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大迫と興梠

興梠ではなく大迫が起用される理由
鹿島・オリヴェイラ監督の真意とは

2009年4月24日(金)


ACLでは3試合連続ゴールを決めている大迫。彼の活躍でFW陣の競争は激化している【写真は共同】
 4月22日、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)第4戦を戦った鹿島アントラーズは、ホームのカシマスタジアムにシンガポールのアームド・フォーシズ(A・フォーシーズ)を迎え、5−0の大勝を収めた。
 自陣で守備を固める相手に対し、マルキーニョス、大迫勇也、興梠慎三と3人のFWを同時起用する3トップを採用。攻撃的な姿勢を貫き、興梠が2ゴール、大迫が1ゴールの活躍を見せた。だが、鹿島本来の布陣は伝統の4−4−2。FWの枠は2つしかない。この試合の前まで6試合連続でエースのマルキーニョスと組んでいたのは、日本代表にも名を連ねるようになった興梠ではなく、高卒ルーキーの大迫だった。そこにはオリヴェイラ監督のある意図が隠されていた。

■スタメンから外れた興梠が一言「心が折れました……」
 最初は何をしているのか分からなかった。鹿島のクラブハウスの駐車場で囲み取材をするため選手たちを待っていると、姿を現した興梠は、胸の前で棒状のものを握る構えをしたあと、何度も何度もそれがポキリと折れるしぐさをした。
「心が折れました……」

 3月11日、韓国で行われたACLの初戦で水原三星ブルーウィングスに1−4の大敗。帰国してすぐの15日にはJリーグ第2節のアウエーでのアルビレックス新潟戦に1−2で敗れ、公式戦2連敗。中2日で行われる18日の上海申花とのACL第2戦は、ホームでの試合ということもあり絶対に落とせない試合だった。その試合前々日、大一番での先発を告げられたのは大迫。興梠は昨シーズン途中から奪い取ったスタメンの座を明け渡し、気持ちは落ち込んでいた。

 敗れた2試合、興梠のパフォーマンスは確かによくなかった。前線でボールを収めることができず、ドリブルを仕掛けてもすぐに奪われるなど、空回りしている様子がうかがえた。特に新潟戦では、淡泊なプレーを連発。0−2と新潟にリードを許した後、オリヴェイラ監督は、前半45分だけで興梠と新井場徹をベンチに下げてしまった。
 試合後、この交代について問われた監督は期待に応えていないことを理由に挙げた。
「交代させられた選手が期待されたパフォーマンスができていないため、交代せざるを得ないということでもあり、また、スコア的に0−2というビハインドを考えればショック療法をとらなければならなかった」

 そして迎えた3月18日の上海申花戦、小笠原満男の先発復帰もあり攻撃の組み立てができるようになった鹿島は、2−0で勝利を収め連敗を止めた。先発に大抜擢(ばってき)された大迫も、1得点1アシストとすべての得点に絡む大活躍。これ以後、鹿島の2トップはマルキーニョスと大迫の2人となった。

 ただ大迫の活躍に、興梠も黙ってはいなかった。3月22日のJリーグ第3節、ホームでのサンフレッチェ広島戦で大迫に代わって登場すると、ロスタイムに決勝点を決める。さらに4月4日のJリーグ第4節の京都サンガF.C.戦でも、途中出場からカシマスタジアムを熱狂させた。0−1のビハインドの状況から84分に同点弾をアシスト。さらに89分には野沢拓也の強烈なミドルシュートの跳ね返りを押し込み逆転ゴールを決め、チームを苦境から救った。
 2試合連続で文句のつけようのない活躍を見せた興梠だったが、監督は先発を動かさなかった。すると今度は大迫が活躍。4月7日のACL第3戦のA・フォーシーズ戦、4月12日のJリーグ第5節のFC東京戦で、2戦連発のゴールを決めチームを勝利に導いた。

■レギュラーFWとしての自覚が芽生えてきた大迫
 余談かもしれないが、このころから大迫の取材対応は大きな変化を見せていた。うつむき加減に受け答えしていた様子もなくなり、態度は堂々としたものに変わった。回答も「次、頑張ります」という簡単なものではなく、自分の意図を言葉で表現するようになり、良いプレーをした試合でも「アントラーズでは通用しない」と、さらに上を見ていた。

 それだけに、4月18日の横浜F・マリノス戦は悔しかったようだ。試合の翌々日、「自分のプレーを出せなかったのが残念です」とコメント。0−0のスコアレスドローで終わった試合で、大迫はいいところがないまま後半早々の54分に興梠と交代させられていた。相手DFには日本代表不動のセンターバック中澤佑二がいた。2人の勝負に誰もが期待を抱いたが、見せ場は少なかった。

「動き出しはだいぶよくなったと思います。ただ、それにこだわりすぎてゴールが遠くなった。サイドに流れるのも大事だけどFWなんで」(大迫)

