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逆転劇の舞台裏

鹿島、鮮やかな逆転劇。選手たちは試合のベクトルをどう変えたのか?
25日、ホームにFC東京を迎えた鹿島アントラーズ。2点を先制される苦しい試合展開の中、後半の3ゴールで鮮やかに逆転。鹿島は前後半で何を変えたのか?

2013年05月27日
text by 田中滋 photo Kenzaburo Matsuoka


2点のビハインド。突破口はどこに?


【写真:松岡健三郎】

 全員がすばやく帰陣して自分の受け持つポジションに着く。鹿島の選手たちが攻めに転じようとするときには、すでに美しい守備陣形を整い、攻撃を待ち構えていた。

 前半のFC東京の守備は、美しいバランスを保っていた。DFラインに4枚、中盤に4枚、そして2トップも自陣にセットする陣形はラインも高く、中盤をコンパクトにするため、楔を打ち込むスペースはほとんどない。

 突破口を開こうと、相手の背後にロングボールを送り込むが、そのセカンドボールの集散についても相手の方が反応が早い。前半、攻撃の糸口はほとんどつかめなかった。

 それでも、李忠成の1点だけならダメージは少なかったかもしれない。しかし、前半終了間際、パスワークで守備を崩され、最後は渡邉千真が鋭いシュートをゴールに突き刺す。2点のビハインドを背負ったときは、さすがに勝機を見いだすのは難しかった。

 ポイントは、ベクトルを変えることにあった。タッチラインに開いた野沢拓也や遠藤康にパスが入ると、ボランチの高橋秀人や米本拓司がボールを奪いにアタックに走る。つねに前を向いたベクトルは、ボールを奪った後の攻撃の推進力にもなっていた。これを、ゴールに戻りながら守備をする、後ろ向きのベクトルに変えることが、鹿島の突破口と言えた。

 ハーフタイムで冷静に戦況を見つめた選手たちは、少しずつポジションを変えている。

「前半は中途半端な位置を取っていたんですが、後半はセンターバックと同じ高さにするようにしました」

 この日は右サイドバックに入っていた青木は、岩政らセンターバックの横に位置取ることで、ロングボールを蹴る場合でも正面からではなく斜めからの角度を付けることを考えていた。

 また、FWと同じ高さに立って、裏のスペースを狙うことが多かった中盤の遠藤も「前の選手が攻め急いでいた」と振り返り、中盤でのセカンドボールを支配することに意識を変える。

FC東京の綻びを生んだ鹿島のポジションチェンジ

 サイドの選手たちが少しずつポジションを後方に下げたことにより、FC東京の選手たちは彼らを捕まえるために、少しずつ前に出なければならなくなった。
 
 そのちょっとした変化が前半にはなかったスペースを生む。47分、ロングボールを岩政が弾き返し、そのセカンドボールを遠藤が拾ったのだが、相手ボランチの横のスペースでボールを受けた遠藤はほぼフリーの状態だった。

 その後、柴崎、ダヴィ、大迫と繋いだパスに対し、前に出るベクトルを働かせたのは柴崎にプレスをかけた米本のみ。最後は大迫がきっちりとゴールを決め、前半には無かったゴールに戻りながらの守備を強いることに成功したのである。

「1点取った時点で、これは逆転できるな、という確信に変わりました」

 セレーゾ監督が、試合後に述べた通り、このゴールによってスタジアムの雰囲気は一変する。鹿島の2点目は、大迫に二人のマークがついてしまったことで遠藤がフリーになったところから。3点目は、試合の流れに入れなかった交代選手の通常では考えられないミスから。わずか18分の逆転劇ではあったが、その怒濤の流れの変化は圧倒的だった。

「FC東京さんに対する守備というのは体力も消耗するし、頭も使わないといけないなかで、後半、選手たちが運動量、あるいはパワーダウンせずギアチェンジしてこれだけのサッカーを見せられたことは非常に満足しています」

 セレーゾ監督は、わずかな隙を見逃さず、逆転勝利という結果を残した選手たちを最高の笑顔で讃えていた。

【了】


FC東京戦を振り返る記事をフットボールチャンネルに寄稿する田中滋氏である。
劇的逆転を何故成し得たかを語っておる。
サイドのポジション変更が鍵であったとのこと。
青木のコメントから察すると、選手間の意思疎通にて行われたように受け取れる。
それだけのチームを構築した指揮官の手腕が素晴らしい。
これからも多くの逆転劇を演出してくれるのであろうか。
今季の鹿島の躍進に注目である。

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鹿島愛。
狂おしいほどの愛。
深い愛。
我が鹿島アントラーズが正義の名のもとに勝利を重ねますように。

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