常に楽しみですね。

(C)Paravi

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Author:Fundamentalism
鹿島愛。
狂おしいほどの愛。
深い愛。
我が鹿島アントラーズが正義の名のもとに勝利を重ねますように。

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