 センターFWとして中央に構えていればパスが来た鹿児島城西高校時代とは違い、プロの世界ではパスを引き出す動きが要求される。さらに鹿島では、前線が流動的にポジションチェンジを繰り返すため、流れに乗りながらタイミングよく顔を出さないとパスをもらうことができない。大迫は、自分が出た試合の映像を必ず確認している。そうすることで急速に“鹿児島城西の大迫”から“鹿島の大迫”へ成長していた。ただ、課題はかなりの改善を見せていたが、まだまだ意識しないとできないレベル。意識したことでゴールが遠くなっていた。

■オリヴェイラ監督が興梠に求めるのはプレーレベルの継続性


スタメン落ちから奮起し、結果を出している興梠(右)【Photo:World Sport Group/Getty Images/アフロ】
 こうした流れを経て、先日のA・フォーシーズとの一戦では3人のFWがそろい踏みし、中央に構えた大迫が1得点、サイドをうまく使った興梠が2得点の活躍を見せたのである。一見すると、鹿島の監督を務めるオリヴェイラは、興梠よりも大迫を重用しているように見える。だが、監督の意図はそうではなかった。

 A・フォーシーズとの試合前日の公式練習で、オリヴェイラ監督に1つの質問をしてみた。「興梠をベンチに置くことで成長をうながしていたのではないのか?」というものだ。それに対し監督はうなずきながら、この問いだけには質問者の目を見て答えてくれた。

「新井場同様、調子を落としてしまったことがありました。ただ、新井場との大きな違いは彼がまだ若いということです。どうしても若い選手というのは波があります。調子が良いときも悪いときもあって、そこでチームの機能と効率が発揮できていなかったところがありました。また先ほども言いましたように、代わりに選手がいなければそうすることもできないのですが、素晴らしい能力を持った大迫がいるため、代えざるを得ない状況に追い込まれました。ただ、新井場同様、練習の姿勢は下を向かずに努力してきたので、わたしは非常に評価しています。そういった姿勢を年間を通して保てるかということ、継続性がポイントになるわけです。
 また、一時的にポジションを取りました。取ったら気が緩んでチームの機能と効率を発揮できなかったら逆戻りです。その継続性をいかにして保つかということが重要です。(中略)だから先発で出ている選手も、常に危機感を持っていると思うし、そういった危機感と建設的な競争意識がチーム全体の底上げにつながってくるわけです。いまでも若い選手が一生懸命に努力して狙っているということを感じています。気が緩まない1年間になればと考えています」


■興梠、大迫の2人を育てつつ結果も出す
“継続性”という言葉はオリヴェイラ監督が求める重要な要素だ。パク・チュホが起用されている理由もそこにある。どのポジションでも浮き沈みが少なく「計算できる選手」ということが、高く評価されているのだ。興梠は、これまでも高いポテンシャルを持ちながら、パフォーマンスがメンタル面に左右されることが大きく、安定したプレーを見せることができていなかった。だからこそ監督は、興梠が広島戦、京都戦と2試合連続でチームに勝ち点3をもたらす活躍を見せても、先発に戻そうとはしなかった。あえてベンチに置くことで、さらなる成長を促したわけである。
 代わりに出場した大迫は試合経験を積み、着々と成長を見せている。大迫が結果を出さなければ興梠の成長もなく、チームは結果を残せずに監督は非難を浴びる。しかし、結果的には2人が同時に成長し、しかも先発を入れ替えてからの戦績は6勝1分け。あらためて、オリヴェイラ監督の怖ろしさを感じる。

 A・フォーシーズ戦の後、ACLグループステージ最大の山場となる5月5日の水原三星戦を見据え、2人のFWは抱負を口にした。
 興梠が「水原戦(のプレー内容)でスタメンを外れたので借りを返したい。次はホームだから絶対に勝ちます」と強い気持ちを言葉にすれば、大迫も「水原の試合はベンチ外だった。悔しい思いがあるので試合に出られたら結果を出したい」と、貪欲(どんよく)な姿勢を見せた。

 日本を代表するFWを2人も育てながら、同時にチームの結果も求めていく。オリヴェイラ監督の壮大な計画はいまのところ順調に進んでいる。

<了>
田中滋


大迫は出場機会を与え経験を積ませる、興梠はサブに置き出場機会を飢えさせる。
大迫の連続スタメンに裏にはこうした理由があると田中氏は分析する。
実際に大迫は成長しつつあり、興梠は機会があればゴールチャンスに絡む。
意図は成功しておると言えよう。
二人の若きゴールハンターは確実に成長しており、相手への驚異となっておる。
更に控えるよよも田代も虎視眈々とポジション狙っておる。
この二人だけでなくFWの層の厚さが今季の特徴である。
昨季はFWが足りぬと嘆いておった事が懐かしい。
育てて勝つ。
我等のキーワードは実践されておる。
チーム内の競争意識が、成長を育み、そして結果に繋がっておるのである。
補強だけがチームを強くする手法ではないと言い切れるであろう。

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鹿島愛。
狂おしいほどの愛。
深い愛。
我が鹿島アントラーズが正義の名のもとに勝利を重ねますように。

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