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ブレぬ哲学

【Jリーグ】20年間ブレはなし。
ブラジルのスタイルと「ジーコの哲学」を貫く鹿島

フォーメーション進化論 vol.12


昨シーズン、鹿島はリーグ6位と振るわなかったが、ナビスコカップで優勝しタイトルを手にした

 バルセロナのような「内容やスタイルを」と理想を追求していくこともサッカーでは必要なこと。しかし、内容以上に、結果が重視されるのがプロの世界だ。
 その結果を求め、多くのタイトルを手にしてきているのが、鹿島というクラブ。
 鹿島は監督が変わっても、基本的なスタイルは変わらない。それは、いわゆるブラジルのサッカーだ。
 歴代の監督はブラジル人ばかり。外国人選手もブラジル人がほとんど。基本となるフォーメーションはブラジル代表の4−4−2に近い。昨シーズン、オリヴェイラ監督が採用していた基本フォーメーションは同じくブラジル人である柏のネルシーニョ監督が採用している形とほぼ同じだった。
 鹿島は、選手が変わっても、監督が変わっても、やり方をほとんど変えずにきた唯一のJリーグクラブと言っていいだろう。20年という時間をかけて着実に伝統が築かれているという意味でも、成功しているクラブだ。
 何よりも、クラブの象徴として、そしてプロ選手の模範としての「ジーコ」という存在が大きい。その基本にあるのは結果を残すこと、そして勝つことへの執着だ。それが今も脈々と受け継がれ、クラブの哲学として生きている。



 ジーコの「タイトルをとること、勝つことへの執着心」がよく表われていたのが、ヴェルディ川崎(現東京)と鹿島が対戦した1993年のチャンピオンシップ。PKの判定を不服としたジーコがつばを吐く”事件”があった。

 つまり、そういう抗議をしてまで勝敗にこだわるという彼の強烈な執念が垣間見えた瞬間だった。ジーコは選手として、たくさんの栄冠を勝ちとってきた人であり、そんな偉大なプレイヤーが40歳を越えて現役復帰をして、日本の新しいリーグであっても、そこまでやる。

 あの行為自体は決してほめられるものではないが、なんとしても勝ちたいのだということが伝わってきたし、今も強く印象に残っている。だから、どんな試合でも、勝つことへのメンタリティは揺るぎない。それが鹿島というクラブの根底にずっとあるのだと思う。

 歴史に残るのは結果だけ。常に結果を求められる世界。それがプロだ。いくらいいサッカーをしても、勝たなくてはダメ。82年のワールドカップで、ブラジル代表の「黄金のカルテット」のひとりとして期待されながら、結果を残せずに批判を浴びたジーコは、それが身に沁みているからこそ、常に結果にこだわるのかもしれない。

 私自身、ブラジルサッカーというと、以前は華麗なイメージを持っていたが、実は勝負にこだわる姿勢がキモ。それを実感したのが、2005年のコンフェデ杯に取材に行き、ブラジル代表の練習を見たときだった。遊びのミニゲームひとつでも、全員が非常に熱くなっていて、シュートはフルパワー、コンタクトも激しい。勝負に対する執着心を強く感じたし、それが勝者のメンタリティにつながるのではないかと思った。

 たとえば、浦和が2006年にリーグ優勝したときもブラジル人が5人いた(※日本に帰化した三都主アレサンドロと田中マルクス闘莉王のふたりと、ロブソン・ポンテ、ワシントン、ネネの3人)。彼らの勝ちへの執念が、浦和にタイトルをもたらした部分も少なからずあったのではないかと思っている。



 鹿島は今シーズン、新たにジョルジーニョ監督が就任したが、基本となるフォーメーションは4−4−2。ただ、昨シーズンまでボランチをふたり置いていたが、今季は菱形になっている。それでも、両サイドバックの攻撃参加や、カバーリングなどの基本的な連携は変わらないし、それほど大きな変化はないと言っていい。

 攻撃面では、ツートップ??には、名古屋のケネディのような高さを武器にするFWよりも、スピードとシュートテクニックに優れた選手が起用される傾向が強い。ツートップのうちひとりはカウンターもでき、個人で打開もできるブラジル人FWが起用されることが多く、今季は川崎から移籍してきたジュニーニョが得点源として期待されている。また、このツートップは必ずといっていいほど、クロスして斜めに攻め上がる。そして、どちらかがボールを受けてポイントをつくり、そこから2列目の選手が斜めに動いて飛び出してくる。

