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前任指揮官の呪縛

Jリーグ:前任者の「色」に苦労を強いられる新監督
Text by 後藤 健生

ガンバ大阪のセホーン監督が解任されてしまった。今シーズン、僕はじつはG大阪の試合をまだ1試合も生で見ていない。つまり、セホーンという人物にはとうとう一度もお目にかからないうちにいなくなってしまったわけだ。

強豪クラブの監督交代が相次いだ2012年のJリーグ。何人かの新監督が結果を出している一方で、苦労を重ねている新監督も多い。開幕たった3試合(ACLを含めれば5試合)で全敗のまま解任されてしまったセホーン監督、鹿島アントラーズという常勝チームを率いて結果の出ないジョルジーニョ監督が後者の代表。逆にすばらしいスタートを切ったのがFC東京のランコ・ポポヴィッチ監督。それに、浦和レッズを率いるミハイル・ポポヴィッチ監督、それにJ2に昇格したばかりの町田ゼルビアに勝利をもたらしたアルディレス監督あたりが成功した監督の代表だろうか。

もちろん、チームの結果は監督のせいばかりではない。どんな選手がいるのかによってチーム力は変わってくる。それに、サッカーという競技の特性として運、不運の要素も大きい。たとえば、G大阪にしても、セホーン監督が解任される直前のジュビロ磐田(こちらも新監督だ)戦では開始直後にはむしろ幾度もチャンスを作っており、そんなチャンスのうち1つでも入っていれば、結果も、監督の運命も変わっていたかもしれない。だが、すべてを運、不運にしてしまうわけにもいかない。結果が出せない監督たちは、何に苦労しているのかを考えてみたい。

その答えが、前任者の「呪縛」である。

なにしろ、G大阪の前任者=西野朗前監督は9シーズンもこのチームに君臨していた人物である。そして、自らのサッカー哲学に合った選手を集めて、着々と「西野色」の濃いチームを作り上げてきた。ときには頑ななまでの攻撃サッカー=パスサッカーを展開し、それを長年繰り返すことによって、チームに1つの方向性を与えてチームを作ってきた。選手たちも、それに洗脳されたかのように、「攻撃サッカー」、「西野のサッカー」をピッチ上で展開し、そして、それなりに結果を残し続けてきた。

そんなチームだから、監督が変わっても、選手たちの意識がそう簡単に変わるわけはない。報道によれば、縦に速く攻めることを目指したセホーン監督の哲学に馴染めない選手たちが、磐田戦の前に選手だけのミーティングを開いて、「パスをつないで攻めること」つまり昨年までのやり方をしていくことを決めたのだという。実際、磐田との試合ではパスをつなごうという意識は強かった。だが、昨年までのように、パスをつなぎながら、どんどんボールが前に動き、選手が湧き出してくるような展開は実現できず、ただ、後方でパスを回す時間が増えただけだった。

同じく苦労しているジョルジーニョ監督も、やはり前任者の影がチラついている。

オズワルド・オリヴェイラ監督。こちらも、5年間にわたって鹿島アントラーズを率いて、その間、数多くのタイトルをもたらした。丁寧にボールをつなぐサッカースタイルを、辛抱強く選手たちの間に植えつけてきていた。そう、前任者が強烈な「色」を出していたチーム、その、「色」によって結果を出してきたチームの場合、当然のことながら、後任の監督は自分の色を出すことに苦労する。選手たちの間からは、「公然たる反発」とは言わないが、「疑問の声」が出てくるだろう。ちょっとでも結果が出ないと、疑問は増幅する。

成功している監督、たとえば、FC東京のポポヴィッチの場合は、前任者の大熊清監督がJ2で優勝に導いたとはいえ、強烈な個性的な「色」を付けていたわけではないのが幸いした。大熊監督は、ボールをしっかりつなぐこと。最後までやりぬくことなど、チームのベースになるようなことを植えつけていた。つまり、色を塗りやすいキャンバスを用意した上で新監督を迎えたようなもので、ポポヴィッチ監督としてはやりやすかったに違いない。

浦和のミハイロ・ペトロヴィッチ監督の場合、昨シーズンの浦和は結果としてもまったく出ていなかったわけだし、前任者ゼリコ・ペトロヴィッチの「色」はほとんど見えないままで終わっていたわけで、新監督の哲学を「積極的に受け入れよう」、「受け入れたい」(なんでもいいから)という気分が強い中で仕事ができたのだろう。浦和にとっては、久しぶりに明確な哲学を持った指導者が来たわけだ。当然、とりあえずは、「歓迎」される。

強烈な個性を持った指導者。その指導者がチームを離れた直後にチームを預かることになる監督が苦労する。それは、Jリーグだけではなく、世界共通の傾向である。極端な例がジョゼ・モウリーニョだ。「強烈な個性」という意味では。西野朗やオリヴェイラの比ではない。モウリーニョが成功を収めた後に、チェルシーでいったい何人の監督が解任されてきたのか、さらに、これからいったい何人が同じ轍を歩むのか……。そして、チェルシーの後イタリアでモウリーニョが結果を出したインテルでも、何人もの監督が結果を出せずに志半ばでチームを去っていくのか……。

同じことは、フース・ヒディンクにも言えることで、2002年にとんでもない「結果」を出した韓国は、その後「オランダ病」に取り付かれ、何人ものオランダ人監督を迎え、監督問題ではいまだに迷走を続けている。だから、僕はヒディンクやモウリーニョは「劇薬」だと思っている。

さて、ヨーロッパでも、来シーズンは監督の大移動が起こる可能性がある。件のモウリーニョは、リーガのタイトルを取ったとしてもレアル・マドリードを離れる可能性が大きいらしい。そして、一方のバルセロナのグアルディオラ監督も、チームの絶頂期にありながらチームを離れる気持ちが強いと言われている。この2人が動くとすれが、その去就によって連鎖反応が起こる可能性も大きい。チェルシーやインテルには「空席」がすでにあるわけだし、2人が動けばレアルやバルサも新監督探しを始めるわけだ。そして、EUROの結果によっては、ナショナルチームの監督も交代になる国も出てくる。

2012/13シーズンの開幕直後には、ヨーロッパでも今のJリーグのような監督交代の悲喜こもごもが話題となっているはずである。

さて、J1の第4節は新監督のいるチームを観察しに行ってこようっと!


後藤氏のコラムである。
成功した前任者の後任指揮官の難しさについて語っておる。
5期に渡って采配を振るい、6タイトルをもたらせたオリヴェイラ前監督は偉大であったことは紛れもない事実である。
彼には彼の哲学があり、それをメンバーは具現化することで勝利を積み重ねてきた。
そして、監督の替わった今季は、別のやり方で勝利を目指しておるのである。
そう、すぐに結果に結びつくものでもあるまい。
逆に言えば、オリヴェイラ前監督の哲学を模倣する手法を採れば、もう少し楽に勝ち点を得られるであろう。
しかしながら、それは鹿島を率いる指揮官のすることではない。
また、その方法ではチームは新化せずに停滞してしまうであろう。
我等は産みの苦しみに直面しておるのだ。
ジョルジーニョ監督の哲学が浸透するのを待ちたい。
チーム一丸となって勝利へ邁進するのだ。
それが鹿島の哲学である。

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鹿島愛。
狂おしいほどの愛。
深い愛。
我が鹿島アントラーズが正義の名のもとに勝利を重ねますように。

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