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鹿島のクラブ哲学を学ぶには二年の月日が必要

今こそ目を向けたい「18歳以降の仕上げの育成」
日本サッカー界の課題解決に向けた3つの提案

2011年11月8日(火)

■選手がプロ入りした段階で育成は終了か


ハーフナーは横浜FMで芽が出ず、J2クラブに期限付き移籍。甲府での活躍が認められ、今年ついに日本代表にまで上り詰めた【Getty Images】

 ハーフナー・マイク(甲府)が10月のワールドカップ予選・タジキスタン戦で活躍した際、多くのメディアが順風満帆ではない選手キャリア、特に福岡、鳥栖、甲府と3度のJ2移籍を経験した苦労話にスポットライトを当てた。確かに横浜FMユース出身のエリート選手として育ってきたハーフナーが、1度ならず2度も期限付き移籍をして、「ここで成功しなかったらサッカーをやめようと思った」というほどのドン底から這い上がってきたサクセスストーリーは人々の琴線に触れる。だが、その一方で、わたしは「そろそろサッカー界だけでもお涙ちょうだい物語からの脱却を図るべきでは?」と思う。

 現在、日本サッカー界が抱える最大の課題は、18歳以降の仕上げの育成ではないだろうか。日本においては高校卒業後の18歳、あるいは大学卒業後の22歳で、選手がプロ入りした段階で育成が終了したような空気がまん延している。プロ入りした後は選手次第。プロとして大成しなければ「本人の実力、努力が足りなかった」と認識され、その感覚はJリーグが発足して以降ほとんど変化がない。

 しかし、長年この部分に疑問を感じ、「18歳で育成が終わるわけではない」と訴え続けてきたのが大学サッカー界の指導者たち。特に、これまで永井謙佑(名古屋)や田代有三(鹿島)ら40人以上のJリーガーを輩出している福岡大学の乾眞寛監督は、Jリーグ開幕前年の1992年にバイエル・ミュンヘンのセカンドチームで1年間指導者研修を経験しており、ユース上がりのタレントがセカンドチームで揉まれ、実戦経験を積みながらトップチームで通用する選手に磨かれていく仕上げの育成を目の当たりにしている。その乾監督は帰国後のJリーグバブルの中で起きていた若手選手の大量解雇についてこう振り返る。

「当時のあるJクラブには、選手が60人ぐらいいて、高校生はみんなそのままJに上がりました。しかし、その後起きたことは20歳そこそこの選手の大量解雇です。何ら教育されず、プロとは何かを知らずに飛び込んで、切り捨てられる選手たち。でも、その層は日本のサッカー界でいくと明らかに『タレント』と呼ぶべきなのです。そうであったはずなんです。しかし、彼らを使わず、ゴミ箱に捨てる流れがあった。何とかしないといけないと思いました」

■J1の新人54名のうち24名がリーグ戦未出場

 2009年にサテライトリーグが廃止されたことで、現在はどのJクラブもサテライトチームを持っていない。財政的に厳しいクラブも多くなっているため、選手の保有人数はJ1平均28.2人に絞られている。さすがにかつてのような露骨な「若手選手の使いつぶし」現象は見られない。とはいえ、今季J1クラブに加入した新人選手54名のうち、第31節を終わった時点で24名の選手がリーグ戦未出場という現実がある。

 磐田の大卒3選手(山田大記、小林裕紀、金園英学)や、横浜FMの小野裕二(昨季からトップチーム所属)のようにルーキーイヤーでいきなり25試合以上の出場を果たしている主力選手もいるが、これはあくまでごく一部。さすがに22歳で「即戦力」として加入する大卒選手は、22名のうち16名がすでにリーグ戦出場を果たしているが、高卒新人のデビュー率は50%(9人/18人中)、ユース上がりの新人のデビュー率に至っては35.7%(5人/14人中)と低く、18歳でプロ入りした選手に公式戦に出場する環境がない問題は依然として残っている。

 スペインをはじめとする世界のサッカー、育成事情に精通している日本サッカー協会技術委員長の原博実氏は、6月10日のロンドン五輪アジア2次予選(対クウェート)のメンバー発表の席でこの問題についてこう言及している。

「課題は同じで、やはり試合をやれる環境、そこをもっと与えてあげるというか。例えば、クラブでも増えてきていますけど、J1で出られなければJ2に行って試合を重ねることで伸びると。選手にとっては練習ではなくて公式戦に出て、リーグ戦を重ねることで伸びる。それは関塚監督も僕も(考えが)一緒です。そういう環境を、どうやって日本の中で作るか。高校時代はJリーグに入った選手の方が上でも、大学に行って伸びる選手もいる。でも大学は大学で、だんだん上級生になるとなぜか伸びが止まってしまう。そのへんをどうしていくかは、今後の課題ではあると思います」

