ユダで安定
ラスト5試合で強かった
鹿島と大分の“安定装置”。
〜中田浩二と菊地直哉の貢献〜
シーズン終盤というのは、決勝トーナメントによく似ている。
優勝のために、残留のために、状況によっては1度も負けることが許されず、シーズン序盤とは比べ物にならないような重圧が襲い掛かってくる。前日本代表監督のイビチャ・オシムは、優勝が決まった浦和対鹿島を観戦後、「こういう緊張感のある試合を毎回できれば、日本サッカーはもっと強くなるだろう」と語った。
シーズン終盤の5連勝が鹿島3連覇達成の決め手となった。
では今季、Jリーグでシーズン終盤に強かったのはどのチームだろうか?
ラスト5試合、ラスト10試合の勝ち点で順位をつけてみると、次のようになる。
<ラスト5試合> 1位鹿島(15)、2位川崎(12)、3位大分(11)
<ラスト10試合> 1位川崎、ガンバ大阪(ともに21)、3位大分(20)
※ 括弧内は勝ち点
ここで注目したいのは、鹿島と大分だ。
鹿島は優勝したとはいえ、シーズン終盤にずっと強かったわけではない。24節から5連敗を喫して、大混乱に陥った。だが、29節の磐田戦(0−0)で引き分けると息を吹き返し、ラスト5試合を全勝。3連覇を達成したのだった。
守備的ボランチ・中田浩二の機知が鹿島を優勝に導いた。
そのV字回復の立役者になったのが、ボランチの中田浩二である。
シーズン終盤まで中田は控えメンバーにすぎなかったが、29節の磐田戦で先発出場すると、守備面ではDFライン前のスペースを消し、攻撃面ではボールを左右に散らして、自信を失っていたチームに落ち着きを与えた。
磐田戦の数日後、DF岩政はこう語った。
「連敗中は前と後ろが分断されていたんですが、浩二さんが割り切ってバランスを見てくれたことで、DFライン前に誰もいないという状況がなくなった。失点をゼロに抑えられるという安心感は大きいですよ。あと、浩二さんはショートパスを織り交ぜて攻撃のリズムを作った。その結果、変なボールの取られ方をしないので、守備でもリズムが生まれたんです」
中田本人も、「失点ゼロ」をキーワードにあげた。
「やっぱり磐田戦を失点ゼロに切り抜けられたことが大きかったと思います。あれでチームは自信を取り戻せた。連敗中は逃げのパスや、一発を狙ったパスが多かったですが、(磐田戦後は)相手の守備の穴を探しながら、余裕を持ってパスをまわせるようになった」
中田がいなかったら、おそらく鹿島は優勝を逃していたのではないだろうか。
菊地直哉による“オシム流”で大分は巻き返しを狙う。
一方、大分は菊地直哉が新しい風を吹き込んだ。
大分は菊地が初出場した25節から最終節(34節)まで、5勝5分と1度も負けなかった。シャムスカ監督時代の“借金”のせいで降格を免れることはできなかったが、ラスト10試合だけなら優勝争いに絡めるほどの好成績を残したのだ。
19節から大分の指揮を取ったポポビッチは、守備の選手にもパスの起点になることを求めるオシム流の後継者だ。菊地という守備のスペシャリストが加わったことで組織が安定し、さらにパスの出し手が後方に増えたことでポポビッチ・サッカーが表現されるようになった。特に32節に川崎に勝った試合は圧巻だった。
ひとつ残念なのは、大分の財政難でポポビッチの続投がなくなったこと。菊地が「ポポビッチ監督はDFにもパス出しを要求してくるのでおもしろい」と語るように、来季のJ2の目玉になる可能性があったのだが……。
それはさておき、この2人のプレースタイルを見れば、シーズン終盤に何が大切なのかが見えてくるだろう。
“負けたら終わり”のW杯で必要なのは守備の“安定装置”だ。
冒頭で触れたように、シーズン終盤というのは、チームによっては、負けたら終わりという決勝トーナメントになる。そういう状況では、まずは失点をゼロに抑えることが重要になるに違いない。だから、中田や菊地という守備の“安定装置”を持ったチームが、終盤に強かったのではないだろうか。
もし日本代表が2010年ワールドカップで上位を狙うのなら、攻撃ばかりに目を向けるのではなく、守備を安定させられる選手もメンバーに入れておくべきだろう。
(更新日:2009年12月22日)
木崎伸也
鹿島優勝の立役者にユダを推す木崎氏のコラムである。
特に目新しい情報も新たな切り口もない文章と言えよう。
無理矢理に日本代表と結びつけておるところも、媚を売っておるようで不愉快である。
とはいえ、ユダの活躍は周知の事実であるし、誰もが優勝の大貢献者として認めておるであろう。
当然、ユダの実力や実績を考慮すれば、この程度のことはたやすかったと思えるやも知れぬ。
しかしながら、言うこととやることは大きく違う。
そつなくこなしておるようで、実際に行うのはなかなか難儀である。
やはり、ユダだからこそ出来たと言わざるを得ない。
今季は負傷のため出遅れたが、来季は序盤から活躍してくれるものと信じておる。
そして、ユダにポジションを奪われた青木もレギュラー奪取に燃えておるであろう。
チーム内の競争がチームに活気をもたらす。
ポジション争いに勝利した、勝者だけがピッチに立っておるのである。
勝者のメンタリティは鹿島の伝統である。
来季もまた栄冠を手に入れたい。
そして、アジア、世界へと羽ばたくのだ。
鹿島と大分の“安定装置”。
〜中田浩二と菊地直哉の貢献〜
シーズン終盤というのは、決勝トーナメントによく似ている。
優勝のために、残留のために、状況によっては1度も負けることが許されず、シーズン序盤とは比べ物にならないような重圧が襲い掛かってくる。前日本代表監督のイビチャ・オシムは、優勝が決まった浦和対鹿島を観戦後、「こういう緊張感のある試合を毎回できれば、日本サッカーはもっと強くなるだろう」と語った。
シーズン終盤の5連勝が鹿島3連覇達成の決め手となった。
では今季、Jリーグでシーズン終盤に強かったのはどのチームだろうか?