 守備に関しては、まずCB??は高さが要求される。現在の岩政大樹や、過去に活躍した秋田豊のように、接触プレイに長けた代表クラスのDFが必ずいる。また、鹿島の場合CBはあまり高い位置はとらず、自陣のやや深い場所に控えている。それは押しこんでいるときも変わらない。サイドバック??には絶対的な運動量が欠かせない。アップダウンできるタフさと、的確なカバーリングが求められ、中盤との連係はさらに重要だ。すべてのポジションでそうだが、守備について徹底しているのは、対人の厳しさ、そしてカバーリング。とくにバイタルエリアでは絶対に相手の好きにさせないという規律がある。

 次に中盤だが、ここは守備に対しての厳しさと粘り強さが特徴。本田泰人(2006年引退)のような激しい守備をする選手が多く、「戦術的なファウル」という選択ができる。たとえば、昨年の女子ワールドカップ決勝の延長後半ロスタイム、DFの岩清水梓が退場覚悟でアメリカのFWをタックルで止めたように、「ここでファウルをしてでも相手を止めなければ負ける」というときに躊躇なくそれができる選手でなければ、鹿島では試合には出ることができない。

 それをラフプレイだという人もいるかもしれない。一方で、南米や欧州ではそれぐらい当たり前だという考え方もある。そういうサッカーは嫌いだ、あるいはつまらないという人もいれば、このサッカーが好きだという人もいるだろう。それでいいと思うし、いろいろな見方や考えがあっていいと思う。

 あるいは、それを「ずるさ」という人もいるかもしれないが、勝つためにやるべき「駆け引き」でもある。状況に応じての判断、つまり選手ひとりひとりに確かな戦術眼があれば、それがゲーム運びのうまさにつながる。勝つために何をするべきか、それを全員が常に考えているチームは強いし、鹿島にはそうした伝統がある。

 また、鹿島のサッカーは非常にシンプルだ。優勝したシーズンのデータを見ると特に顕著だが、パスの本数は実は少ない。つまり、無駄な手数をかけていないし、パスをつなぐことにもこだわっていない。勝つためにやるべきことが整理されているし、選手たちはいろんな手段を講じる。結果を残すために何をするかを判断し、すばやく実行する。

 攻撃のストロングポイントは、鋭いカウンターとセットプレイの精度だろう。圧倒的な高さはないが、確実に決めてくる勝負強さがある。そのためには、いいキッカーがいる必要がある。昨シーズンは野沢拓也が多くのチャンスを演出していたが、今季から神戸に移籍したため、それがどう影響するかは注目だ。

 鹿島はピッチの外でもブレがない。つまり獲得する選手の基準がはっきりしている。昨シーズン加入した柴崎岳人は、成長すると小笠原満男のような選手になるのではないかと思うし、大迫勇也は柳沢敦のようなタイプのFWになってきているイメージがある。

 どのポジションも力強さと勝負強さを感じさせる選手が多く、常に勝負にこだわって、シンプルにプレイする実直なキャラクターという印象だ。また、そういう資質のある選手をスカウトしてきているのだと思う。勝つためには無駄なことはしない。そういう選手たちの集まりが鹿島というチームを形成している。

 それらをクラブの哲学として継続していくことで、多くのタイトルを獲得してきた鹿島は、時間とお金を無駄にしていないクラブといえる。長く成功をおさめることが難しい世界で、タイトルを数多くとってきたし、今もとり続けている数少ないクラブ。

 もちろんすべてのクラブが同じである必要はないが、鹿島が継承してきている哲学は、ひとつのスタイルとして20年目のJリーグで評価されるべきだと思う。


スポルティーバに掲載された福田正博氏のコラムである。
鹿島がブレぬことなど、鹿島に関わる者ならば誰もが知っておること。
鹿島を外から見るとこう映るのだということが伝わってくる。
そして、岳は満男、大迫は柳沢のようになっていくとのこと。
次は山村が誰の後継者なのかを語って欲しい。

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鹿島愛。
狂おしいほどの愛。
深い愛。
我が鹿島アントラーズが正義の名のもとに勝利を重ねますように。

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