■バルセロナではトップチームの戦力になるまでが「育成期間」


バルセロナは育成に確固たる方針を持ち、カンテラからトップチームに次々と選手を送り込む。今季もクエンカ(写真)がデビューを果たした【Getty Images】

 ここからは18歳以降の仕上げの育成に向け、具体的な提案を行いたい。わたしが考える提案は以下の3つ。

1.育成の考え方を変える
2.期限付き移籍を積極的に利用する
3.代理人を活用する

 まずは「1.育成の考え方を変える」について。一般的に日本で育成というと、「選手を育てる」という解釈がなされ、どうしても特定のクラブや指導者が「あの選手を育てた」となりがちだ。しかし、世界のサッカー大国における育成で最も重視されるのは才能の発掘、要するにスカウトである。バルセロナのメッシやシャビを「育てた指導者」と紹介しているのは日本くらいで、スペインでは彼らを見つけてきたスカウトや、メッシを契約するため店にあった紙ナプキンで契約書を作ったカルロス・レシャックの逸話が取り上げられる。指導者にスポットライトが当たる場合は、「かかわった指導者」程度の紹介だ。

 さらに、スペインではトップデビューを飾ったくらいで「育成が終わった」とは考えられていない。バルセロナの育成が他クラブよりも優れているのはその部分で、トップチームの戦力として定着するまでを「育成期間」として明確に定義付け、ユースカテゴリーを卒業してからトップ定着まで3段階に分けた育成プロセスを作って大事に育てている。9月にバルセロナでカンテラ(下部組織)の取材を行った際、16歳の誕生日を迎える前の15歳でBチーム(スペイン2部)デビューを飾ったグリマルドについて「鮮烈なデビューでしたね」と育成ディレクターに感想を語ると、「デビューくらいで騒がないでほしい」と一蹴された。

 バルセロナはプロ入りはもちろんのこと、トップデビューを果たしたくらいで育成が終わったとは考えていない。対する日本ではプロ入りした段階ですでに育成完了の風潮がある。18歳でプロ入りした選手が本人の問題で大成しないケースももちろんあるのだろうが、いまだに高卒時にプロから声の掛からなかった大学生が即戦力としてプロ入りする現状、そして大卒選手がJで、現役の大学生がU−22日本代表で活躍する逆転現象が起きているということは育成の考え方、環境に問題があるということ。環境を即座に変えることは難しいかもしれないが、考え方はすぐにでも変えることができる。

■1年目からJ2クラブに期限付き移籍してもいい

 続いて「2.期限付き移籍を積極的に利用する」。ハーフナー・マイクのケースのみならず、今年、横浜FMから期限付きでJ2愛媛に移籍し、そこでの活躍が認められU−22日本代表にも選出された齋藤学のような若手選手は増加傾向にある。ただし、まだまだ期限付き移籍は「くすぶった状態からの脱却」を目的として使われているにすぎない。要するに、プロ入りから2年、3年と出場機会がなく、試合勘のないくすぶった状態になって初めて期限付き移籍を模索するケースが多い印象だ。J1強豪クラブともなれば、プロ入り3年未満の若手選手がレギュラーを獲得することはそうないのだから、思い切って1年目からJ2クラブに期限付き移籍するような選手が出てきてもいい。

 以前、鹿島アントラーズの鈴木満・強化部長に話を聞いた際、鹿島としてのクラブ哲学、やり方を理解してもらうためには2年程度必要で、期限付き移籍させるならそれを終えた選手という方針を説明された。昨季山形で経験を積んだ田代や増田誓志の例を見ても鹿島のブレない方針は見てとれるし、選手育成に関しても明確な哲学があるからこそ、柴崎岳や山村和也(流通経済大4年)のようなその年の補強の目玉選手が入団を決めているのだろう。

 ただし、一般的に選手は公式戦での試合経験を積んでこそ伸びる。Jクラブに「修行期間」の考えはあっていいが、その修業の場はあくまで公式戦という考えがあるべきだ。今季のJ1で期限付き移籍を最も活用しているのは、6名を他クラブにレンタルしている鹿島、G大阪、柏の3クラブ。6名ごとの年齢構成を見ると柏が最も若く、J2栃木に出している渡部博文以外の5選手は全員21歳以下。シーズン途中の6月にGK川浪吾郎を岐阜に出している点から見ても、柏の期限付き移籍の使い方がほかのJクラブとは少し異なることが分かる。

■プレーヤーズファーストの原則に立ち返る


将来性十分の清武には海外クラブも興味を示している。欧州トップリーグに挑戦する日は近いか【Getty Images】

 最後に「3.代理人を活用する」について。Jリーグでは2年前から新しいルールが採用され、契約満了の選手は移籍金ゼロで移籍できることになった。そのルール変更をきっかけに代理人と契約する選手が激増し、数年後には代理人のいないJリーガーの方が珍しくなっているとも言われている。しかし、代理人と契約するタイミングがプロ入り後というのがスタンダードで、それが代理人を活用し切れていない現状を生み出しているのではないかと、わたしは分析している。