ラスト5試合、ラスト10試合の勝ち点で順位をつけてみると、次のようになる。
<ラスト5試合> 1位鹿島(15)、2位川崎(12)、3位大分(11)
<ラスト10試合> 1位川崎、ガンバ大阪(ともに21)、3位大分(20)
※ 括弧内は勝ち点
ここで注目したいのは、鹿島と大分だ。
鹿島は優勝したとはいえ、シーズン終盤にずっと強かったわけではない。24節から5連敗を喫して、大混乱に陥った。だが、29節の磐田戦(0−0)で引き分けると息を吹き返し、ラスト5試合を全勝。3連覇を達成したのだった。
守備的ボランチ・中田浩二の機知が鹿島を優勝に導いた。
そのV字回復の立役者になったのが、ボランチの中田浩二である。
シーズン終盤まで中田は控えメンバーにすぎなかったが、29節の磐田戦で先発出場すると、守備面ではDFライン前のスペースを消し、攻撃面ではボールを左右に散らして、自信を失っていたチームに落ち着きを与えた。
磐田戦の数日後、DF岩政はこう語った。
「連敗中は前と後ろが分断されていたんですが、浩二さんが割り切ってバランスを見てくれたことで、DFライン前に誰もいないという状況がなくなった。失点をゼロに抑えられるという安心感は大きいですよ。あと、浩二さんはショートパスを織り交ぜて攻撃のリズムを作った。その結果、変なボールの取られ方をしないので、守備でもリズムが生まれたんです」
中田本人も、「失点ゼロ」をキーワードにあげた。
「やっぱり磐田戦を失点ゼロに切り抜けられたことが大きかったと思います。あれでチームは自信を取り戻せた。連敗中は逃げのパスや、一発を狙ったパスが多かったですが、(磐田戦後は)相手の守備の穴を探しながら、余裕を持ってパスをまわせるようになった」
中田がいなかったら、おそらく鹿島は優勝を逃していたのではないだろうか。
菊地直哉による“オシム流”で大分は巻き返しを狙う。
一方、大分は菊地直哉が新しい風を吹き込んだ。
大分は菊地が初出場した25節から最終節(34節)まで、5勝5分と1度も負けなかった。シャムスカ監督時代の“借金”のせいで降格を免れることはできなかったが、ラスト10試合だけなら優勝争いに絡めるほどの好成績を残したのだ。
19節から大分の指揮を取ったポポビッチは、守備の選手にもパスの起点になることを求めるオシム流の後継者だ。菊地という守備のスペシャリストが加わったことで組織が安定し、さらにパスの出し手が後方に増えたことでポポビッチ・サッカーが表現されるようになった。特に32節に川崎に勝った試合は圧巻だった。
ひとつ残念なのは、大分の財政難でポポビッチの続投がなくなったこと。菊地が「ポポビッチ監督はDFにもパス出しを要求してくるのでおもしろい」と語るように、来季のJ2の目玉になる可能性があったのだが……。
それはさておき、この2人のプレースタイルを見れば、シーズン終盤に何が大切なのかが見えてくるだろう。
“負けたら終わり”のW杯で必要なのは守備の“安定装置”だ。
冒頭で触れたように、シーズン終盤というのは、チームによっては、負けたら終わりという決勝トーナメントになる。そういう状況では、まずは失点をゼロに抑えることが重要になるに違いない。だから、中田や菊地という守備の“安定装置”を持ったチームが、終盤に強かったのではないだろうか。
もし日本代表が2010年ワールドカップで上位を狙うのなら、攻撃ばかりに目を向けるのではなく、守備を安定させられる選手もメンバーに入れておくべきだろう。
(更新日:2009年12月22日)
木崎伸也
鹿島優勝の立役者にユダを推す木崎氏のコラムである。
特に目新しい情報も新たな切り口もない文章と言えよう。
無理矢理に日本代表と結びつけておるところも、媚を売っておるようで不愉快である。
とはいえ、ユダの活躍は周知の事実であるし、誰もが優勝の大貢献者として認めておるであろう。
当然、ユダの実力や実績を考慮すれば、この程度のことはたやすかったと思えるやも知れぬ。
しかしながら、言うこととやることは大きく違う。
そつなくこなしておるようで、実際に行うのはなかなか難儀である。
やはり、ユダだからこそ出来たと言わざるを得ない。
今季は負傷のため出遅れたが、来季は序盤から活躍してくれるものと信じておる。
そして、ユダにポジションを奪われた青木もレギュラー奪取に燃えておるであろう。
チーム内の競争がチームに活気をもたらす。
ポジション争いに勝利した、勝者だけがピッチに立っておるのである。
勝者のメンタリティは鹿島の伝統である。
来季もまた栄冠を手に入れたい。
そして、アジア、世界へと羽ばたくのだ。