 海外移籍が増えているとはいえ、Jクラブ側からすれば主力選手を契約満了の移籍金ゼロで「引き抜かれる」ケースが続いている。おそらく、今季終了後の12月以降、再び代表クラスの主力選手が0円で海外移籍するニュースを耳にすることになるかもしれない。Jクラブ側にとって代理人は「0円で選手を引き抜くことにかかわる敵」といったネガティブなイメージが根強く残る。しかし、これはJクラブに選手を送り出す側のアマチュアクラブ、選手が初めてのプロ契約時に交渉のみならず、キャリアプランニングのプロである代理人を締め出していることで引き起こされているとも言える。

 この先も優秀な若手日本人選手は欧州でのプレーを目指すことになるだろう。しかし、彼らはプロ入団時に代理人を介することなく契約交渉に臨んでいるため、Jクラブにとって有利な安い年俸で3年、5年という長期の“囲い込み契約”を結ぶ傾向にある。こういう契約は海外移籍したい選手の意向と真っ向から対立するもので、場合によっては契約途中で移籍する場合の違約金設定も落とし込まれていない。

 もしアマチュアからプロになる段階の契約で代理人を立てていれば、その時点から「プレーヤーズファースト」を前提に選手とクラブ双方にとって、どういう契約がベターなのかが模索され、すべての可能性を落とし込んだ契約が結ばれることになる。代理人とは選手が活躍し、クラブからいい評価を受け、高い年俸を受け取って初めていい報酬が得られる。要するに本来、クラブと代理人の意向は対立するものではないのだ。

 また、プロ入りを目指す選手にとっても、代理人の存在によって、本当に「ベストなクラブ」を探すことも可能となり、プロ入り1年目の選手が半数近く出場ゼロという、ある種「ミスマッチ」と呼んでもいいような現状を回避できる。日本ではまだまだ高校や大学の監督が代理人代わりにJクラブの窓口となっており、監督の意向やその監督とJクラブとの関係性が選手のクラブ選択に大きく影響している。高校や大学といった教育機関に代理人が入り込むことに難色を示す監督は多いが、彼らと代理人のどちらがJクラブの補強事情や移籍情報に精通しているのか? 結局のところ、「何が選手のためになるのか」というプレーヤーズファーストの原則に立ち返ることが重要だ。

■優秀なタレントは「みんなで大事に育てよう」

 18歳以降の仕上げの育成環境が整っていない日本で、これだけ有能なタレントが育ち、欧州トップリーグで活躍するのは本当にすごいことである。Bチームやサテライトリーグが整備されている世界のサッカー大国の関係者が日本の育成環境を見れば、「なぜ、これだけ優秀な選手が育つのか?」と目を見張るに違いない。逆に考えると、もし育成環境を世界トップレベルのサッカー大国並に整備すれば、今の2倍、3倍のタレントが日本から出てくる可能性がある。今回の提案は別に「サテライトリーグを復活させよう」と言っているわけではなく、大きな環境整備や投資を必要としているわけでもない。見方を変えることで、今すぐにでも取り入れることができるものはある。

 その根幹をなす考え方は、プロ入りするほどの優秀なタレントは「みんなで大事に育てよう」ということ。本稿はJクラブを批判するものではない。「一クラブだけで囲い込まずに周囲をうまく使ってみんなで育てよう」と提案しているのだ。18歳までに「日本の宝」ともてはやされた逸材が、プロ入りしても起用されることなく、「使えない」「実力がない」と切り捨てられていく現状は、冒頭で述べたお涙ちょうだい物語の受け売りと通ずるものがある。

 育成年代で過度に甘やかし、プロ入りして「良かったね」で終わることなく、プロ入り後も厳しい目と大きな期待、そして選手への愛情を持ちながら、今こそ日本サッカー界全体で「18歳以降の仕上げの育成」に取り組んでいこうではないか。

<了>


育成に関するコラムである。
要約すると、育てたことよりも発掘が重要で、育成にはレンタルなどを利用して試合に出すべきということであろうか。
これはこれで、一つの意見と言えよう。
トップクラスの集まる上位のクラブに於いては、若い才能が出場機会に恵まれることは少なくなる。
逆に、選手のクオリティの高くないクラブに於いて、原石といえど、才能溢れる若手は積極的に起用したくなるであろう。
横浜Fマリノスで燻っておった、ハーフナー・マイクや乾が移籍をきっかけにブレイクした例を挙げれば、正論とも取れる。
しかしながら、問題として、日本に於いては、どうしても所属したいというブランド力のあるクラブがないことが挙げられる。
レンタルにて出場経験を積ませた所で、戻ってくる保証がないのである。
また、レンタルで出した所で起用されなければ、レベルの高い元のクラブで紅白戦に出た方が良い。
難しい問題と言えよう。
そんな中で、鹿島の方針を鈴木満強化部長が語っておる。
鹿島に於いては、鹿島の哲学を理解するまで二年の月日が必要であり、それを理解したものだけを外に出しておるとのこと。
出場機会がなくとも選手は育つ稀有な例と言えよう。
ブレのない方針に惹かれ、新人も入団を決める。
良いサイクルである。
これからも、素晴らしい哲学を伝統とし、良い選手と共に良いサッカーをしていきたい。
楽しみである。

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深い愛。
我が鹿島アントラーズが正義の名のもとに勝利を重ねますように。

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